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理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「クラップ・フォー・ケアラーズ」

File.522020年4月21日発行

新型コロナウイルスの脅威が止まらない。4月7日には緊急事態宣言が7都府県に発出され、16日には全都道府県に拡大したが、状況は決して好転していない。

その感染の対応に当たっているのが、医師であり看護師の皆さんである。ところが、医師や看護師に対する誹謗中傷、心ない言葉があびせられている。医療従事者やその家族が差別的な扱い、風評被害を受けるケースが各地で相次いでいるという。また、感染者とその家族も同様である。

「子供が保育園への登園自粛を求められた」、「父親が会社から出社停止を言い渡された」、配偶者が勤務先から「新型コロナウイルスに感染していない証明書」を提出するよう要求された。また、感染者が確認された病院に抗議の電話が殺到したり、医師や看護師がタクシーの利用を拒否されたり。なんとも痛ましい事態である。誰しもがうつる側にもなるし、うつす側にもなる。

医療従事者は、感染のリスクの最前線で緊張感を強いられている。中傷や差別は最もつらいことだろう。私たち国民のために懸命に働いている人たちをねぎらい、支えていかなければ、長期にわたるであろう困難を乗り切るのは難しい。このような状況が続けば、患者の受け入れを委縮し医療崩壊につながる。

一方では、英国市民が発案したとされる「クラップ・フォー・ケアラーズ(医療従事者らへの拍手を)」と名付けられた呼びかけが、SNSを通じて各国に伝わり広がっている。敬意を込めて決まった時間に拍手をしたり、建物をライトアップしたりする取り組みだ。

日本では福岡市役所の外壁に4月10日正午、医療や介護に携わる関係者に向けた応援幕が掲げられ、ベランダに出た職員の皆さんが一斉に拍手したのを皮切りに、各地の自治体を中心に広がっている。東京では、スカイツリーや都庁舎などが夜間に青くライトアップされた。

外出規制でゴーストタウン化した米国・ニューヨークでは、午後7時になると医療従事者に感謝の気持ちを伝えるために、窓の外から拍手を送るのが日課となっているという。買い物帰りでも荷物を置いて拍手。運転中でも車を止めて参加する人もいる。ニューヨーク在住の日本人女性は、「人とのつながりを感じられ心がほっとする瞬間だ」とある雑誌に記していた。

専門家は「医療従事者を応援するのはもちろん、感染症を巡る偏見や差別に対し、一人ひとりが何をできるかを考えるきっかけにして欲しい」と指摘している。

見えない敵に向かう不安はますます増大する。道のりは決して短くはないだろう。このような時であるからこそ、私たちの社会の一員であるという自覚と責任は、自分だけの意識だけでなく、他者への敬意によって成り立つことを肝に銘じなければならない。今まさに、人間の尊厳が試されているのである。

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