第37回連合総研フォーラム~経済成長と生活向上を実感できる社会に向けた挑戦~を開催しました
2025年10月28日
連合総研は10月28日、「第37回連合総研フォーラム~経済成長と生活向上を実感できる社会に向けた挑戦~」をオンライン(ウェビナー)で開催しました。
本フォーラムは、翌年の春季生活闘争に向けて、現下の経済情勢を把握するとともに、経済社会や雇用・労働に関する課題を議論する場として、連合総研の年次報告書である「経済情勢報告」の公表に合わせて例年10月下旬頃を目途に開催しているもので、今回は約120名の参加がありました。
主催者を代表して神津理事長が挨拶を行い、賃上げが2年連続で高水準となる一方で、物価上昇やトランプ関税による不確実性が残る中、雇用と暮らしの再生、すべての勤労者が報われる社会の実現に向けた議論を深めたい旨の問題意識を述べました。
続いて、連合総研の経済社会研究委員会主査を務める吉川洋氏(東京大学名誉教授)が、「経済成長と生活向上に向けて」と題する基調講演を行いました。吉川氏は、デフレからインフレへと経済の潮目が変化している現状を指摘するとともに、長期停滞の背景として、消費停滞・将来不安・賃金の伸び悩みに加え、イノベーションの後退など構造的問題を提示しました。人口減少と高齢化が進む中で経済成長と実質賃金の上昇を実現する鍵はイノベーションの促進であるとの問題提起がなされました。
その後、齋藤潤氏(日本経済研究センター研究顧問)、永瀬伸子氏(大妻女子大学教授)、太田聰一氏(慶應義塾大学教授)の3名が登壇し(齋藤氏はリモートで登壇)、「経済成長と生活向上を実感できる社会に向けた挑戦」をテーマとするパネルディスカッションを行いました。
齋藤氏は、トランプ政権による関税政策が日本に及ぼす影響についての分析を示し、特に自動車分野を中心に対米輸出減少が避けられず、国内産業構造の転換と雇用のミスマッチ拡大への注意が必要であると述べました。また、こうした外部ショックに対応するためにも、持続的な賃上げが内需を下支えし、家計の安定につなげることが重要との認識を示しました。
永瀬氏は、日本の低物価の背景に非正規、特に大企業で多く雇用される女性の低賃金があると指摘しました。また、無限定正社員を優遇する制度が、ケアを担う人や若い世代の家庭形成を難しくしていると述べました。さらに、既婚女性が年収の壁で就業を調整する状況や、社会保険料負担を避けようとする企業の短時間雇用の増加が、女性の活躍を妨げていると指摘しました。その上で、非正規と正社員の賃金格差縮小、育児休業給付の拡大、第3号被保険者制度の見直しなど、賃金制度、働き方や社会保障の改革を提言しました。
太田氏は、若年層の失業率が低水準で推移する一方、若年無業率が近年上昇しているという課題を提示しました。無業化の背景として、メンタルヘルス問題、不登校経験、発達障害診断の増加、若者の「仕事離れ」などの存在を指摘し、学校から職場への移行を支える仕組みの強化や、若者が働きがいを感じられる職場づくりが労働組合にとっても重要な課題であると述べました。
質疑応答では、若年無業の増加の背景にはメンバーシップ型の日本型雇用の崩壊や過度なハラスメント配慮があるのではないか、また「仕事をしたくない」という回答が示す若者の仕事観をどのように捉えるべきか、さらに女性の能力を適切に評価する社会を実現する上で今後どのような労働時間法制が必要か、といった質問があり、これらの論点について登壇者間で意見交換が行われました。
(参考)「2025~2026年度 経済情勢報告~経済成長と生活向上を実感できる社会に向けた挑戦~」