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前理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「東日本大震災から10年」

File.632021年3月11日発行

去る2月13日の夜、東北地方を最大震度6強の地震が襲った。気象庁は、東日本大震災を起こした巨大地震の余震と発表した。

この地震は風化に向かう日本社会に、震災は終わっていないことの警鐘を鳴らしたのかもしれない。現在もなお行方不明者が2500人以上いることが、復興の途中であることを如実に表している。どれだけ月日が流れても、命の重さは変わらない。

2011年3月11日の東日本大震災から今日で10年。それぞれの「あの日」があっただろう。

10年が経過した今年、被災地を訪問しようと思っていたが、コロナ禍の中でいつ実現できるのかわからない。数回訪問した被災地は、どうなっているのだろうか。おそらく、被災地の復興状況は地域によって大きく異なっていると思うし、特に個々の住民の実情に応じた支援が重要になっているはずだ。

10年前、私は連合会長を務めていた。災害発生以降ただちに「災害対策救援本部」を立ち上げ、救援・支援活動を開始した。その柱は、「組織内外への救援カンパの呼びかけ」「被災地への支援物資の提供」「連合救援ボランティアの派遣」「政府・政党・経済団体などへの働きかけ」の4つであった。

特に「災害救済ボランティア」は、3月末以降、岩手、宮城、福島の3県にボランティア拠点を設置し、定期的に一定の人数のボランティアを送り続け、半年で延べ3万5千人の派遣となった。この結果は、構成組織や地方連合会の中でしっかりとバトンを引き継いでもらった成果である。このように大規模に継続してボランティアを派遣している民間組織は、連合をおいて他にはなく、誠実で規律のある活動に対して、地元のボランティアセンターや被災者から評価と信頼を得た。

一方では、極限状況の中においても「希望」を失わず、しっかりと現実を受けとめて生きる多くの被災者に私たちは逆に励まされ、本当の安心社会は、助け合い、連帯、分かち合う人と人との絆からしか生まれないことも改めて実感した。

そして、この10年の間にも大規模な自然災害が相次ぎ、16年熊本地震、18年北海道地震、また気候変動により毎年のように起こる台風や豪雨災害は激甚化している。今後30年間に南海トラフ地震は70~80%、首都直下地震は70%の確率で起きると予測されている。

この大震災を忘れない。決して風化させない。記憶や残された教訓を語り継ぎ、近い将来起きるであろう自然災害に対して、それぞれのレベルで事前に備えることを徹底しなければならない。

10年目の今日、被災地に思いを馳せ、犠牲になられた多くの方々のご冥福を改めてお祈りするとともに、そのようなことを想う日にしたい。

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