「清明」に寄せて
File.12026年4月14日発行
4月1日の臨時理事会で、神津里季生・前理事長の退任を受けて連合総研の理事長に就任しました。ご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
二十四節季(にじゅうしせっき)とは、暦の上で1年を春夏秋冬の4つの季節に分け、さらにそれぞれを6等分(約15日ごと)にした24の季節の区分をいう。中国の戦国時代の紀元前300年代に発明され、季節の指標として現代の生活や農作業にも用いられている。明治時代に採用された太陽暦では1月1日が1年の始まりとされたが、米が主食であった日本では古来より二十四節季の「立春」が米作りの始まり、1年のスタートという認識があった。童謡『茶摘み』の歌詞「夏も近づく八十八夜」は立春から数えて88日目(例年5月2日頃)で、霜が降りなくなり本格的な農作業や茶摘みが始まる目安の日とされている。
立春から数えて5番目が「清明」で、今年は4月5日だ。万物が清らかで生き生きとした様子を表した「清浄明潔(せいじょうめいけつ)」を略した言葉だ。確かに花が咲き、蝶が舞い、空は青く澄み渡り、爽やかな風が吹く良き頃合いだ。4月は日本では年度の始まりの月だ。テレビからは入社式や入学式のニュースが流れる。社会人としてのスタート、新しい学びの場への挑戦など、新入社員や入学生の満面の笑みと緊張した表情、喜ばしい、晴れやかな、心弾む、ウキウキした姿が見られる。連合総研の事務所近くの日本武道館では桜咲く中、連日大学の入学式が行われていた。未来を託す、これからを生きる若い世代の皆さんが充実した、満足のいく生活・人生が送れるよう祈るばかりである。
連合は2026春季生活闘争で「賃上げがあたりまえの社会」の実現をめざし、物価を上回る賃上げ、適正な価格転嫁・適正取引の推進を訴えてきた。春季生活闘争は中小組合の本格交渉を含めて格差是正の闘いの重要な時期を迎える。4月1日の連合の第3回回答集計では、全体で5.09%、中小でも5.00%と高水準が続いている。有期・短時間・契約等労働者は昨年同時期の9.88円増で時給80.39円(6.61%)の賃上げ額となっている。
4月8日発表の厚労省の2月の毎月勤労統計調査によると、名目賃金を示す1人当たりの現金給与総額と基本給に当たる所定内給与は、ともに3.3%増えた。これは2025春季生活闘争による2年連続5%を上回る賃上げや全国で1,000円を超える最低賃金の引き上げが広がった結果と言える。物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比で1.9%増え、プラスは2カ月連続となった。2月の消費者物価指数の上昇率は1.4%で、1月の1.7%から伸び率が縮んでいた。連合が取り組んできた4年間の「未来づくり春闘」の流れ、成果から言えば、2026年の実質賃金は上回り続けるものと考えていた。しかし、昨年末のガソリン税の旧暫定税率廃止や今年1月に再開した電気・ガス代の補助などがあったものの、政府による効果的な物価高対策は不十分のまま、2月末にアメリカとイスラエルによるイランへの軍事攻撃が行われ、中東情勢の緊迫に伴い原油価格が 高騰している。停戦の協議も交渉の決裂により、先の見えない厳しい状況となっている。ホルムズ海峡の「閉鎖」は続き、日本への原油の輸送も滞り、今後のガソリン・重油などの燃料やプラスチック・合成ゴム・繊維の原料となるナフサなどの石油製品の値上がりも必至といわれている。残念ながら、実質賃金がプラス圏を維持できるかは見通せない状況となった。
4月は希望と生命力に満ちた時期と思っていたが、世界の厳しい情勢や災害立国といわれる日本の地震や豪雨災害だけでなく、富士山噴火への対応も危惧されるなど、予断を許さない状況であることも述べておきたいと思う。
皆さんにとって、スタートした2026年度が、難しくとも実り多き一年となるよう心より祈念申し上げる。
連合総研 理事長 清水 秀行