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視点


労使で年休取得率の目標設定を

No226 2008年4月

画期的な「ワーク・ライフ・バランス」についての政労使合意

 昨年12月18日、総理大臣官邸で開かれた「ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議」において、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が政労使合意のもとで決定された(以下、それぞれ「憲章」、「行動指針」という。)。

 「憲章」は、仕事と生活の調和の実現に向けて官民が一体となって取組みを進めていくことを定めたものである。「憲章」は、めざすべき社会の姿を「就労による経済的自立が可能な社会」、「健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会」、「多様な働き方・生き方が選択できる社会」であるとし、その実現に向けて企業労使、国民、国及び地方公共団体が果たすべき役割を示している。

 「行動指針」は、この「憲章」に基づいて、企業労使、国民、国及び地方公共団体のそれぞれが行うべき具体的な取組みの内容を定めている。加えて、取組みを進めるにあたって、年齢階層別の就業率、労働生産性の伸び率、年次有給休暇取得率、第1子出産前後の女性の継続就業率、男女の育児休業取得率など14の指標を掲げ、10年後(2017年)の達成水準目標を数値で示している。

 このように、国民的な取組みの目標を数値で明示したこと、そして、その目標達成について主要な取組み主体である政府、経済界及び労働界の代表が合意したことは画期的なことである。今後展開される政労使の具体的取組みが、仕事と生活の調和の実現に向けた大きな推進力になることを期待したい。


注目したい年休取得率の数値目標

 「行動指針」の14の数値目標のなかで注目したいのは「年次有給休暇取得率」(以下、「年休取得率」という。)の目標だ。年休は、実労働時間の短縮と心身の休息・リフレッシュの有効な手段であるとともに、その完全取得が長らく重要な課題に掲げられているにもかかわらず、取得率が一向に改善されないからである。

 数値目標の内容は、2006年に46.6%である年休取得率(取得日数計÷付与日数計[繰越日数を含まない])を、5年後の2012年に60%まで引き上げ、10年後の2017年には年休の「完全取得」を達成するというものである。

 年休取得率の過去20年間の推移をみると、1980年代末から90年代初頭にかけて上昇を続けた年休取得率は、1992?1993年に最高値である56.1%に達し、それ以降は低下し続けている。2000年には5割を下回り(49.5%)、ここ数年間は40%台の後半で推移している。「行動指針」の目標は、年休取得率の低下に歯止めをかけ、10年後には年休取得率を現在の約2倍の水準に引き上げるというものであり、挑戦的かつ取り組みがいのある目標である。ちなみに、2006年の付与日数(17.7日)と取得日数(8.3日)の差である9.4日を10年間でゼロにするためには、毎年1日ずつ取得日数を増やしていくことが必要だ。連合は、数値目標の達成年を「当面5年後」としており、取組みの開始に猶予はない。


年休取得に影響を及ぼす諸要因

 過去のアンケート調査結果をみると、年休取得に影響する主な要因として「職場での仕事と人員のバランス」、「年休取得に対する職場の雰囲気や上司の姿勢」、「年休取得に対する本人の考え方」などが挙げられている。

 例えば、連合総研が2002年に正規従業員を対象に行ったアンケート調査では、年休取得状況が悪くなったと回答した人にその理由を尋ねたところ(複数回答)、「担当する仕事量が増加した」(45.2%)、「リストラに伴う要員、人材不足」(35.5%)という回答が上位を占めた。反対に、年休取得状況が良くなったと回答した人にその理由を尋ねたところ(複数回答)、多かった回答は「自分で積極的に取得するよう心掛けた」(38.1%)、「職場の雰囲気が取りやすいものになった」(23.7%)、「仕事量が減少した」(19.6%)であった。また、上司が年休を積極的に取るタイプであるほど回答者の取得日数が多く、上司が部下の年休取得を積極的に奨励するタイプであるほど回答者の取得日数が多いという結果がでた。年休の残日数に着目すると、年休取得にあたって一定の日数が残るようにしているとの回答は23.8%と、4人に1人の割合であった。一定の日数の年休を残す理由で最も多かった回答は「病気など何かあった際に使いたいから」(61.2%)であった。 

 このように、年休取得の状況は性格の異なる複数の要因の影響を受けることから、年休取得率の向上を図るためには、複数の対策を組み合わせる必要がある。


まずは企業・職場ごとの目標設定を

 企業労使が年休取得率の向上に取り組む際には、まず年休取得率について労使で具体的な数値目標を立てることが欠かせない。目標の設定にあたっては、各企業の労使が十分に話し合って、それぞれの職場実態、「行動指針」の示す5年後・10年後の数値目標、あるいは連合・産別組織が設定する目標などを踏まえることが重要だ。そして、各企業の労使が、様々な対策を検討し目標の達成に取り組むことが、結果として「行動指針」で掲げた目標の達成にもつながることになる。

 ちなみに、連合総研が2002年に労働組合を対象に実施したアンケート調査では、労働組合として年次有給休暇に関する目標を設定していると回答した組合は4割弱(38.6%)と少数派であった。たぶん労使共通の目標をもっている組合はさらに少数であろう。

 4月は多くの企業で年次有給休暇の付与年度が始まる。前年度の年休取得実績も明らかになるであろう。それぞれの企業労使が年休取得率の目標設定についてよく話し合いを行い、年休取得率の向上への着実な一歩を踏み出すことを期待したい。(Jumbo)


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