連合・連合総研シンポジウム「働き方の多様化と法的保護のあり方~請負就業者とプラットフォームワーカーの就業実態及び国際動向を踏まえて~」を開催
2026年6月16日
6月11日、連合・連合総研シンポジウム「働き方の多様化と法的保護のあり方~請負就業者とプラットフォームワーカーの就業実態及び国際動向を踏まえて~」を、対面とオンラインの併用により開催しました。労働組合役職員、企業・団体関係者、研究者、報道関係者、行政・議会関係者など約250人にご参加いただきました。
このシンポジウムでは、「労働者概念の在り方に関する調査研究委員会」の成果としてまとめた報告書『働き方の多様化と法的保護のあり方~請負就業者とプラットフォームワーカーの就業実態及び国際動向を踏まえて~―労働者概念の在り方に関する調査研究報告書―』(2026年3月公表)をもとに議論しました。
清水秀行・連合総研理事長から開会挨拶を行った後、橋本陽子氏(学習院大学法学部教授、本研究委員会主査)が「研究委員会の趣旨・全体成果報告」と題して基調講演を行いました。橋本氏は、アンケート調査、ヒアリング調査及び文献調査に基づく検討経過を概観し、フリーランス法の見直し、労働者概念の見直し、迅速な労働者性認定手続、プラットフォーム労働の法規制、被用者保険の適用範囲の見直しなどを提起しました。
各委員等の報告では、加藤健志氏(労働調査協議会事務局長)から、請負就業者及びプラットフォームワーカーの実態に関するアンケート調査結果の概要報告がありました。調査結果からは、請負就業者の労働者性に関する傾向は2017年調査と大きく変わらないものの、Uber Eats、Amazon Flex等のようにプラットフォーム事業者と仕事上のやり取りをする者は、労働者性が相対的に低い傾向にある一方で、トラブル経験や保護ニーズが比較的高いことや、フリーランス法の周知・定着状況の継続的検証が必要であることが示されました。
多田英明氏(東洋大学法学部教授)からは、フリーランス法の概要と執行状況を踏まえた成果と課題について報告がありました。本法制定により取引の適正化と就業環境の整備の両面で制度整備が進んだ一方で、発注者の住所及び本名が明示義務の対象となっていないこと、デジタルプラットフォームを念頭に置いた規制がないこと、取引適正化法で新たに禁止されることとなった「協議に応じない一方的な代金決定」に相当する規定がフリーランス法にはないことなどが課題として指摘されました。見直しの際には、それまでの執行を踏まえた諸課題に加え、新たに取引適正化法に取り込まれた規定も踏まえた改正が行われることが望まれるとの言及がありました。
柴田洋二郎氏(中京大学法学部教授)からは、フリーランス等を被用者保険へ包摂する際の論点に関する報告がありました。現行制度の「使用される者」の解釈による「適用」と被保険者概念の「拡大」の2点に分けて報告がなされ、「適用」について、一定のフリーランス等は現行制度上も被保険者とする余地がある一方で、「拡大」について、複数事業主への労務提供の場合には、「連帯」の観点から、週所定労働時間の把握・通算、報酬基準、保険料の事業主負担割合の根拠についてそれぞれ制度的検討が必要であることが示されました。
井川志郎氏(中央大学法学部教授)からは、保護対象者概念の設計に着目したEUプラットフォーム労働指令の意義についての報告がありました。同指令は、労働者性に依存しない包括カテゴリーを設けての保護、労働者としての保護、さらには事実上の第三カテゴリーを設けての保護を、誤分類対策としての労働者性の推定と事実優位原則を用いることで、複層的・相互補完的に展開する点に特徴があるとの整理が行われました。その上で、日本における労働法制の保護対象の発展を考える上でも同様のアプローチが検討に値すること、解釈あるいは立法で包括カテゴリー型の制度に昇華させられれば、フリーランス法がその突破口になる可能性があるとの問題提起がありました。
千谷真美子氏(連合総研主任研究員)からは、欧米諸国及びEUにおけるプラットフォーム労働をめぐる裁判例・立法対応、ILO第198号勧告から第113回ILO総会におけるプラットフォーム経済に関する基準設定に至る議論についての報告がありました。その上で、2026年に採択が予定されている(※)条約の批准に際しては、勧告案にも留意した法整備が求められること、日本においても国際動向を踏まえ、契約の入口段階から保護が機能する法制度を構想する必要性及び反証可能な雇用関係の推定規定も有力な選択肢であることが示されました。
橋本陽子氏からは、労働法上の労働者性の見直しと日本におけるプラットフォーム就労の現状についての報告がありました。過去5年間の裁判例を踏まえ、労働者性の肯定例が増える一方、新しい就業類型では否定例もみられること、実態として生じている「事実上の拘束」を「業務の性質上当然」の拘束として指揮命令性を否定する傾向にあることが指摘されました。また、芸能分野では労働者性を問わない契約法理による保護が形成されつつあること、プラットフォーム労働の規制に当たっては労働者性の判断においてアルゴリズム管理による拘束を適切に評価すること及びアルゴリズムの透明性確保が重要な論点となることが示されました。
その後の質疑応答では、フリーランス法の執行体制、プラットフォーム事業者・下請企業・就労者が関係する場合の使用者性及び被用者保険における事業主負担の在り方についての質問がありました。1つめの質問に対しては、多田氏から、公正取引委員会ではフリーランス取引適正化室の設置、地方事務所の体制整備、書面調査、フリーランス・トラブル110番での相談対応などを通じて相当程度の執行体制が整えられているとの回答がありました。2つめの質問に対しては、橋本氏から、契約相手方以外の使用者性を認めることには現行法上限界があるため、EUプラットフォーム労働指令の連帯責任の規定や米国の「共同使用者」法理も参考にした立法的対応が必要であるとの回答があるとともに、多田氏から、フリーランス法の次の改正の際の課題であるとの回答がありました。3つめの質問に対しては、柴田氏から、使用者性の問題は今後さらに研究を深める必要があるとしつつ、参考例としてフランス法におけるプラットフォームの社会的責任に基づく仕組みの紹介がありました。
最後に、冨髙裕子・連合副事務局長が総括を行い、働き方の多様化により労働関係法令や社会保険関係法令の保護の対象とならない者が生じている中、他の先進国では労働者概念の見直しや規制強化が進んでいることを踏まえ、連合として今回の研究成果を政策実現につなげていきたいとの意思表明がありました。その後、市川正樹・連合総研所長が閉会挨拶を行い、シンポジウムを終了しました。
※ 講演日時点。プラットフォーム経済におけるディーセント・ワークに関する条約は、2026年6月12日に第114回ILO総会において採択された。ただし、同条約を補完する勧告は、審議時間の不足により第114回ILO総会では採択に至らなかった。
資料00_【橋本陽子氏】基調講演_研究委員会の趣旨・全体成果報告.pdf
資料01_【加藤健志氏】請負就業者・プラットフォームワーカーの実態に関するアンケート調査結果の概要.pdf
資料03_【柴田洋二郎氏】労働・社会保険法の問題について-フリーランス等の被用者保険への包摂を検討する際の論点-.pdf
資料04_【井川志郎氏】EUプラットフォーム労働指令の意義-保護対象者概念の設計に着目して-.pdf

