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前理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「貴重な奇妙な初めての経験」

File.502020年2月25日発行

スポーツでは、競技場に観客を入れずに試合が行われることがある。一番多いケースは、観客のトラブルなどを原因とする規制措置や制裁。また、天候不順や感染症拡大、そしてテロ・暴動などが起こりうる場合、安全や健康面への配慮、保安や防疫などから適用する場合もあるそうだ。

昨年2019年、サッカーFIFA2022ワールドカップのアジア2次予選で政情不安のため2試合、また日本のゴルフトーナメントでも、台風や大雨のため男子、女子それぞれ1試合ずつの無観客試合が行われた。

この無観客試合ならぬ無聴衆講演・パネルディスカッションを、先日、私自身が経験した。これまで、聴衆の対象や人数は多種多様であるが、数限りなくと言ってもいいくらい、講演やパネルディスカッションを経験した。しかし、今回、貴重な奇妙な初めての経験であった。会場は数十人ならいざ知らず、500人規模の広さである。

もちろん、テレビやラジオの生放送も含めた収録も多く経験しているし、その場合聴衆はいない。しかし、その種の収録は、必ずキャスターやアナウンサー、論議する相手などの話す相手がいるのだ。

原因は言うまでもなく、新型コロナウイルスだ。主催者も検討の過程では、延期や中止も考えたが、再度の日程調整となるとなかなか難しいことから、この形式での実施でお願いしたとのことだ。可能な限りテレビ中継をし、当日見ることのできない人には、後日ホームページからその模様を動画にて伝えるようにするとのことであった。

その新型コロナウイルスによる肺炎患者が増加し続けている。しかも、感染経路の追跡ができる場合が大半だった局面から、不明なケースが全国各地で発生し、いわゆる市中感染とみられる例が相次いでいる。また、訪日旅行の中止は中国にとどまらず、日本での感染を懸念する欧米観光客にまで拡大した。

この感染症は、症状が出るまで一定の時間がかかるとともに、感染しても明確な症状が出ないケースもあり、現時点では確実な予防策を講じることが困難な状況だ。

クルーズ船「ダイアモンド・プリンセス号」の対応をめぐっても、何故、約3700人の乗客・乗員の検査をしなかったのだろうか?など、率直な疑問が残る。不可能であれば、その理由をわかりやすく国民に伝えるべきだ。

この例も含めて、グローバル化とインバウンドなどから、水際作戦がかなり難しかったことは確かであり、政府の対応も後手後手にまわったのは事実だ。これらの課題を生かし、今後の対策が重要であることは言うまでもない。

政府は、検査体制の拡充と治療方法の確立は言うに及ばず、自治体や医療機関、企業、そして国民に対して求めることを含め、早急に今後の対策強化に対応できる体制を構築してほしいものだ。

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