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視点



21世紀環境立国へのパラダイム転換

No216 2007年7月
 
 1997年の「京都議定書」採択から10年。いまや地球温暖化問題は、人類共通の脅威として、独ハイリゲンダム・サミットでの最大テーマに浮上した。

 それに先立ち今年5月には、国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第4次報告書が出そろい、世界中の最新の科学的知見を集めた、地球温暖化の「原因」「影響」「対応策」が提起された。

 その中では・・・

@もはや地球温暖化は疑う余地がなく、その原因の90%は、18世紀半ばの産業革命以降の人間活動の影響であること。

A 地球上の平均気温が1990年に比べ2?3度以上高まると、地球全域でさまざまな危機的影響が懸念されること。

B今のままでは、途上国での急激な増加要因を含め、世界の温室効果ガス排出量は、2030年までに25?90%増える(2000年比)と予測されること。

Cシュミレーションでは、経済優先や環境配慮型など社会情勢に応じた6種類の設定で21世紀末の平均気温を予測。最悪ケースすなわち、化石エネルギー依存で高い経済成長を実現した場合は、最大6.4度上昇すると予測されること。

D 一方、炭素税や排出権取引といった経済的なシステムを有効に機能させ、CO2 1トンを減らすのに20?80ドルのコストをかければ、平均気温の上昇を2.2?2.6度に抑えることが可能であること。

 など、報告書は強い危機感と同時に、温暖化防止への希望とそれを実現するための方法を明記した。だがその一方で厳しく期限も切っている。遅くとも2020年には、地球規模での減少に向かわせないと、手遅れになることも警告しているのだ。


 6月8日に閉幕したハイリゲンダム・サミットでは、当初議長国ドイツの宣言草案には、

(1)温度上昇を2度以下に抑える。
(2)10?15年以内に温室効果ガス排出量を減少傾向にする。
(3)2050年までに世界の排出量を90年比で半減させる。

などの数値目標が盛り込まれていた。しかし経済への悪影響と中国などの参加を重視する米国は、数値目標に反対の立場を改めて表明。最後まで対立が続いたが、ドイツ・英国等の粘り強い説得や、日本の主張?サミット前にまとめた「21世紀環境立国戦略」で掲げた長期目標「世界全体の排出量を2050年までに現状比で半減」?が功を奏し、とにもかくにも最終合意にこぎ付けたのである。

 最後の議長総括では、「2050年までに半減することを真剣に検討する」などとした長期目標を確認。中国・インドなど主要排出国を巻き込んで、08年末までに2013年以降の枠組み(ポスト京都)を立ち上げ、09年の国連気候変動締約国会議(COP15・デンマーク)で、地球規模の合意をめざすことが明記された。

 基準年も示されない玉虫色の合意で、中国・インドなど新興工業国は早くも反発の姿勢を表明するなど、前途多難を予感させるが、京都議定書から離脱したまま背を向けていた米国を、ともかくも地球温暖化防止の新たな枠組み協議に復帰させた歴史的意義は大きいと評価されるべきだろう。


 しかし問題はこれからだ。来年の北海道・洞爺湖サミットの議長国、日本の責任はきわめて重く、更なる前進へ向けて真のリーダーシップが問われることとなる。

 果たして地球温暖化問題に対する本当の意味での日本の国家戦略とトータルな政策、政府・産業界・国民の合意と覚悟はできているのだろうか。

 長期目標?「2050年排出量半減」の主旨は、増え続ける温室効果ガス濃度を安定化させるため、自然の吸収量(110億トンCO2)まで、約2倍の人為的排出量(264億トンCO2)を引き下げることを意味するが、世界が半減なら、先進国の日本は6?8割削減が必要となってくることを認識しなければならない。

 さらに中期目標としての、2013年以降のポスト京都議定書の枠組みや目標設定についてどうするかは次の最大課題である。省庁間の対立や経済界の強い抵抗で日本はまだ何の具体案も示しえていないのである。

 加えて当面の短期目標?「90年比6%削減」の達成でさえ、京都議定書の本番(2008?2012年)を来年に控えたいま、きわめて厳しい状況に追い込まれている。2005年の排出実績は、マイナスどころか逆に8.1%増となり、目標とのギャップ14%削減にまさに総力をあげなければならない事態となっているのだ。

 一方EUはこの間、環境税を導入し、排出権取引制度をスタートさせ、風力や太陽光発電など再生エネルギーの比率も着実に増大させつつ、京都議定書の削減目標以上の達成に早々とめどをつけ、さらに次ステップについても2020年30%削減方針をいち早く打ち出してきている。

 もちろん、深刻な公害や2度の石油危機を乗り越えてきた日本は、GDP当たりのCO2排出量において世界の主要国中、最も少ない省エネ先進国であることは、まぎれもない事実である。しかし90年代以降、欧米などの急激な省エネ投資に比べ、日本ではエネルギー効率がそれほど改善されていないとの指摘もある。うかうかしてはいられないのだ。


 来年2008年には、いよいよ京都議定書の第一約束期間が始まる。また北海道サミットをはじめ、ポスト京都の枠組みをつくる交渉も本格化する。

 日本は、いま改めて21世紀の持続可能な社会に向け、「環境立国」として世界に貢献する決意を固め、腰を据えた国家戦略を推進する時をむかえている。

 環境対策を企業運営のコストとしてとらえるのではなく、「低炭素社会」「循環型社会」へ先頭を切って挑戦していくことが、環境技術の新開発や国際競争力の強化につながり、ひいてはそれらを通じて新たな成長を生み出し、雇用の維持・発展につなげていく視点こそが重要ではないか。

 これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄型の価値観からの転換をめざし、国民の意識改革を進めるとともに、新しいルールや経済的仕組みも積極的に検討し、時には大胆に決断していく政治のリーダーシップも必要である。そしてこれらを、ライフスタイル・ワークスタイルの見直しを含めた新しい社会・経済システム創造への壮大な挑戦としていくべきではないか。(固茹卵)


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