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視点


連合ワンストップ・サービス運動に期待する

No208 2006年9月
 連合を中心にしたワンストップ・サービスの運動は、長い時間を経てようやく離陸しつつある。エンジンは、ライフサポートセンターを軸としたネットワーク、燃料は、運動を進める人たちのミッションとパッションである。社長は連合地協の責任者で、機長は、乗務員の互選制でよいのだと思う。ただし、乗客の安全、信頼は必要不可欠である。今ははっきりしていないが、コントロール・タワーも必要である。中央空港発の乗務員は決まっているが、地域発の飛行機はアイドリング中と言える。

 乗客はまだ少なく顔も見えていない。行先も、「労働を中心とした福祉社会」と芒洋としたものではっきり見えていない。

 しかしこの飛行機は、機動性の高いコミューターである。眼下にすばらしいプラットフォームがあれば、その滑走路に着陸していつでも再離陸できる。乗客の合意でだれを乗せるか、中継地(新しいメニュー)行先(目標)だって変えられる。

 労働組合の原点である、助け合い、相互扶助、協同の原理にいつも立ち返り、支えあいの担い手としての核であることを自覚しながら飛行すれば、乗客にとってすばらしい旅となることが予測できる。


私たちのめざす社会

 「労働を中心とした福祉社会」の基本的な考え方は、働くことを人間の尊厳、人間性開花の中心においた人間的価値を尊重し合える社会であり、あらゆる人に暮らしの「安心」「安全」「安定」を保障する「やさしい社会」である。めざすべき社会を実現していくためには、人々のライフスタイルや価値観を変える、生活の時間や空間を変える、競争力至上主義に対峙する生活重視、共同参画、ノーマライゼーションの立場から社会に、具体的な戦略を提示していかなければならない。

 具体的な戦略の提示はまだまったく不十分であり、連合総研としても現在、「現代福祉国家への新しい道−日本における総合戦略」という骨太の研究会で正面から議論をしている。


福祉社会の担い手としてのサード・セクターの位置付け

 中央・地方の政府が生活保障システムの機能を担いきれない状況の中で、社会の「メゾレベル」が自発的な協力による生活保障を考えざるを得なくなっている。この、「民による公共」「生活の協同」の担い手が、サード・セクターである。私はこの、社会的な排除と闘う主体であるサード・セクターに、バリアはいらないと思う。NPOその他の市民活動、労働者自主福祉、協同組合、共済、その他のアソシエーション、場合によっては、目的の明確な企業等を含めて、新しいフレキシブルでゆるやかなネットワークを形成できればと思う。

 そして、連合を中心としたワンストップ・サービス、NPOの中間支援組織や各種のプラットフォームが、お互いの得意とする資源を持ち寄り、苦手をカバーする連携をどのように作り上げていくかに注力すればよいと考える。問題は、日々の動きの中で、しっかりとした対話とパートナーシップを作り上げられるか否かである。

 連合・労働組合は、「労働市場内部における排除」を最も重視すべきであるし、労働市場から退出を余儀なくされた人々の課題、分配や経済的な側面での排除は、労働組合、NPOを含み市民的な連携、共通認識が不可欠である。また、社会の持続性や市民的、政治的権利などは、コミュニティーに密着したパートナーシップの形成なしには、解決の糸口を見出せないと思う。


格差・社会的排除への挑戦
−労働組合の本来責任を踏まえた協働の模索を−


 格差・社会的排除への挑戦の問題は、労働組合、労働者自主福祉にとっていま、最大の課題である。日本の最低生活保障は、格差の底から抜け出すための「支え」の制度になっていない。とりわけ、ここではいま評判になっている「ワーキングプア」の問題に触れてみたい。

 働いても働いても豊かになれない…。どんなに頑張っても報われない…。NHKスペシャルのワーキングプアの特集は大きな波紋を投げかけた。

 いま、日本では、「ワーキングプア」と呼ばれる“働く貧困層”が急激に拡大していると言われている。ワーキングプアとは、働いているのに生活保護水準以下の暮らししかできない人たちとされ、最低生活保障の「底抜け構造」とも言われている。統計的に明確になっていないが、生活保護水準以下で暮らす家庭は、日本の全世帯のおよそ10分の1、400万世帯とも、それ以上とも言われている。

 派遣や請負といった雇用形態も「ワーキングプア」の供給源となっており、労働組合の責任は重いものがある。労働組合が本来めざすべきディーセント・ワーク(尊厳ある労働)は、働く人間として、家庭や地域でも役割を果たすことができ、働きがいを生きがいにつなげられるような労働であるが、残念ながら、強いられ誇りにできない受動的な労働や仕事を多く生み出していることは、労働組合の存在意義そのものに関わっているのではないか。「労働」と「生活」を軸にした新しい戦略が求められている。

 そして、ワンストップ・サービスの運動は、連合の本来責任の運動と連動した両輪の運動になっていくことが最も求められることではないか。


地域コミュニティー再生の必要条件・十分条件

 地域コミュニティーが活力を持つために必要な条件は、地域で人間同士が触れ合える基盤として、生活の知恵や文化、芸術、環境など人間の開花を実現させる要因が生き生きと根付いていることであり、労働と雇用を生み出す産業の基盤、少なくともそのシーズが脈打っていることにある。

 そして十分条件は、人間の尊厳・自立を可能にする生活時間・生活空間の「ゆとり」ではないか。正村公宏氏は、「労働時間短縮は文明の見直しにつながる」と提起しているが、持続可能な社会の形成には、いまこそ、生活時間、生活空間の作り変えが必要である。

 労働組合は、人間が生きる空間として必要な「仕事と家庭と社会生活」いずれに対しても積極的に向かい合える新しい、ワーク&ライフのバランスの取れた労働・仕事・職場作りの総合戦略を再構築する必要があり、ワンストップ・サービスの運動は、地域・職域の原点からそれを再構築する運動であると思う。(麻布十八番)

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