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前理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「30年周期」

File.372019年1月28日発行

江戸時代後期から昭和初期を生き、「論語と算盤」を説く日本資本主義の父と呼ばれた渋沢栄一氏。彼の玄孫である渋沢健氏は、「30年のリズム感」を提唱する。

すなわち、1870年~1900年は、江戸時代の常識が破壊された「破壊の30年」、1900年~1930年は、日露戦争に象徴されるように、当時の新興国であった日本が、世界の先進国の仲間入りをする「繁栄の30年」、1930年~1960年は、戦争の時代となった「破壊の30年」、1960年~1990年は、高度経済成長期でありジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた「繁栄の30年」、1990年~2020年は、バブル崩壊から失われた数十年といわれる「破壊の30年」。そして、彼はこう付け加える。「私自身は、この30年という周期性がしっくりします。30年の破壊と30年の繁栄。陰陽の関係であり、60年の1周期です。十二支も60年、還暦も60年。ぐるっと回って、新しくまた始まる。自然の法則を感じます」と。

新しい年2019年も1ヶ月が経過しようとしている。今年で昭和から受け継いだ平成が幕を閉じる。多少年代はズレるかもしれないが、30年前の1989年を振り返ってみると、大きな時代の変わり目を感じさせる出来事が多く起こっている。

例えば、ベルリンの壁の崩壊。この壁の崩壊は、東西ドイツの融合のみならず冷戦構造終焉の引き金をひくこととなった。1991年にはソビエト連邦が崩壊し、東欧諸国を中心とする共産主義国家が雪崩を打つように市場経済へと参入した。そのことは90年代半ばからのIT革命と歩調を合わせるように、グローバル化の進展の大きな要因となったのである。また、この年には中国・北京で天安門事件が起こっている。一方、日本に目を転じれば、その年の12月の大納会での株価最終終値はなんと38915円、いわゆるバブルのピークである。90年代に入り、バブルは一気に崩壊していく。渋沢健氏のいうバブル崩壊から失われた数十年という「破壊の30年」の始まりである。日本で初めて消費税が導入されたのもこの年である。税率は3%。私たちの世代の人たちは分かると思うが、昭和の歌姫と称された美空ひばりさんが亡くなったのもこの年。私の出身である松下電器産業(現パナソニック)の創業者・松下幸之助氏も、この年に亡くなった。そして、連合もこの年に結成され、今年30周年を迎える。

渋沢健氏説「30年のリズム感」では、来年2020年を過ぎれば「繁栄の30年」ということになるが、世界も国内も簡単には解決できないような政治・経済・社会すべてに渡って、大きな難題が横たわっている。しかし、私たちは数多くのリスクをコントロールし、真の豊かさや経済社会の公正な発展の実現のために、試行錯誤を繰り返しながらも具体策を見出していかなければならない。

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