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理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「アツモリ」

File.642021年4月12日発行

「アツモリ」が弊所のある研究委員会で、話題になったそうだ。残念ながら、私は他の公務のため、その研究委員会には参加していなかった。

何故八百数十年前の「治承・寿永の乱」いわゆる「源平合戦」のひとつである「一ノ谷の戦い」を描いた「敦盛」が話題になるのだろうと、大きな疑問を持った。「敦盛」は能や歌舞伎の原型ともいわれる幸若舞の演目のひとつであり、幼くして討ち取られた平敦盛は、平清盛の甥で平経盛の子である。

「敦盛」は、織田信長が好んで舞ったと伝えられ、特に、織田信長の名を高めた桶狭間の戦い前夜、今川義元軍の尾張侵攻を聞き、清州城でまず「敦盛」の一節を謡い舞い、出陣したという「信長公記」の伝記がある。

その一節があの有名な・・・
人間五十年、下天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり
一度生をもうけ、滅せぬもののあるべきか
これを菩薩の種と思い定めざらんは、口惜しき次第ぞ   ・・・である。

「アツモリ」と聞けば、これしか思い浮かばない。この「敦盛」が話題になるとは?と疑問を持ちながら、議事要旨を読んでみると、やっぱり違った。

「あつ森」(あつまれどうぶつの森)だそうだ。えー!「あつ森」と言われても、まったく理解できない。こんな時は、若い後輩に聞くしかない。

彼は呆れた顔で、昨年2020年3月に発売されると約2週間で販売が300万本を超え、現在もその勢いはとまらないゲームソフトであること、2020年「ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10入りを果たすなど社会現象にもなったことを教えてくれた。

また、これまでの「どうぶつの森シリーズ」では村が主な舞台だったが、「あつ森」は無人島を舞台としていること、プレイヤーは次々に新しいシーンを創造し自由度が高いゲームであること、現実の世界で実現できない生活を「あつ森」の無人島生活に求め、ゲームの世界で人と交流できる「バーチャルリアリティー」であることなどを、矢継ぎ早に説明した。

更に、新型コロナウイルスのパンデミックによって外出自粛で人との交流が制限される人々の欲求をバーチャルで満たしたことが、大ヒットの一つの要因ではないかともいわれていると付け加えた。

「いまひとつピンとこない」という私の声に、「古賀さん、一度やってみてはどうですか」との返答。1970年代後半~80年代前半にかけてインベーダーゲームしか経験のない私は、「いつか機会があれば・・」とつぶやくしかなかった。

やはり私にとっての「アツモリ」は、「敦盛」だ。

そうそう、前述の「人間五十年、・・」は、「人の一生は五十年に過ぎない」と誤って説明される場合があるが、この一節は天界と比較することで人の世の時の流れの儚さを説明しているものである。

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