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寄 稿
春闘の変化と連合中小共闘について
JAM会長/連合副会長・中小労働委員会委員長 小出 幸男

 日本の労働運動は、戦後の新しい憲法に基づいて制定された労働三法によって社会的に認知され今日の労働運動として発達をし61年が経過した。その間に労働運動は大きな変化を伴いながらも時々の労働運動の指導者によって、日本社会の発展に大きな貢献を果たしてきたと思う。

 中でも労働運動の要である春闘は、60年の間に幾つかの変化を伴いながら今日を迎えている。この60年の間の変化を大別すると15年毎に大きな変化を起こしている。

 第1の変化は、近代的な労働運動がスタートして15年後の1960年(昭和35年)に「春に全労働者が一斉に交渉を行おう」という呼びかけで始まった春闘である。第2の変化は、その15年後、1970年には、今日の春闘に大きな影響を及ぼすことになる金属労協を基軸とした共闘体制である。それまでの日本経済は時の政府の方針である「所得倍増論」で賃金も大幅に上がったが、同時に「物価」も大幅に上がることになった。この時から「前年を上回る水準」を目標にしてきた要求から実質賃金の引き上げが議論の中心を占めるようになってきた。この時に論じられたのが「経済整合性論」である。「過年度物価上昇分+定昇(2%相当)+経済成長率」という要求方針は、組合員にとって理解がしやすかったということになり、後の春闘における主流の考え方になった。その中心的な役割を担ったのがJC共闘(金属労協共闘)でありその後、JC共闘を中心とした闘争体制が社会的に大きな原動力となった。第3の変化は、1990年前後からである。経済整合性論は、経済成長率の鈍化に伴って変化を起こし始める。大手労組を中心として賃金体系が確立され、「ベア春闘」へと変化し、引き上げ額で春闘を議論するようになった。このように日本の春闘が過去15年毎に変化してきたことを考えれば、2005年前後には、春闘は新たな局面を迎えているといえるのではないか。

 このような環境変化の中で2002年の春闘は、中小労組にとって衝撃を与える春闘となった。大手労組が、体系維持分確保へ傾斜する中、唯一、ベア要求を行った自動車総連が、「ベアゼロ」回答で妥結した。この結果多くの中小労組では、賃上げゼロが先行し、賃金体系を持たない中小労組では、マイナスベアとなってしまった。

 大手労組がデフレ下でも確実に、体系維持分を確保する中、体系を持たない中小労組の賃金低下を何とかしなければならないと考えたのが連合の新しい中小共闘の立ち上げである。
大手依存の春闘から脱皮し「自らの賃金を引き上げるには中小独自の共闘体制を組み賃金低下に歯止めを掛ける」という共闘が必要であると考えた。

 底上げを前提とした中小共闘は、大きく3つのことを目標とし、その目標に賛同する産別を集めた共闘体制の構築を図った。

 @新しい中小共闘に参加する産別は、単組の賃金情報を開示すること(但し企業名は不要)

 A新しい中小共闘は、体系維持分確保を前提とした共闘体制の構築を図る

 B新しい中小共闘は、産別共闘と地場共闘(地方共闘)に分けて共闘体制を構築する

 以上の方針を前提に、中小を抱えた産別に参加を要請、同意を得る活動から展開した。
2003年を準備期間とし、2004年から本格的に中小共闘の立ち上げを図った。2004年に賛同して情報開示して頂いた産別は26産別2500単組の情報開示であった。更に2005年には、30産別3500単組が情報を開示して頂いた。これらのデータを下に、中小の体系維持分相当を4500円として試算し、中小でも体系維持分確保することを前提として取り組んだ中小共闘は、2005年では、27%の単組が4500円以上を引き出した。2006年春闘では、4500円以上回答を得た単組が35%と増加した。2007年春闘では、景気も回復基調にあることから、中小共闘に集う単組の50%が体系維持分相当(4500円以上)を引き出してほしいと思う。これによって、中小共闘は初期の目的を達成することになる。

 一方、地場共闘体制は、2005年から地方連合を中心として立ち上げてきた。とにかく中小の賃金低下を抑えるために地場産業の体系維持分相当を算出してほしいということをお願いして回っている。この結果、地方においては、独自の調査を行い地場産業の体系維持分を試算し要求を組み立て一定の成果を上げる地方が出始めている。特に東北ブロックや四国ブロックでは、顕著にその成果が出始めている。又、賃金カーブを試算するソフトを使って中小の賃金カーブ算出を指導しているブロックもある。地方単位では、バラツキがあるが賃金の把握を行っている地方が増えてきた。地方活性化のためにも、全国を回って中小共闘の更なる強化を図りたい。

 このような状況の中で、景気が回復すれば、中小の賃金も体系維持分相当は確保できる単組は増えてくると思うが、問題は、それ以降の対応をどうするかということになる。次なる手段は格差是正を中心とした賃金の平準化闘争ということになる。このためには、賃金を高さで比較するデータを収集することが重要となる。そのためにも各単組で賃金カーブの算出を更に強化をしてほしいと思う。

 同時に、中小共闘は4年目を迎えている。中小共闘連合の中で春闘の中心的な役割を担うことは困難である。あくまでも中小共闘は、賃金の底上げを中心とした闘争体制である。春闘の変化に対して新しい春闘を構築することが重要と考える。そのためには先ずは、連合の各産別が産別独自の共闘体制を構築することにある。そして環境を同じくする者同士が集まった共闘体制をつくることが重要と考える。例えば国際競争力を必要とする産業では、外需型産業共闘、内需を中心とした産業では内需型共闘、更に、公共事業に近い産業では、公共事業共闘、交通運輸関連では、輸送産業共闘等、名前はどうであれ、連合の中で幾つかの共闘を構築し、傘下の主要な単組が中心となって産業の春闘相場を形成するという考え方が重要である。金属労協を中心とした春闘は終焉を迎えている。底支えを中心とした中小共闘は、新たな共闘体制の構築無くして多くの成果は期待できない。連合の中で、新たな共闘体制の枠組みが構築されることを期待したいものである。



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