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「労働組合の組織率は上昇している」~個人調査と組合調査のギャップ~

中村 天江2026年1月 6日発行

「組織率は低下している」という常識

年末に、2025年の厚生労働省『労働組合基礎調査』の結果が公表され、推定組織率は16.0%と過去最低を更新した。労働組合に関心のある人にとって、組織率の長期的低下はいまや共通認識となっている(図表1)。ただし、組織率の低下は多くの先進国で起きており、産業構造や就業構造、個人の価値観の変化などにより、半ば不可避に生じていると解されてきた。

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ところが、筆者らの研究チームは意外なデータを発見した。日本では、2000年以降、個人を対象とした複数の調査で、労働組合の組織率が上昇しているのである。しかも、直近では個人調査にもとづく組織率は、厚生労働省『労働組合基礎調査』の組織率の2倍近い値になっている。

この発見は、労働組合の組織率に対するこれまでの常識を覆すものであり、労働運動や学術研究、政策検討における労働組合の影響力や社会的位置づけについても再考を促すものとなる。そこで、本稿では筆者らの研究成果の一部を報告したい。

詳細に入る前に研究チームを紹介しよう。労使関係の国際比較を目的に2023年から、桑原進(麗澤大学経済学部教授)、神林龍(武蔵大学経済学部教授)、Alex Bryson(ロンドン大学社会調査研究所教授)、Jacques Wels(ブリュッセル自由大学健康・社会研究部門教授)と筆者・中村天江(連合総研主幹研究員)は共同研究を行っている。その一環で、昨年12月、財務総合政策研究所『フィナンシャル・レビュー』第161号に掲載された論文、中村・桑原・神林・BrysonWels2025)「なぜ労働組合の組織率は政府統計では低下し、個人調査では上昇しているのか?」を中心に概説する。

組織率は「行政記録」「個人調査」から計算

OECDは毎年、各国の組織率(Trade Union Density)をまとめて発表している(図表2)。労働組合の組織率は、組合員数を労働者数で割って算出され、その計算に使われるデータは「行政機関が収集した記録」と「個人を対象とした調査」に大別される。

OECDの日本の数字は、厚労省『労働組合基礎調査』の推定組織率の値である。『労働組合基礎調査』は、毎年、厚労省が都道府県に委託して、労政主管事務所が全国のすべての労働組合を対象に行う悉皆調査である。推定組織率は、『労働組合基礎調査』で集めた組合員数の数字を、総務省統計局『労働力調査』の雇用者数で割って算出する。したがって、日本の組織率は、分類としては「行政記録」である。

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ちなみに、海外の先行研究では、組織率は「行政記録」の方が「個人調査」よりも高い傾向があると指摘されている。なぜなら、労働組合が組織力を示すために組合員数を水増しして報告したり、複数組合に加入している個人が二重カウントされたりするためである。ところが後述するように、日本では逆の事象が起きている。

「個人調査」の組織率は上昇している

そこで、筆者らは個人調査のデータを用いて労働組合の組織率を計算し、厚労省『労働組合基礎調査』と比較した。比較に用いたのは、2000年に開始された大阪商業大学『日本版総合社会調査』 と、2001年に開始された連合総研『勤労者短観調査(勤労者の仕事と暮らしに関するアンケート調査)』である。

3つの調査は、標本抽出の方法や調査モード(訪問、郵送、Web)など、さまざまな違いがある(図表3)。当然、こうした調査方法の違いは、調査データにバイアス(偏り)やエラー(過誤)をもたらす可能性がある。紙幅に制約があるため、詳細は論文をご確認いただきたいが、そうした違いを考慮してもなお、以下に示すように、2000年代以降の労働組合の組織率には顕著な違いが生じている。

組織率_3_3調査の概要.png

厚労省『労働組合基礎調査』、大阪商業大学『日本版総合社会調査』、連合総研『勤労者短観調査』の組織率をまとめたのが図表4である。

一見してわかるように、『労働組合基礎調査』の組織率と、『日本版総合社会調査』『勤労者短観調査』の組織率は全く異なるトレンドを描いている。

『労働組合基礎調査』の組織率は、2001年の20.7%から2024年には16.1%と低下の一途である。それに対して、『日本版総合社会調査』の組織率は2002年の18.4%を底とし、2023年は24.6%まで上昇している。『勤労者短観調査』の組織率は、郵送調査だった頃は、調査開始直後は高かったものの2006年に22.5%まで下がるが、それ以降は上昇傾向に転じている。また、『勤労者短観調査』は2011年にWeb調査になって以降の組織率は、多少の上下はあるものの増加基調となり、2024年の全国調査では29.6%、首都圏・関西圏のみでは30.2%まで上昇している。そのため、直近では『労働組合基礎調査』と『勤労者短観調査』では組織率に2倍近い差が開いている。

