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視点


壁をなくすのも働き方の見直しから

No229 2008年7・8月

(壁と保育サービス充実)

 最近、「小1の壁」や「小4の壁」、といった言葉が囁かれているらしい。「小1の壁」とは、「小学校入学前は、朝から夜まで保育園で子供を預かってもらえたのに、小学生になった途端、(“学童保育”の仕組みが地域にあったとしても)夕方までしか預かってもらえないから困る」、というものである(学童保育の終了時刻は、大概の場合、保育園の閉園時刻よりも早い。)。次に、「小4の壁」とは、「学童保育の多くが小学校3年生までを対象としているために、4年生になると下校後は行き場がなくて困る」、ということのようだ。(なお最近は、放課後の居場所づくり、として、放課後の学校開放が進められている。)こうした、新たに発見された“壁”に加えて、従来からの「保育園入園の壁」もある。

 これらは、最近生じたものではない。働く母親の増加により、これまでの仕組みに対して、保育サービスの利用者として改善を望む声が大きくなったために皆の知るところとなったということであろう。子供が成長するのは本来喜ぶべきものであるのに、なぜ「壁」と言われてしまうのか。この議論が便利な保育サービスを要求する親の立場からのものであるからであろう。

 昨年末に政府が掲げた「ワーク・ライフ・バランス憲章」では、“国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会”が“仕事と生活の調和が実現した社会”であるとしている。さまざまな形で充実が進んでいる保育サービスについては、「仕事上の責任」を果たそうとしている親の多様な働き方をサポートできるようなサービスへと変わることが期待されている。

 しかし、保育に関しては、親の働き方をサポートできるかという視点に加えて、子供が健やかに成長できるかという視点も忘れてはならない。というのも、育児は数年で終わるわけはなくその後かなり長い期間続くからである。むしろ子供が成長すればするほど、家庭あるいは家族の重要性が認識されるようになるだろう。育児休業は、子供のためであるとともに実は親が小さい子の相手をすることにより子育てを楽しむことができるようにするための制度かもしれない(これから続く長い子育て期間に積極的に参加するきっかけ作りでもあろう)。


(親と子のかかわりを再認識すべき)

 近頃、家庭の教育力に改めて関心が集まっているが、教育といっても、親と子が日ごろから接しなければ望むべくもない。昔と比べて子供に対するしつけができていないと感じる人たちにその理由を聞いた調査が、2007年の内閣府「国民生活白書」でも取り上げられていた。そこでは、親自身の責任も挙げられていたが、親が仕事等で多忙であることや家族が一緒に過ごす時間が少ないことも、しつけができていない理由として挙げられていた。さらに、同じ家の中にいても、単独で行動していれば家族との時間は少なくなる。夕方から夜にかけての家庭内での行動を観察すると、高校生(16?18歳)は1人で3時間以上過ごす割合が3割を超えている。その値は小学生(10?12歳)では3%強であり、中学生(13?15歳)では2割となっているという。

 「家族が一緒に食事を摂る」ことについても、今や「孤食」が問題となっていることからもわかるように、「食べる」こと以上に、「食」を通じて家族のコミュニケーションを深めることが必要だとされているようだ、子どもの健康的な心身を育み、また、豊かな人格を形成するという考えから、家族が一緒に過ごすことの必要性が再認識され始めている。


(働き方の見直しこそ親と子の時間を増やすこと)

 長時間労働が疲労やストレスの原因となることは今や広く知られており、働く者の健康管理の面からみても労働時間短縮が必要であることは言うまでもない。働く本人の健康維持に加えて、子供とのかかわりの時間を確保するためにも、労働時間の短縮、働き方の見直しは必須である。非正規雇用の増加とともに正社員の労働時間は長くなっているといえる。働く父親の帰宅時間が遅くなる傾向にあり、また働く母親の帰宅時間も(もともと短時間の勤務形態で働いている場合が多いことにもよるのかもしれないが)、大半が午後7時までに帰宅しているものの、午後7?8時に帰宅する割合も高まっているという。一方で、小学生は9時になったら就寝である。子供と接する時間はほとんどない。


子供と接する時間を確保することの大切さが認識され始めているなかで、働き方に対応した保育サービスの提供の仕方として、保育のいっそうの長時間化は必要かどうか、よく検討することも必要であろう。親の働き方に保育サービスを合わせるのではなく、働き方を見直すことのほうが大事である。(恵)



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