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視点


労働時間問題の改善に向けた地道な取り組みを

No212 2007年1月
◆一向に改善されない長時間労働・賃金不払い残業問題

 連合総研が昨年10月に実施した第12回「勤労者短観」(勤労者の仕事と暮らしについてのアンケート調査)で、長時間労働・賃金不払い残業問題が一向に改善されていないことが明らかになった。

 平均的な1週間あたりの実労働時間(残業を含む)が「60時間以上」とする回答は15.4%と、1年前の第10回調査(10.9%)と比べて4.5%ポイント上昇した。なかでも、男性20代、30代では「60時間以上」の割合が約4分の1を占めている。1週間あたりの実労働時間「60時間以上」を、1週間あたりの残業時間「20時間以上」と読みかえると、これは、脳・心臓疾患の発症との関連性が強いと判断される長時間労働(時間外・休日労働が2〜6か月を平均して月平均80時間超)に相当するわけであり、健康を損ないかねない働き方をしている勤労者が少なくない実態を示している。

 また、賃金不払い残業のある雇用者の比率(以下、「不払い残業のある雇用者比率」)は、過去2回(2005年10月、2004年10月)の調査に比べやや低下しているものの、なお約4割(37.4%)を占めている。ちなみに、厚生労働省が昨年10月に発表した「監督指導による賃金不払残業の是正結果」によると、2005年度において全国の労働基準監督署が割増賃金の支払いについて労働基準法違反として是正を指導した企業数は、1,524企業、対象労働者数は167,958人であった。近年、労働基準監督署の監督強化が図られているものの、全体の割合からすれば、これらは氷山の一角にすぎないことがわかる。

 一方で、長時間労働が引き起こす心身の健康障害の防止への企業側の対応は十分とはいえない。東京労働局が企業を対象に実施した「従業員の健康管理等に関するアンケート調査」(2005年2月発表)によると、脳・心臓疾患の発症との関連性が強いと判断される長時間労働がある、または今後可能性があるとする企業の割合は、年々増加の一途をたどり、2004年度調査では約6割(57.9%)に達している。そして、過重労働が関連した脳・心臓疾患の発症、および精神疾患の発症を懸念しているとする企業の割合は、それぞれ38.3%、33.8%を占める。長時間労働を行った労働者等に対して「産業医等の面接による保健指導を実施する制度が確立している」とする企業は39.0% (面接以外の保健指導を含めても49.2%)にとどまっており、従業員の健康管理の実施体制が不十分であることがわかる。

 現在、厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会において、労働時間法制について議論が行われているが、労働時間を巡るこのような深刻な実態を直視し、その是正に資するような法制度の改善がなによりも最優先されなくてはならない。


◆労働時間問題の改善に向けた地道な取り組みを

 長時間労働および賃金不払い残業問題の解消には、行政の監督指導の強化も重要であるが、何よりも職場の実態を一番よく分かっている当該労使の積極的な取り組みが不可欠である。

 その第一は、長時間労働の是正である。誰もが生活と仕事の適度なバランスを取ることができ、心身ともに健康で豊な職業生活を送ることができるよう、繁忙職場における適切な人員の充足や業務の見直しについて、労使の取り組みが求められる。「勤労者短観」の結果からは、「不払い残業のある雇用者比率」は、実労働時間が高まるにつれて上昇しており、賃金不払い残業の解消を図るうえでも、長時間労働の是正は意義が大きい。

 第二は、勤務時間管理の適正化である。「勤労者短観」では、「不払い残業のある雇用者比率」に、残業手当が実際に支給される時間の決定方法が大きく関係していることが示されている。残業手当が実際に支給される時間の決定方法別に「不払い残業のある雇用者比率」をみると、「自己申告またはタイムカードや電子機器による記録をもとに上司等が調整を行う」で57.8%、「あらかじめ定められた上限時間による」で55.6%と、いずれも半数を超えている。一方、「タイムカードや電子機器等による記録どおり」では23.1%、「自己申告の時間どおり」では34.4%と低い。

 残業手当が実際に支給される時間の決定方法の変化に着目すると、過去2回の調査と比較して、「自己申告またはタイムカードや電子機器による記録をもとに上司等が調整を行う」という決定方法の割合が低下し、「タイムカードや電子機器等による記録どおり」という決定方法の割合が上昇したことが、この間における「不払い残業のある雇用者比率」の低下に寄与しており、勤務時間管理の適正化が賃金不払い残業の解消を図るうえで直接的な効果を持つことが明らかである。

 こうした長時間労働の是正や勤務時間管理の適正化は、いずれも連合が「労働時間管理徹底の取り組み方針」のなかで示してきた基本的な対策であり、まさに労使の地道な取り組みが問題解決への近道であるといえよう。

 最後に、このような問題改善に向けた労使の取り組みを促すための仕組み作りについて提案したい。これには、2003年5月に厚生労働省が示した「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」のなかで「職場風土の改革」の一例として示された「労使合意による賃金不払残業撲滅の宣言」が参考になる。例えば、企業連・単組レベルの労使間で「長時間労働の抑制に向けた対策」、「長時間労働を行った労働者への健康管理対策」、「勤務時間管理の適正化による賃金不払い残業の撲滅」をセットにして労使協定化し、労働時間問題へ的確な対処をしていることを内外に宣言してはどうか。そして、各産業別組織は、加盟組合における「労使協定の締結率」や「宣言の実施率」についての数値目標を掲げて、その達成を産別運動の1つに組み込むのである。「うちの会社・職場は問題ありません」と胸をはって宣言することを、各企業労使が競いあうことに期待したい。(Jumbo)


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