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理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「当選者なしの異例な展開」

File.822022年10月19日発行

東京都には現在23の特別区がある。1952年の地方自治法改正では、特別区は東京都の内部的な団体とされ、それまでの区長の公選制も廃止されていた。

その後、東京の巨大都市化に伴う行政の在り方や特別区の自治権拡充運動を背景に、順次都から区への権限移譲が進み、75年に区長公選制の復活はじめ、特別区を原則市並みとする改革が行われた。

その特別区の一つであり、私が居住する品川区で、今月2日に品川区長選挙が行われた。

4期16年努めた区長の引退を受け、新人6人が激戦を繰り広げた。しかし、最多得票の候補者も有効得票数の4分の1に約590票足りなかった。

公職選挙法は、法定得票数(有効投票総数の4分の1)に達した候補者がいない場合、2週間の異議申し出期間の後、50日以内に再選挙実施を定めている。当選者なしの異例な展開となったのだ。

2週間経った17日までに異議申し出がなく、再選挙は12月4日と決まった。区長は7日に任期満了となり、現在副区長が区長の職務を代行している。

首長選で再選挙になるのは全国では7例目で都内では初めて。区長選での再選挙は初となる。異議申し出がされた後に審理が長期化し、再選挙まで1年半を擁したケースもあるという。

約半世紀前に区長公選制が復活して以降、品川区長選はこれまでに12回行われたが、区長に選出された3人はすべて元区職員だ。前区長は2006年、自民党・公明党などの支援で初当選し4選を重ねた。ちなみに、現在の23区の区長で、区職員OBは4人だけである。

今回はいずれも役所出身以外の候補者で、過去最多の6人の論戦が展開された。自民党は国葬や旧統一教会と政治をめぐる問題の影響で逆風となり、公明党は自主投票、野党も候補者の一本化が出来ず票が割れた。特に都市部は住民の流動性が高く、無党派層が多いため分散しやすい。また、率直に言って争点も見えにくく判断しづらかった。

再選挙時には再々選挙は好ましくないと思う有権者が、最初の選挙で上位の候補者に投票する効果を生むとも言われている。費用の面からも再選挙での決着を願っているが、確か十数年前に総務省の研究会でも話題になった「決選投票制度」の導入も含めて是正策も検討すべきだろう。

それにしても、当日有権者33万526人で、投票率は35.22%である。前回を2.51%上回ったとのことだが、民主主義の危機と言われても仕方がない。

「自分たちのことは自分たちで決める」「自分たちの問題は自分たちで解決する」という、身近な民主主義の立て直しが求められている。

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