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理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「波乱含みの年明け」

File.492020年1月27日発行

上映されたのはもう7~8年前になると思うが「アルゴ」という映画をご存じだろうか?監督・主演はベン・アフレック氏で、アカデミー作品賞他多くの賞を受賞した。

「アルゴ」は、1979年11月のイラン革命での出来事を題材とした映画である。革命が勃発し、パフラヴィー国王は追放された。この国王の亡命を米国が受け入れたことで、イラン国民の反米感情が高まり、アメリカ大使館を襲撃・占拠する。52人が人質となるが、6人は脱出してカナダ大使館に逃げ込む。この6人を救出するために「アルゴ」という架空のSF映画をでっち上げ、6人をそのロケハンのスタッフに変装させて脱出させる作戦を描いたものだ。

この作戦を「カナダの策謀」といい、この策謀にアメリカCIA(中央情報局)が関わったことは1997年まで機密とされていた。また、「アルゴ」は実際に過去に没になった映画だという。1980年にパフラヴィー国王が最終的な亡命国となったエジプトで死去し、他の人質は1981年1月に444日ぶりに解放された。

米国とイランとの対立は、半世紀以上に亘るお互いの関係を学ばねば理解することが難しい。しかし当時、この映画を観たことで複雑怪奇な中東情勢の一部が、多少でも分かったような気がしたものだ。

その米国・イランの緊張関係が、平成から令和へと時代が移っての新年早々一気に高まった。米国がイラン革命防衛隊の精鋭組織「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を殺害し、その報復としてイランはイラク米軍駐留地へミサイル攻撃を行ったのだ。「第三次世界大戦」が現実味を帯びたのではと、識者の間でも議論が展開された。この米国とイランの緊迫した情勢に巻き込まれて、ウクライナ機がミサイルで撃墜され176人が死亡するという悲しい事故も起きた。幸い現段階では、全面衝突につながるという最悪の事態は免れている。

しかし、これまでの長い間の対立の火種が決して消えたわけではない。また、中東情勢を一層不安定なものにしている要因のひとつにイスラム教のシーア派とスンナ派の対立がある。今回の緊張関係が、さらなる対立に拡大し、そこに米中貿易摩擦も絡み、中・露も加わっての構図となるとかなり深刻な状況が生じる。

イランとも友好国である日本は、イランの6ヵ国核合意から一方的に離脱したトランプ政権に姿勢の転換を迫ることや、友好国にしかできない外交努力の役割と責任を果たさなければならない。

国際情勢は波乱含みの年明けであったが、皆さんが今年も健康に留意され、実り多き年であることを心より祈念する。

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