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前理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「今年の・・・」

File.362018年12月28日発行

清水寺の森清範貫主が12月中旬に、大きな越前和紙に揮毫する姿が年中行事となった、世相を一字の漢字に託して表現する「今年の漢字」は、「災」が選ばれた。地震・台風・豪雨・酷暑と自然災害の多い年であったことを反映している。この「今年の漢字」は、1995年から始まり今年19回目、すっかり師走恒例となっている。1995年は阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件が起こった年であり、その年の漢字は「震」、2011年東日本大震災の年は「絆」、そして2004年中越地震の年が「災」であり、14年ぶりとなる。

「今年の・・」でその他に毎年注目しているのが、英国の辞典会社のコリンズとオックスフォードの「今年の単語」だ。最近の時代を反映した一言である「FakeNews」はコリンズの昨年の単語であり、「Post-truth」はオックスフォードの2016年の単語だっただ。そして、今年の単語として、コリンズは「Single-use(使い捨て)」、オックスフォードは「Toxic(毒性の、有毒の)」を選んだ。かつては手軽で便利なライフスタイルのひとつであった「Single-use」が、今は無駄の多い社会の象徴となり、使い捨てプラスチックごみが海洋生物や生態系のバランスに悪影響を与えるだけでなく、環境負荷・環境汚染のひとつとなっていることから選ばれたという。「Toxic(毒性の、有毒の)」は、2018年に辞書サイトで検索頻度が前年に比べて45%増えたそうだ。また、英国BBCの全国向けラジオ放送が毎年行っている「子どもたちの今年の単語」は「plastic(プラスチック)」が選ばれたと報道された。その理由は前述のように言うまでもない。ちなみに、2016年は「refugee(難民)」、2017年はtrump(トランプ)」だった。

「災」・「Single-use(使い捨て)」・「Toxic(毒性の、有毒の)」と、今年はまさに共通点がある言葉が選ばれている。環境問題への警鐘とともに、便利さや効率性だけを求める社会から、私たちにもう少しだけでいいから不便な暮らしや生き方、非効率性を受け入れることも示唆しているのではないだろうか。

一方、オックスフォードの「Toxic(毒性の、有毒の)」には、「有毒」という言葉の本来の意味だけでなく、比喩的な意味での使用も多くなっているという。Toxicと一緒に使われる頻度の高かった単語は、1位にはChemical、これは当然といえば当然。2位はMasculinity、toxic masculinityは有害な男らしさ。すなわち、伝統的な男性観や男性優位の意識は、女性差別主義、暴行や暴力的行為につながるという使い方だそうだ。

今年・2028年も残り僅かになりました。行く年2018年をじっくりと振り返りながら、来る年2019年を見つめる、そんな年末年始をお過ごしください。皆さん、良いお年をお迎えください。

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