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前理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「久しぶりの台湾」

File.472019年11月27日発行

先月に引き続き「久しぶりの・・」である。今回は台湾。

去る10月末から11月初旬にかけて、ソーシャル・アジア・フォーラムに参加のため台湾・高雄市を訪問した。台湾へは2015年3月にITUC-AP(国際労働組合総連合・アジア太平洋地域組織)・運営委員会で訪問して以来、4年半ぶりとなるが、これまで数回の訪問は台北市であり、高雄市は初めて訪れた。幸いにして、高雄市在住の知人とも会うことができ、台湾全体や高雄市について意見交換することができた。

高雄市は人口約277万人で、人口では新北市、台中市についで3番目の台湾6直轄市のひとつである。商業都市としての基礎があり、日本統治時代には南進輸送基地の役割を担い、工業都市として拡大していった。外国企業による投資額は日本が最大であり、高雄市政府は2010年以降毎年、「高雄市優良日系企業表彰」を開催するなど、日系企業を重視するとともに、日本からの投資誘致に積極的だそうだ。

また、日本の台湾の窓口機関である日本台湾交流協会が、台湾人を対象にした調査では、今月中旬、最も好きな国が日本とした人は59%であったことを報じた。台湾の親日ぶりがこの結果からも明らかだ。

私が台湾に関して今、極めて大きな関心があるのは、来年1月に実施される総統選挙である。昨年秋に行われた台湾の統一地方選挙において、現在の総統である蔡英文氏の民進党が壊滅的な敗北を喫し、今年の春には、蔡英文総統の支持率が低下、再選に向けて出馬できるかどうか怪しい状況だと日本でも報道されていた。また、紆余曲折を経て事実上、蔡英文総統と一騎打ちとなる韓国瑜氏は、私たちが訪問した高雄市長だからだ。

絶望的といわれた蔡総統の支持率が、現在急上昇している。それは言うまでもなく、 香港の「逃亡犯条例」改正をきっかけにした大規模なデモが、台湾人にも大きな影響を与えたためだ。中国・習近平国家主席は今年年初、建国100周年(2049年)までに台湾と統一するための政策を発表した。その中に、「一国二制度」台湾モデルがある。中国の一国二制度下にある香港で、自主性や言論の自由が守られない現実を示しているのが、長期化する反政府運動である。そこには中国の影がちらつき、台湾世論が対中国への警戒感を拡大する結果となっている。

台湾総統選は始まったばかりであり、台湾の民意はまだ二転三転するかもしれないが、高雄市在住の知人はよほどのことがない限り、蔡総統の再選だろうと予想している。

台湾総統選は台湾内部にとどまらず、民進党を支持する米国、国民党を支持する中国、すなわち新冷戦といわれる米国VS中国の代理戦争の様相も呈しており、その結果によっては極東アジアの安全保障も大きく変わることになる。日本にとっても決して無関係なものではない。

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