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シンポジウムの開催報告

シンポジウム「セーフティネットと集団-新たなつながりを求めて」を開催

2023年8月17日

  • イベント1

連合総研は、8月7日、シンポジウム「セーフティネットと集団-新たなつながりを求めて」をオンラインにて開催しました。

本シンポジウムは、2021年から進めてきた「with/afterコロナの雇用・生活のセーフティネットに関する調査研究委員会」の研究成果として発刊した書籍『セーフティネットと集団-新たなつながりを求めて』を題材に、さらに議論を深めることを目的に開催しました。研究者、労働組合関係者など約200名の方々が参加しました。

冒頭、本委員会主査の玄田有史・東京大学社会科学研究所教授から、「生活や雇用が不安定な個人ほどセーフティネットも脆弱である構造問題をいかに解決するか」「多様性が分断や孤立を加速させないための集団(フレンズ)とは?」と2つの問いを投げかけ、パネル討論に移りました。シンポジウム全体を通じて、玄田教授がコーディネーターを務められ、登壇者や参加者との活発な議論を行いました。

パネル討論の第1部「雇用・生活のセーフティネットを編む」では、酒井正・法政大学教授からは、コロナ禍での雇用のセーフティネットの課題、田中聡一郎・駒澤大学准教授からは、住宅手当や地域を中心とするセーフティネットの編み直し戦略、平川則男・連合総研副所長からは、セーフティネットを必要とする人に届けるための基盤の重要性について、それぞれ報告をいただきました。

討論のなかで、セーフティネットが抱える問題解決の糸口は何かとの問いに対して、平川副所長からは「どのくらいの人たちが制度から漏れ落ちているかを把握することが必要」、田中准教授からは「生活困窮者に支援を絞るのではなく、居住支援という幅広い支援をすることが重要」、酒井教授からは「開かれた議論が必要、コロナが明けて忘れかけられているという懸念がある」との見解が示されました。

第2部「ひらく・つながる・支える――集団の可能性」では、松浦民恵・法政大学教授からは、新たなつながりとしての発言する職場集団(ERG)、神吉知郁子・東京大学准教授からは、法律の視点からみたセーフティネット格差と労使自治の可能性、後藤究・長崎県立大学専任講師からは、ドイツのフードデリバリーの配送ライダーたちの労働条件改善の運動について、それぞれ報告をいただきました。

討論のなかで、松浦教授からは、ERGのような既存ではない集団が広がっていく見通しについて「従業員の主体的な集団を重視する企業は増えてきているのではないか」との言及がありました。神吉准教授からは、どのグループにも属さない人々へのセーフティネットがないといった問題に対して、「集団になって協約を締結するのは重要だが、結果だけではなく、集団化すること自体が、孤独・孤立・分断への処方箋になる。そうした機能に着目した法制化もありうるのではないか」との意見が出されました。後藤講師は、ドイツで配送ライダーたちの運動が成立する条件として、「ドイツの労働組合は、政治的な影響力が大きく、産別組織の使命感も強い。従業員代表制が整備されている点も日本と異なる」との特徴について触れました。

参加者の方々からは、公助と共助の役割分担、労働組合の同質性と多様性のジレンマ、日本における従業員代表制の可能性など、たくさんの質問をいただきました。全体討論のなかで、登壇者の方々に回答いただきました。

最後に、玄田教授をはじめ登壇者の方々から、一言ずつ感想をいただき、シンポジウムを終了しました。

※ 書籍『セーフティネットと集団-新たなつながりを求めて』(玄田有史+連合総研編、日経BP 日本経済新聞出版刊)の詳細については、こちらをご参照ください。

https://www.rengo-soken.or.jp/work/2023/05/180953.html

01_玄田有史氏資料(冒頭).pdf

02_酒井正氏資料.pdf

03_田中聡一郎氏資料.pdf

04_平川則男氏資料.pdf

05_松浦民恵氏資料.pdf

06_神吉知郁子氏資料.pdf

07_後藤究氏資料.pdf

08_玄田有史氏資料(全体討議).pdf

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