「私は脇役」
File.562020年8月24日発行
8月に入っても新型コロナウイルスの感染拡大は止まらないどころか、一日の感染確認者が最多となる地域もでている。加えて、この猛暑だ。
そのような状況であったが、いつ結婚するのか心配していた甥っ子の結婚式に招かれた。
結婚式の日取りを決めたのが2月。当時は、まさかこんな状態になるとは思ってもみなかった頃である。2月と言えば横浜港に入港したクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス号」の全乗員乗客の健康診断が行われ、新型コロナウイルスの陽性者を確認、その対応が始まった時期である。
咳エチケット、手洗い、うがいの励行は呼びかけられていたが、まだ、密閉・密集・密接という、いわゆる「3密」も語られておらず、煙がまく焼き肉屋で、久しぶりに甥も含めて夕食をとっていた時、結婚の報告を受けた。
それから2か月後には緊急事態宣言が発出されるなど、事態は大きく変貌した。結婚する二人もどうするか迷いに迷ったと思うが、両家関係者の少人数での開催を決めた。これからの社会を担う二人の新しい門出だ。少人数での会でもあり喜んで参加し、一言お祝いのメッセージも述べた。
私はこのような機会に、誰が書いたのかも忘れてしまったが、もうずいぶん前に読んだ新聞のコラムをよく思い出す。確か、表題は「私は脇役」だったと思う。
「私は脇役?」
芝居には、脇役というものが必ず存在します。
脇役というのは、主役のそばにいて主役を引き立たせる役です。
同時に、主役と共に芝居全部を作っていくという重要な役割ももっています。
私たちは、いつも自分は主役のつもりでいます。
確かに、どんな人でも、その人の人生という舞台では主役です。
しかし、自分の人生では主役の私たちも、他人の人生においては、紛れも無く脇役です。
だが、人間悲しいもので、この当たり前のことを忘れがちになります。
例えば、私たちは自分の妻、自分の夫の人生の中で脇役である自分を忘れ、まるで主役面をして振舞っていないか。
多くの同僚、多くの友人、もちろん奥さん、旦那さんにとって「いい脇役」だったのか。
そんな内容だったと思う。身につまされる思いだ。
これからの二人の人生という大きな舞台の中で、それぞれが、それぞれの立場で主役と脇役。主役と脇役とを上手に使い分けながら、すばらしい二人の芝居を一歩一歩完成させて欲しいものだ。