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『労働組合基礎調査』は1948年から続く行政機関による悉皆調査のため、その組織率は最も信頼できる指標として、学術研究や政策検討で広く利用されてきた。しかし、『労働組合基礎調査』と2つの個人調査で、労働組合の組織率が水準だけでなくトレンドまで違うという結果は、『労働組合基礎調査』の信頼を根本から覆しかねない。なぜこのようなことが起きているのか解明すべく、筆者らは実証分析を行ったうえで、50名近い関係者への聞き取りや検証調査などを実施した。

『労働組合基礎調査』の組合員数は過少

結論を先取りすると、労働組合を対象とした『労働組合基礎調査』の組織率は過少で、個人を対象とした『日本版総合社会調査』や『勤労者短観調査』の組織率は過大になっているというのが筆者らの結論である。この結論に至った理由を、順を追って説明しよう。

まず、『労働組合基礎調査』では、組合員数が実態よりも過少集計されており、それにより組織率も過少になっている。組合員数が過少集計だと判断した理由は4つある。

第一に、『労働組合基礎調査』は労働組合の定義が個人の権利の範囲よりも狭い。憲法が保障する団結権は労働組合の形態や結成手続きに条件がないが、『労働組合基礎調査』が調査対象としているのは、実質的に「法適合組合」といわれる、労働組合法が定める、規約や独自会計の整備など、一定条件を満たす組合だけに限定されている。

第二に、労働組合には組合員数を過少報告するインセンティブがあり、実際、労働組合の一部にそのような慣行がある。企業別労働組合は上部団体への加盟費が人数比例で決まるため、組合員数が多いほど財政負担が重くなる。ある大規模単組が「毎年、組合員数を5%少なく報告している」と語るように、財政負担を軽くするために、組合員数を少なく報告する労働組合が存在する。

補足すると、労働組合の全国組織や産別労組は、政治的・社会的影響力を高めるために、組合員数の増加を戦略目標に掲げ、その多さを強調している。しかし、日本の労働組合の大半を占める企業別労働組合は、対外的に組合員数を多く見せる必要性がないため、過少報告を行うことがあるのである。

第三に、『労働組合基礎調査』は全国のすべての労働組合を対象とする「悉皆調査」として設計されているが、労働組合に回答義務がない。労働組合では専従役員が減少し、支部では経験の浅い非専従役員が調査に回答することが増えているが、本業の多忙も相まって、調査回答の重要性や優先度を上げることが難しくなっている。

第四に、行財政改革により、『労働組合基礎調査』にかかる都道府県や労政主管事務所の人員や予算が削減され、調査精度の維持が困難になっている。第三の理由と第四の理由は密接に関連し、『労働組合基礎調査』をめぐっては、その調査に関わる労働組合も行政もリソースが減少し、調査精度を悪化させる方向の変化が生じているのである。

ここで強調しておきたいのは、第三、第四の理由による組合員数の集計精度の低下は、関係者の怠慢といった話ではなく、本質的には『労働組合基礎調査』の制度設計に起因しているということである。

まず、海外には労働組合に組合員数の報告を法律で義務づけている国もあるが、日本は全数調査にもかかわらず、労働組合に回答義務がなく、回答モレが生じやすい構造がある。しかも、例えば、イギリスでは法律で報告義務が課せられている労働組合の数は130に満たないが、日本では50,000件以上の組合組織が調査対象になっている。2023年に『労働組合基礎調査』が調査対象とした労働組合の数は約59,000だが、集計結果として公表された「単位労働組合」の数は約47000、「単一労働組合」の数は約23,000である。法律で事業者に報告が義務付けられている労働者派遣では、同年、約43,000事業報告を提出していることを鑑みても、『労働組合基礎調査』は実査体制が非常に分散的で、調査回収が困難といわざるをえない。

これらの要因が相乗的に作用し、『労働組合基礎調査』の組合員数は実態よりも少なくなっていると考えるのが妥当である。すると、組織率は組合員数を雇用者数で割って算出するため、分子である組合員数の過少集計により、組織率も実態より小さくなる。

「個人調査」の組合加入は上振れ

続いて、個人調査『日本版総合社会調査』『勤労者短観調査』の組織率について検討しよう。個人調査における組織率の上昇は、労働組合への加入者が増えた場合だけでなく、加入「認識」が高まった場合にも生じる。組合加入「認識」には、組合費を払っている組合員だけでなく、個人の勘違いや誤解も含まれる。実際、研究の結果、個人調査の組織率は、労働者の誤認識によって上振れしていることが判明した。

