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前理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「平成から令和へ」

File.402019年4月24日発行

645年の「大化」から248番目となる元号が、4月1日に「令和」と決まった。

30年前(1989年1月)の昭和天皇のご逝去に伴う平成改元は、極めて厳粛であったのを記憶している。しかし、今回、当日には東京・渋谷のスクランブル交差点はすし詰め状態となり、多くの人たちが大型モニターを見つめるなか、新元号が発表されるとどよめきが起こったと報道された。

元号がこれだけ社会全体で、話題になったことはなかっただろう。それもそのはず、今回は極めて特異な状況の中で、元号の改正が行われたからだ。天皇退位に伴う改元は憲政史上初。新元号が皇位継承に先立って事前発表されるのも初めて、前の元号が使われているうちに、次の元号をあらかじめ公表した例はこれまでにない。典拠は日本に現存する最古の歌集「万葉集」、日本で記された国書に由来する元号は初めて。これまで、出典が確認されている限り、中国の漢籍を典拠としてきたことを初めて知った。

その種のことには、常に反対と賛成が入り混じる。「堅すぎる。響きも良くなく冷たくてきつい印象」「美しく綺麗な印象。穏やかな社会を想像させる」など。はたまた、世界で日本にだけ元号が残っている状況から、無くすべきか存続すべきかなど、元号の存在自体を問う議論まで。一方では、皇位継承の永続性という基本的な問題を中長期的な視点で議論し、早急に方向付けしなければならない。

新元号「令和」の手話での表現方法も決まったという。指先を上にして「つぼみ」のようにすぼめた手を胸元から前に動かしながらゆっくりと開ける。初春に梅の花のつぼみが開き、花びらが輪をつくって香りを放ち未来へ進むような動きにしたとのことである。穏やかで、そんな社会になって欲しいものだ。

元号は、その使用の強制や、国民の行動を制限することは、もちろん許されない。また、元号が変わることによって社会のあり方が変化するものでもないし、その時代が規定されるものでもない。私は、書類などで日付を記入する欄に平成があると、傍線で消して西暦を書くぐらい西暦派である。しかも、ほんの暦の一断面に過ぎず、時間は連続して流れているものである。しかし、ひとつの区切りとして振り返りながら、次のステージを展望する良い機会とも受けとめられるだろう。

「平成」がもう数日で終わり、「令和」へと時代は移ろうとしている。

時代は移ろうとも、また、こんな急激な環境変化の時代だからこそ、変えるべきものは大胆に変え、変えてはいけないもの、すなわち守るべきものはきちんと守ることを、忘れずにいたいものだ。加えて、私たちは、変えるべきものと変えてはいけないものを峻別する知恵を、常に磨く努力を怠ってはならない。言うまでもなく、時代をどう築いていくのかは、私たち一人ひとりの役割と責任であるからだ。

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