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理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「外出自粛の中での外出」

File.532020年5月18日発行

得体のしれない今回の新型コロナウイルスは、個々人の免疫力との関係もあるが、とにかく人と人との接触を避けることが第一の防御策である。そのため、外出自粛が緊急事態宣言の主な具体策となっている。

この緊急事態宣言、5月14日には39県が解除になり、21日にも見直しの検討がされるが、8都道府県は継続となった。

その最大の理由は、言うまでもなく新たな感染者を減少させることが、まだまだ十分でないことだ。いま1つは、医療崩壊を防ぐことである。重点的に対策が必要な8つの「特定警戒都道府県」では、重症患者を治療する病床が多くふさがり、医療現場がひっ迫しているところもあるのが実態だ。その他の県でも、今後、集団感染などが起こり、病床が足りなくなる事態に備えておく必要がある。

これまでは軽症の感染者であっても入院勧告の対象であったが、東京都は4月7日、病床を重症者に割り当てるため、無症状者や症状の軽い人には病院外に移ってもらう方針を決定した。すなわち、宿泊施設などで療養してもらうというものである。

私は、この間ほぼ毎日ウォーキングとまではいかないけれど、約1時間は歩くのを日課とし運動不足の解消に努めているが、可能な限り外出は控え在宅勤務を続けている。しかし先日、他の人からは不要不急と言われてしまうかもしれないが、私にとっては必要緊急の用件が発生し、地下鉄で移動した。幸いにして、地下鉄は「密」とは程遠く1両に数名の乗客であったし、窓も開けられていた。

地下鉄の駅から目的地まで歩いている間に、不思議と言っては失礼かもしれないが、"おやっ"と思う光景に出くわした。あるホテルの前に、青地に白文字の"のぼり旗"が見えたのだ。その"のぼり旗"には「快癒祈願 せっかくこの下町に来て頂いたのに、何も出来ないのは心苦しい。是非お身体を治してから、またいらしてくださいませ」とあった。

ホテルの横手に回ると、道を隔てたフェンスには横断幕。「感謝!みんなで日本を守ろう! 我々は皆様の行動に敬意を表します。もう少しの辛抱。我々も行動を抑制します。力を合わせて困難を乗り切りましょう」と。地元の商店街であろう、地区会の有志一同という文字が最後に小さく書き込まれていた。

帰宅して調べてみると、そのホテルは都内で最初に感染者の受け入れを始めたところであった。地元の皆さんが、多少なりとも不安があるなかで、ホテルの決断に敬意を表し、感染者への回復を祈ったものだろう。

感染者が差別を受けることもあり、地元の皆さんの行動は重苦しい雰囲気が続くなかで、久しぶりに"ほっ"とした気持ちにさせてくれた。人とのつながりや温かさを形にした行為に、心を動かされた「外出自粛の中での外出」であった。

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