大前提として、『労働組合基礎調査』でも、パートタイム労働者の組合加入は増加が続いており、それが個人調査にも反映されている。この点は、別途行った実証分析でも整合的な結果が得られており、従来とは異なるタイプの組合員が増えているのは事実である。

だが同時に、労働組合の存在を理解していない者や、組合費を払っていないのに「労働組合に加入している」と勘違いしている者が増えている。

前者の労働組合の存在に関しては、この20年で労働者の認識が曖昧化している。『勤労者短観調査』での「勤務先に労働組合があるか」という質問に対して「わからない」との回答は、2001年は8.1%だったが、2024年には21.3%まで増加している(図表5)。

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後者に関しても、労働組合加入に関する誤認識が相当数になっている。『勤労者短観調査』のデータを使い、「労働組合への加入」と「組合費の支払い」に関する回答をクロス集計したところ、「労働組合に加入している」と回答した者の2割以上が、組合費の支払いに関して誤解や曖昧な回答をしていた(図表6)。したがって、個人調査における「労働組合に加入している」という回答には、誤認識が無視できないレベルで混在している。

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労働組合への「フリーライド」の増加

では、なぜ労働組合加入に関する誤認識が増加しているのか。聞き取りにより、労働組合の輪郭が曖昧化し、労働組合に「フリーライド(ただ乗り)」する労働者の増加が観察された。ちなみに、「フリーライド」とは、集団的利益の達成に向けて自らは何ら行動や貢献せず、利益を享受することである。海外の先行研究では、労働組合は労働協約などで成果を分け合う範囲を定めるなどしなければ、フリーライドを生むと問題視されてきた。

労働組合の輪郭の曖昧化は、ストライキのような目に見える組合運動の減少や、働き方改革などの労使協調の取り組みにより進行している。2000年代に入り、ダイバーシティの進展や人手不足、法改正により、より多様な個人がより良い待遇で働けるよう取り組む企業や労使が増え、労働組合の守備範囲や貢献範囲がわかりにくくなっている。これは、勤務先に労働組合があるかどうか「わからない」との回答が、23年間で2.6倍に増えていることでも裏付けられる(図表5)。

こうした変化は、企業別労働組合へのフリーライダーを増やす。なぜなら、日本では多くの労働組合が、労働条件や働き方に関して使用者と協議・交渉して何かを勝ち得た場合、その成果は組合員だけでなく、同じ雇用管理区分の従業員にも一律で適用されるのが一般的だからである。

独立系の合同労組に関しても、従来は雇止めにあった労働者の地位確認などを求めて、局所で闘っていたが、近年は、賃上げのような当該組合員以外にも広く波及する運動を展開するようになっている。例えば、ある小売り企業では、たった一人のパートタイマーが外部組合に加入し要求したことで、約5000人の従業員の6%の賃上げにつながった。この事例では、ほとんどすべての従業員にとって、労働組合は職場に存在せず、労働組合に加入もしておらず、組合費も払っていないが、組合運動の恩恵だけは受けられる状態になっている。

このように、労働組合の輪郭が曖昧し、企業内組合や外部組合へのフリーライドが拡大している。それにより、個人調査における組織率は実態より上振れしているのである。

「組合調査」「個人調査」のギャップ拡大の理由

まとめよう。なぜ、厚労省『労働組合基礎調査』の組織率は低下の一途をたどっているにもかかわらず、個人調査の組織率は2000年代半ばから上昇し、直近では『労働組合基礎調査』の2倍近い値になっているのか。研究を通じ、『労働組合基礎調査』の組織率は実態よりも低く、個人調査『日本版総合社会調査』『勤労者短観調査』の組織率は実態よりも高いとの結論を得た。その原因は大きく5つある。

第一に、『労働組合基礎調査』と個人調査では、調査対象となる労働組合の範囲が異なる。『労働組合基礎調査』は法適合組合といわれる一定の条件を満たした労働組合のみを対象としているのに対し、労働者にとっての労働組合はそうした条件が問われずもっと広い。もともと、「組合調査」と「個人調査」には、組織率にズレが生じる構造がある。

第二に、パートタイム労働者など、従来とは異なるタイプの労働者の組合加入が増えている。これは個人調査だけでなく、『労働組合基礎調査』でも裏付けられている。ただし重要なことは個人調査の組合加入では、こうした純増分とは別の上振れが発生している。

