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第5回識者ヒアリング報告(AI・デジタル時代の「支え合い社会」に関する調査研究委員会)

2026年10月 6日

 第9回AI・デジタル時代の「支え合い社会」の在り方に関する調査研究委員会」(主査・新川敏光 法政大学法学部教授)(2026年8月20日)において第5回識者ヒアリングを開催しました。

 講演では新川敏光((法政大学法学部教授・京都大学名誉教授/ AI・デジタル時代の「支え合い社会」の在り方に関する調査研究委員会主査))から「AI・デジタル時代の『支え合い社会』の構想に向けて」をテーマに講演があり、闊達に意見交換をしました。 

<講演のポイント>
(1)「福祉国家の終焉」とは何を意味するのか
 「福祉国家が終わった」とは、社会保障そのものが不要になったという意味ではなく、戦後に成立した国家・経済・民主主義の体制としての福祉国家を支えてきた政治経済的条件が失われつつあることを意味する。福祉国家は、組織資本主義と大衆デモクラシーを基盤に、社会権を市民の権利として確立してきた。
(2)組織資本主義と大衆デモクラシーの崩壊
 戦後の福祉国家を支えたのは、労使交渉による調整、ケインズ主義による需要管理、国際市場の変動を国内社会から緩衝する「埋め込まれた自由主義」であった。また、大衆デモクラシーの発展には、労働者の組織化や労働組合をはじめとする中間団体が重要な役割を果たした。しかし、1970年代以降、脱フォード化、ネオリベラリズム、グローバル化などが進展し、労使和解体制や労働組合の力、中間層が弱体化するとともに、社会の分断や格差が拡大した。
(3)デジタル経済がもたらす格差と民主主義・社会関係の危機
 AI・デジタル経済、とりわけプラットフォーム経済やクラウド資本主義は、自由な市場競争というよりも支配・被支配の関係を生み、「デジタル封建主義」ともいうべき状況をもたらす可能性がある。また、アテンション・エコノミーやエコーチェンバー、フェイクニュースなどによって、社会の分極化や相互不信が進み、民主主義を支える「事実に基づく言説政治」や人々の社会的関係そのものが揺らぐ可能性がある。これに対抗するものとして、共有資源としての「デジタル・コモンズ」の可能性が示された。
(4)コモンズと中間団体の再生
 こうした状況を乗り越えるためには、個人の自己実現を支える共有資源としてのコモンズを再生するとともに、労働組合を含むアソシエーション(中間団体)を再構築し、人々の連帯や社会的信頼を形成していくことが重要である。その際、目的を共有する組織だけでなく、異なる人々が偶然に出会い、交流することのできるカフェや広場などの「第三の場所」が、一般的信頼や社会的関係を育む基盤となり得る。
(5)「福祉国家」から「支え合い社会」へ――自助・共助・公助の再構成
 多様性に開かれた動員戦略が目指すのは、福祉国家ではなく「支え合い社会」である。そこでは、「自助>共助>公助」という関係を、自己責任論としてではなく、個人が社会の中で自己実現・自己発展していくための条件として捉えることが重要であり、共助で支えきれない部分を公助が担う。こうした支え合い社会の形成には、中間団体やコモンズ、第三の場所を通じた人々のつながりと信頼の再構築が求められる。

 なお、講演録(要約)については、【講演録要約版】第5回識者ヒアリング(新川敏光主査).pdfをご参照下さい。

 第9回研究委員会の模様については下記をご参照下さい。
https://www.rengo-soken.or.jp/info/2026/08/241000.html

 本委員会の趣旨、委員構成等については下記をご参照下さい。
https://www.rengo-soken.or.jp/work/2024/10/281041.html

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