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理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「むずかしいことをやさしく・・・」

File.682021年8月17日発行

東京五輪が終了し24日からパラリンピックが開会するが、6月以降の新型コロナウイルス感染の「第5波」では、感染力がさらに強いデルタ株が首都圏を中心に拡大し、国内の感染者は日を追うごとに増加している。

コロナ禍では皆さんも同じだと思うが、自宅にいる時間が格段に長くなる。まだまだ「終活」する年齢ではないと自分に言い聞かせながらも、家にいる時間が増えると、これまでのノートやメモ、手帳などを少しでも整理しようかなどと思ってみたりする。

先日、2010年4月に75歳で他界された「井上ひさし」氏が主宰した劇団「こまつ座」の雑誌「the座」から書き写したメモを見つけた。その雑誌がどんなものだったのか全く記憶にないが、メモにはそう書いてあるのだ。前後のメモから、おそらく30年くらい前のものだと思う。

井上氏は小説家、劇作家、放送作家であり、言動には様々な評価があるが、それぞれの分野に数々の作品がある。

そのメモ曰く、「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そして、ゆかいなことをあくまでゆかいに」。

表現に対する考え方を井上氏流にまとめたものだと思うが、よくよく読み込んでいくと、私たちの働き・暮らし・生きるための一つの指針として受け取れるのではないだろうか・・・という挨拶を、いくつかの「集まり」で話したら、ある人からこんなメールが届いた。

「古賀さん、ご無沙汰しています。久しぶりに古賀さんらしい興味深い挨拶を聞きました。・・・私は、井上ひさし主宰の「こまつ座」の劇を何度か見たことがあります。古賀さんが紹介した言葉には、続きがあるのはご存じですか?」と。メールをいただけるだけでも有難いことであり、おまけにその続きの言葉が書き添えてあった。

それは、「まじめなことをだらしなく、だらしないことをまっすぐに、まっすぐなことをひかえめに、ひかえめなことをわくわくと、わくわくすることをさりげなく、さりげないことをはっきりと」であった。

私のような凡人では思考が混乱してしまいそうだが、何度も繰り返し読んでいると極めて味わい深い言葉と思えてくるのも不思議である。

井上氏といえば、私たちの年代が子どもの頃に親しんだミュージカル形式の奇想天外な人形劇「ひょっこりひょうたん島」の原作者の一人でもある。

もう一人の原作者は、児童文学者の山元譲久氏。この人形劇は、大人までファン層を広げ5年間に及ぶ当時の長寿番組となり、テーマソングも多くの歌手にカバーされている。第1回目の放送は、前回の東京五輪が開催された57年前、1964年である。

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