第38回連合総研フォーラム~激変する社会における働く人の安心の実現~を開催しました
2026年11月 5日
連合総研は10月26日、「第38回連合総研フォーラム~激変する社会における働く人の安心の実現~」を、連合会館での対面とオンラインの併用によるハイブリッド形式で開催しました。
本フォーラムは、翌年の春季生活闘争に向けて、現下の経済情勢を把握するとともに、経済社会や雇用・労働に関する課題を議論する場として、連合総研の年次報告書である「経済情勢報告」の公表に合わせて例年10月下旬頃を目途に開催しているもので、今回は約150名が参加しました。
冒頭、主催者を代表して清水理事長が挨拶を行い、3年連続で5%台の高い賃上げが実現する一方で、強い物価上昇圧力等の課題を踏まえ、賃上げのすそ野をさらに広げるとともに、「人への投資」に一層の力を注ぎ、格差を是正して、働く人が安心して働くことのできる労働環境の実現に向け議論を深めたい旨の問題意識を述べました。
続いて、連合総研の経済社会研究委員会の主査を務める吉川洋氏(東京大学名誉教授)が、「日本経済の現状と課題」と題する基調講演を行いました。吉川氏はデフレからインフレへと経済の潮目が変化したことや、経済成長と実質賃金上昇のためイノベーションの促進が必要である旨、指摘しました。また、働く人の生活は社会保障や税制といった経済財政政策にも大きな影響を受けることを指摘し、財政規律の重要性を強調しつつ、労働組合は賃金雇用だけにとどまることなく広く経済・社会全体のあり方について情報発信するべきとの問題提起を行いました。
その後、齋藤潤氏(日本経済研究センター研究顧問)、永瀬伸子氏(大妻女子大学教授)、太田聰一氏(慶應義塾大学教授)の3名が登壇し、市川所長の司会進行の下、パネルディスカッションを行いました。
齋藤氏は、コロナ以降、正規雇用で働く人についてすべての年齢層で転職が増え、転職を経て賃金が上昇していることを示しました。その背景には人手不足があるとした上で、転職の可能性が賃金をめぐる雇用主に対する交渉力になり得ることを指摘するとともに、AIの普及を踏まえた技能訓練の機会と転職機会を保障して、転職しやすい環境整備に取り組むことが重要と提起しました。
永瀬氏は、現役労働力の一層の減少が見込まれるのを踏まえて、「103万円の壁」「130万円の壁」を要因とする有配偶女性の就業調整が重要な課題であることを指摘し、厚生年金・医療保険の小規模事業者への適用拡大が、結果として短時間労働者を増加させていることを示しました。また、最低賃金で働いている女性が増えていること、出産後の女性の年収下落が顕著であることを示すとともにで、無限定正社員を優遇する人事制度が若い女性の非婚、ひいては少子化をもたらしていることを指摘しました。その上で、労働組合は若い世代の労働時間の問題に力を注ぐべきとの問題提起を行いました。
太田氏は、長時間労働を選択可能とする労働時間規制の見直しをめぐって、労働者自身が健康リスクを十分に把握していないことや、企業との交渉や労働者間の競争を通じて過度な長時間労働につながりうること、雇用そのものが減少する可能性、男女間の収入格差の原因となりうること等を指摘しました。その上で、働く人が十分な情報と交渉力を持って選択できる環境を確保すべきことと、問題の性質に応じて情報提供、休息確保、勤務間インターバルなど複数の政策手段を考慮すべきことを提起しました。
質疑応答では、日本の賃金が他の先進国と比べて低いのはなぜか、増加した企業収益の労働者への分配が不十分ではないか、賃上げに向けて取り組むべきは経済政策、人材育成、企業努力のいずれか、人材確保と転職のバランスをどのように図るべきか、労働時間規制を緩和するのは問題ではないかなど、活発な質疑を行うとともに、登壇者間でも意見交換が行われました。
資料2:転職機会の拡大をどのように評価すべきか(齋藤潤氏).pdf
資料3:女性の働き方と報酬をどう改革するのか(永瀬伸子氏).pdf
(参考)2026~2027年度 経済情勢報告~激変する社会における働く人の安心の実現~
