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「SHINOHATA」のこと

萩原文隆2018年12月25日発行

 20181113日、ロナルド・ドーア氏が逝去されました。みなさんご存知の通り、知日派の英国の社会学者として著名な方です。このような高名な方について、この8月に連合総研に着任した駆け出し研究員が何か書くことは大変おこがましいことですが、ほんの少しだけ書かせていただきます。

 実は、直接会話をさせていただいた経験があります。1995年に産別の研修制度で英国を訪問し、あるシンポジウムの傍聴をさせていただきました。その際、ドーア氏が講演者で出席されていました。そのシンポジウム終了後、勇気を出して声をかけさせていただきました。自己紹介と今回の研修の目的などをたどたどしい英語で話していると、突然、「日本語でいいですよ」と言っていただきました。そんな調子ですので、会話の内容は覚えておりません。このときほど、もう少し英語を勉強しておくべきだった後悔したことはありません。

 さて、この間、あらためて、ドーア氏の著作の一つ「幻滅」を読ませていただきました。私はもちろん「書評」をできるほど力量はありませんので、感想を1つ、2つ書かせていただきます。これも前述の研修と関係があるのですが、ドーア氏にお会いできたあと、やはり、原文で著作を読もうと決心をして、大学の生協に行きました。これまで、日本語訳で「イギリスの工場・日本の工場」と「都市の日本人」は読んでいたので、それ以外で、と選んでいると眼に入ったのが「SHINOHATA」でした。この本が気になったのは、おそらく「表紙」だと思います。この「表紙」は日本の「田植え」風景の写真です。海外に来て「ホームシック」なっていたのかも知れません。購入し、読み始めたのですが、途中でギブアップをしてしまいました。そして、いつか和訳が出るだろうと思って、購入から20数年が過ぎてしまいました。すると、今回、読んだ「幻滅」に「SHINOHATA」のことが記載されており、しかも日本語訳を許可しなかった理由も書かれていました。なるほどと思うとともに、これで、残念ながら、おそらく日本語訳はもうでないだろうと思いました。和訳を許可しなかった理由は、それが日本で読まれることにより調査をおこなった「村内にいざこざをおこすだろう」ということへの配慮であったこと、そして、そろそろ関係者がほとんど鬼籍に入り、「和訳を出そうと思って、素晴らしい訳者を見つけたのだが、出版社がみな断ってくる」とのこと。

 米国流の横文字ノウハウ本は毎日のように新刊が出ているのに、日本とは、日本人とは、ということに現代の日本人は興味がないのでしょうか。自身を客観的にみてくれ、良いことは褒め、課題は厳しく指摘してくれる、このような意見に耳を傾けなくて、国際化や国際協調はできるのでしょうか。ちまたには、日本文化、日本人礼賛の雑誌やテレビ番組があふれています。自国に愛着を持つことは当然のことだと思います。しかし、辛らつな意見をいってくれる方を大事にすべきではないでしょうか。

 ドーア氏は不世出の知日家かもしれません、おそらく第二、第三のドーア氏が現れることは難しいのでしょう。日本人自体が日本を知りたくないのであれば。

「SHINOHATA」のこと 写真.jpg

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