第三に、ストライキの減少や、労使一体となった働き方改革や待遇改善により、労働組合の輪郭が曖昧化し、また、労働組合へのフリーライドも増加している。それによって、労働組合や行政からみた場合は、組合員ではない労働者が「労働組合に加入している」と誤認識・誤回答するようになっている。2000年代以降、労働組合の輪郭の曖昧化や個人の誤認識が拡大し、組織率のズレを増幅している。

第四に、『労働組合基礎調査』に関しては、調査に回答する労働組合も、調査票を回収する行政組織も、調査に割けるリソースが縮小しており、集計モレが生じている。この背景には、『労働組合基礎調査』は全数調査でありながら、労働組合に回答義務がなく、また、地域単位に非常に分散した調査設計になっているという構造要因がある。

第五に、『労働組合基礎調査』に対しては、労働組合の一部に組合員数を過少報告する慣行が存在する。労働組合の全国組織や産別労組は、政治的、社会的な影響力を発揮するために、組合員数の多寡を非常に重視しているが、労働組合の大半を占める企業別組合はそういった行為に直接関わるわけではないため、財政負担を軽減するために、組合員数の過少報告を行うことがある。

これらが相乗的に作用して、「組合調査」と「個人調査」で労働組合の組織率の差が拡大しているのである。その構造を図示したのが図表7である。

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労働組合の境界と影響力をとらえ直す

労働組合の影響力は、これまで厚労省『労働組合基礎調査』の組織率をもとに評価されてきた。しかし、本研究を通じて、その数字は実態よりも低いことが浮かび上がった。また、労働組合へのフリーライダーの増加は、労働組合の影響力を組織率だけでは測れないことも含意している。他方、個人が認識している労働組合への加入も、全面的には信頼できないことが明らかになった。したがって、労働組合の影響範囲について、どのような指標でいかに評価するのか、あらためて検討する必要性を本研究は提起する。

日本では労働組合統計に関しては『労働組合基礎調査』が唯一無二の全数調査としてほぼ無条件に信頼されてきたが、一般に統計調査にはバイアス(偏り)やエラー(過誤)があり、その制約を理解したうえで、データを利用し、結果を解釈することが求められる。実際に海外では組合統計に関してもそう指摘されてきた。

本研究の貢献のひとつは、これまで注視されてこなかった労働組合統計の内実を精査し、日本の組合統計の現時点での限界を示したことである。そして、『労働組合基礎調査』における組織率低下の一端は、調査設計の構造にあることを見出した。

組合統計の精度を向上するためには、『労働組合基礎調査』に関する具体的な改善策の検討が望まれる。また、「組合調査」と「個人調査」では組織率が大きく異なるため、個人を対象とする政府統計、例えば総務省統計局『労働力調査』、に労働組合加入に関する項目を追加するといった対応も検討すべきである。

『労働組合基礎調査』の組織率の長期的低下を根拠に、労働組合の衰退がいわれて久しい。しかし本研究の結果は、労働組合を取り巻く状況はもっと複雑であり、個人にとって労働組合が曖昧になっていると同時に、より身近で影響力があることを示唆している。あらためて虚心坦懐に労働組合の実態把握を行い、労働組合論をアップデートしていく必要がある。

【関連リンク】

中村天江(2026)「「労働組合の組織率は上昇している」という発見」連合総研『DIO』415号

中村天江・桑原進・神林龍・Bryson, Alex・Wels, Jacques(2025)「なぜ労働組合の組織率は政府統計では低下し、個人調査では上昇しているのか?」財務総合政策研究所『フィナンシャル・レビュー』161号

Bryson, Alex, Kambayashi, Ryo, Kuwahara, Susumu, Nakamura, Akie, and Wels, Jacques (2025) "What is Happening to Unionization in Japan?" 一橋大学経済学研究所『ディスカッションペーパー』No.770

【謝辞】

本研究の実施にあたって、さまざまな組織・個人にご協力いただいた。ここに記して感謝の意を表したい。まず、本研究は、一橋大学経済研究所共同利用・共同研究拠点事業(課題番号:IERPK2519)の助成を受けている。日本版総合社会調査(JGSS)は、大阪商業大学 JGSS 研究センター(文部科学大臣認定日本版総合的社会調査共同研究拠点)が、大阪商業大学の支援を得て実施している研究プロジェクトであり、二次分析に当たり、JGSSデータダウンロードシステムで個票データの提供を受けた。連合総研の勤労者短観調査については、東京大学SSJDAのデータ利用に加え、連合総研に個別の協力を得た。厚生労働省からも労働組合基礎調査に関する資料提供等を受けた。また、多数の方に聞き取り等にご協力いただいた。

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