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前理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「日仏共催ワークショップに参加して」

File.392019年3月27日発行

3月中旬にJILPT・EHESS/FFJ共催ワークショップに参加した。テーマは「働き方改革・生産性向上・Well-being at work~日仏比較・労使の視点から~」。フランスと日本の研究者からの発表報告に続くパネルディスカッションのパネラーとしての参加であった。

JILPTは独立行政法人 労働政策研究・研修機構、EHESSはフランス・パリに拠点を置くフランス国立社会科学高等研究院で、社会科学の分野において世界的にも評価の高い研究者を多数輩出している。FFJは日仏財団、この財団は日本とフランスの知的交流を促進する目的で、2009年に設立されたそうだ。

パネルディスカッションは、パネラー6名がそれぞれの課題意識を提起した。おそらくJILPTの月刊誌「ビジネス・レーバー・トレンド」で、ワークショップ全体の報告がされると思う。関心のある方は、その報告をご参照いただくとして、ここでは関連する人物について触れたい。

EHESSと聞いて、誰かの名前を思い浮かべないだろうか?本国フランスで2013年に出版され、2014年英語版が発刊されると一大ブームを巻き起こし、2014年の日本語版も異例な状態となった「21世紀の資本」。この本の著者であるトマ・ピケティ氏は、EHESSの研究代表者である。4年前(2015年)1月の寒い日、有楽町朝日ホールだったと記憶している。朝日新聞と在日フランス大使館の主催で行われたトマ・ピケティ氏を招いてのシンポジウムで、質問者の役を仰せつかった。リーマンショックから数年、格差や分配の課題がクローズアップされた時期だけに、700人の定員に対して7000人の応募があったという。彼の「格差の拡大、不平等の拡大が、資本主義の基盤である経済の効率性も民主主義も破壊してしまう。富の過度な集中を防ぐべき」という主張は、その後の世界情勢をみれば明らかだ。

二人目は、EHESS教授でありFFJ理事長のセバスチャン・ルシュバリエ氏である。彼がこの共催ワークショップの仕掛け人であり、パネルディスカッションにも参加し「日仏比較の視点からフランスに学ぶ日本の働き方改革」を提起した。日本に留学の経験もあり奥様は日本人、日本語も堪能でワークショップから数日後、流暢な日本語でメールが届いた。実は彼が2015年年末に出版した「日本資本主義の大転換」が気になっていた。「ミクロレベルとマクロレベル」・「歴史からの考察」・「政治との関連」という三つの視点から、フランスの若手経済学者による、日本経済や日本資本主義の仕組みの分析の書として、書評などに取り上げられていたからだ。とても嬉しいことに、このワークショップで初めてお会いできたうえに、ご本人からこの本をプレゼントされた。早速読んで、これからの社会がどうあるべきかを考える糧にしたい。

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