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理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「密」

File.602020年12月23日発行

今年1月のこの「理事長コラム」で、7~8年前の米国とイランとの対立をモチーフとした「アルゴ」という映画を紹介し、新年早々の米国のイラン・ナンバー2といわれるソレイマニ司令官の殺害で、国際情勢は波乱含みの年になるのではないかとの予感を述べた。

しかし、これほどまでに深刻な世界を覆う新型コロナウイルス感染のパンデミックは、誰もが想像だにしなかったのではないだろうか。

私自身の年末の挨拶の定番となった、日本漢字能力検定協会が発表した世相を表す「今年の漢字」は「密」が1位となった。この状況では、「禍」か「密」かのどちらかと思っていたが、「禍」は2位であった。

「三密」が提唱され、生活様式が密にならないように国民の行動が意識されたことが最大であるが、海外でも3C(Crowded places, Close-contact settings,Confined and enclosed spaces )としてメッセージを発信されるまでになった。また、政治判断が「密」室で行われたことや、芸能界での「密」会報道などでも使われた年となったことが理由である。

同様に年末になるといつも注目しているのが、英国の辞典会社"コリンズ"と"オックスフォード"の「今年の単語」である。

ロンドンの英語辞典のコリンズ・イングリッシュ・ディクショナリーは、今年の単語に「lockdown(ロックダウン)」を選んだ。2020年にロックダウンが使われた回数は25万回を超え、前年のわずか4000回から飛躍的に増えたと報じられた。

オックスフォード辞典は、なんと「今年の単語について2020年に関しては1つに絞ることができなかった」と発表。前例のない事態として、新型コロナウイルスのパンデミックをめぐる新たな語彙(ごい)などが、大量かつ急速に多くの場面に登場し浸透したことが背景にあるとした。おそらくこの種のことは初めてのことだと思う。

広辞苑によれば、「密」は①ひそかに、②ぴたりとひっついてすきまがない、とともに、③すきまもないほど親しいさま、という意味を持つ。

「今年の漢字」を揮毫した京都・清水寺の森清範・貫主は「密には親しむという意味がある。物理的には離れるが、人の心の中では人とのつながりをさらに持ち、来年は良い年であるよう祈念したい」と話したという。

まさに時期を得た言葉だ。人は独りでは生きることができず、人とのつながりの中で生きている。価値観や意識が多様化した中にも、それを認め刺激し合い新たなものを創り出すエネルギーとなるのが人と人とのつながりだ。新しい様式でのそのつながりを模索するのも、これからの私たちの役割だろう。

早いもので2020年も残りわずかとなりました。コロナ禍の中ですが、良いお年をお迎えください。

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