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学校の働き方改革を求める学生の声に応える

藤川 伸治2019年6月11日発行

 教員をめざす大学生の間で、教職員の長時間労働をめぐって関心が高まっている。その中心となっているのは、「Teacher Aide」という学生のグループだ。東京・広島・大阪・茨城・神奈川・愛知・宮城・沖縄など16支部がある。それぞれの大学で教員には残業代を支払わないとしている給特法(きゅとくほう)について学んだり、学校の働き方改革をどうすすめたらいいか議論をしている。

 6月9日には、東京学芸大学に全国から約100人の学生が集まってシンポジウムが開催された。自主的に100人の学生が集まった、というそのエネルギーの高さに驚いた。それだけ、教員志望の学生には、現在の学校の多忙化は、深刻に受け止められていると言う証拠だろう。シンポジウムでは、講師が「先生が死んでしまうのが最悪の教育です」と話されたとツイートがされている。学生の不安解消に向けて教育関係者は真剣に、「学校の働き方改革」に取り組む責任があるだろう。

 ところで、この日のシンポジウムが開催される前に、福井テレビが開局50周年記念として、5月30日に放映した「聖職のゆくえ~働き方改革元年~」という番組が紹介されたらしい。この番組は、働き方改革が叫ばれる中、旧態依然と指摘されているのが教員の世界。残業手当もなく、残業の概念すら希薄な状況に、教員から悲鳴が上がっている実態を現場取材などを通じて明らかにし、歴史を遡って要因を探るとともに、教員志望者数が減少している現状に警鐘を鳴らした番組だ。この番組は、先のシンポジウムの前に紹介された。参加者は、次のようにツイートしている。

 職員会議にカメラが入り、教員や校長の本音が吐露される。倒れるんじゃないかと思うほどストレスにまみれながら教壇に立ち続ける教員。名だたる政治家の登場や、組合側の本音。想像の数倍もすごかった。#聖職のゆくえ

 この番組を観て、今の教員がそれだけ苦しんでいるのかを知りました。労働時間が過労死ラインを超えている。その上、手当はでない。でもそれは法律(給特法)で認められている。教師だって労働者。なぜ、他と違うのか。全国放送されて、みんなで問題を共有できますように! #聖職のゆくえ

 このツイートでは、「教師だって労働者」とつぶやかれているが、そもそも文科省は、教師は労働者としては考えていないのではないか、というのが私の考えだ。そのように考えるに至ったのには、理由がある。数ヶ月前、知人が「教員身分法要綱案」なる古文書を送ってきた。終戦まもなくの1946年9月末頃、文部省内で作成をされたらしい。この要綱案は、そのまま法律にはならなかったが、現在の教育関連法規のもととなる考え方がまとめられている。教員の労働関連法に関わっては、次のような記載がある。

 〇教員には労働基準法は適用されないものとすること。
 〇教員には労働組合を組織し又はこれに加入することはできないものとすること。
 〇教員には労働関係調整法の規定は適用されないものとすること。

 1945年12月には、労働者の団結権・団体交渉権・争議権などを認めた労働組合法などが制定され、教員にも適用されていた。それにも関わらず、「教員身分法要綱案」では、文部省は、教員からこれらの労働者の諸権利をはく奪しようとしていたという驚くべき内容が含まれていた。つまり、教員は労働者であっては困るというのが、文部省の考えであったのだろう。

 学生たちが、声を上げ始めた今日、労働組合は、公立学校の教員は労働者であって、労働基本権の完全回復と交渉による賃金決定システムの実現、給特法の改廃に向けて、今一度、とりくみの強化を図る時がやってきている。

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