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コラム

魚が高いですね

浦野高宏2018年10月10日発行

今年は10月以降に秋刀魚の豊漁が期待でき、形も大きい上に脂も乗っているだろうとのことで、魚好きとしてはありがたいことだ。

なにしろしばらく前から、魚が高い。肉よりよほど高い。昨年など、大衆魚であったはずのアジがまるで高級魚のような値段で、いやもう、スーパーの魚売り場で値段を見て、あきらめることが何度もあった。日本食が世界的に流行るなどして食べる人が増えたことと、獲りすぎや気候変動による資源の減少、漁場の移動など、さまざまな要因が背景にあるらしい。

まあ、なかなか手に入らないものが高くなるのは仕方がないとして、それにしても何とかならないものか。

実は私は漁師のせがれである。親父はマグロのはえ縄漁船の漁労長で、南米ペルーやエクアドルを基地に太平洋や大西洋のマグロを獲っていた。私自身大学を出た後しばらくは、そのころ近海での漁を始めた親父の小型船に乗っていたこともある。生まれ育ちはシラス漁が盛んな漁港の町で、親類の多くはシラスの加工場だ。つまり、魚の中で暮らし、育ってきたのである。魚にならなかったのが不思議なくらいである。

ということで、とにかく魚がないと生きていけないのである。

そんなわけで安定した魚の供給を願うものだ。

まず水産資源の保全が必要だが、それはそちら方面の対策をしっかりと世界と協力しながらやっていくしかない。今後も自分を含め日本人が魚を安定的に食べていくために欠かせないもう一つの側面は、漁業に携わるひと、水産関係の労働力の確保についてである(ここらへんから都合によりやや力ずくで連合総研っぽい話になるのである)。

私の経験でも、日本の漁業の現場の労働は、かなりきついものがある。世間でも3K、4K的なイメージがあると思う。

たしかに「板子一枚下は地獄」というように、沈没だの転落だの水難関係の事故も多いし、刃物や手鉤、網やロープ類など船の中にも危険なものが多く、怪我や死亡事故も頻繁に起きる。ちなみに親父は機関場での爆発事故で大きな金属片が太ももに入り手術を受けたことがあり、子どものころは縫合したあとをよく見せてもらったものだ。

これだけでも十分に避けたくなる業界なのだが、私が特に辛かったのは、働く時間帯が世間と違うことと予定が立てられないことだった。

日の出前には漁場に着かなければならないので、出航の準備は深夜の2時、3時に始まる。だから夜7時、8時には寝る支度をしなければならない(とは言ってもそうそう寝られるもんじゃないが)。またその日にならないと、休みになるかどうかわからない。出港予定時の天候(関係方面の観測所の情報)で判断する場合もあるし、出港してから波にあおられてあきらめて帰ってくる場合もある。いい天候(海の場合は風がないこと)が続く限りは漁に出続ける。というのも、台風が来たりするとまるまる一週間出漁できなかったりするので、食うためにはそうするしかないのである。

こうした仕事をしていると、会社員などの友人とどこかに遊びに行く予定など、絶対に立てられない。可能性があるとすれば台風のときだが、実はそのときはそのときで荒天準備の作業やら大規模港への退避などで忙しい。それでもあるとき妹の友人兄妹と映画にでも行こうかと相談をしたこともあるが、あいにくその家はお寺さんで、むこうの都合がつくのは仏滅か友引しかないという。一方こちらは漁師である。つまり両者の都合がつくのは、①台風などで嵐が吹き荒れており、②なおかつ仏滅か友引の日である、ということがわかり、さすがに気持ちがへこんで計画を立てるには至らなかった。

お分かりのことと思うが、これではなかなか若者が水産とくに漁船関係を積極的に選ぶのは難しい。働き手がいなくなってしまえば、安定した水産資源の供給は難しい。魚が手に入らなくなるということであり、つまり、私は生きていけなくなってしまう。

これは、非常に困る。

以前NHKで放送していたが、イギリスや北欧の漁船では機械化が極めて進んだものもあり、紹介されていたフネでは漁師は船内で機械を操作するだけで、長ぐつとカッパで水しぶきを浴びるようなことはなかった。漁師というよりオペレーターである。なかなか人気の職場だという。またこれは以前私が取材した国内のある港だが、自分の船で自分が稼ぐ、という形ではなく、漁師はその港・組合の従業員であり、港全体で稼ぎそこからみんなが給料をもらう。そして定休日も設ける、という形をとることで安定した職場を実現していた。これなら、若者も仕事に就きやすいし、実際にそこでは他の漁港と違って多くの若者が漁業に従事していた。

漁業を魅力的な職場にしている事例は、国内にも世界にも、いろいろとあるだろう。それらを参考にしていくことで、多くの若者が男女を問わず働きたくなるような、魅力的な漁業職場は実現していけるはずである。

これからも安心して魚が食べ続けられるよう、ここら辺をちょっと研究してみようかなあ。一応連合総研の研究テーマとしては、そんなに的外れでもないだろうし。どうですかね、皆さん。

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