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三歩進んで四歩下がる

岡本 直樹2020年6月12日発行

 今回のパンデミックにより、日本を初め世界の多くの国々でロックダウンや活動自粛が余儀なくされ、突如として、経済活動が大幅に停滞・遮断された。5月に入り、各国とも経済活動を徐々に再開させているものの、依然として、新型コロナ・ウイルスの感染拡大は続いている。6月に入り、世界銀行やOECDが相次いで新たな経済見通しを公表しているが、第1回目の流行による最悪時期は、今年の4-6月期という見方がコンセンサスとなっている。

 わが国では緊急事態宣言の前後の4月頃は、今回の経済危機はリーマンショック級だが、設備はそのままだし、需要がなくなったわけでもないので、宣言が解除されれば、その後は、V字型回復をするだろうというのが大方の見方であったが、この2か月の間に、ショックの大きさは戦後最大、過去100年間で最大の落ち込み、4-6月期から経済の回復経路は、W字型、U字型、L字型、Swoosh型(ナイキのロゴ)だという様々な議論がされている。今回の落ち込みがどの程度の深さになるのかは、まさに6月の回復度合いにかかっており、世界銀行の見通しのタイトル通り(After the lockdown, a tightrope walk toward recovery)である。

 経済の落ち込みの程度は、世界各国の4-6月期のGDP8-9月頃に相次いで公表されため、その結果待ちではあるが、今のところ、先進各国とも前期比年率でマイナス二桁~20%超の減少となるというのがコンセンサスである。この見方を前提にすると、アメリカはオバマ政権1期目の頃のレベル、日本でも安倍政権発足前のレベルにまで一気に落ち込む可能性がある。まさに「三歩進んで四歩下がる」である。

 日本国内のデータだと1950年代以降しか、長期系列の統計が存在しないため、戦後最悪という表現にしかならないが、国際比較のためにオランダの大学が世界各国の研究者の協力を得て整備している統計データベースでみると、ドルベース比較になるが、日本の場合、近代日本が始まった明治以降の150年間でみて、第2位の落ち込みとなる可能性がある。昭和20年(1945年)の太平洋戦争終戦時を別格としても、それまで第2位であった昭和5年(1930年)の昭和恐慌を上回るかどうかの待ったなしの状況である。ちなみに、その次は、大正9年(1920年)の戦後恐慌(第1次世界大戦)、明治29年(1896年)の戦後第1次恐慌(日清戦争)と続く。2009年の世界金融危機(リーマンショック)の時は、その次である。

 ワクチンの開発・普及が進んでいない現状を考えると、経済活動が再開しても、感染状況を踏まえながら、ブレーキをかけながらアクセルを踏まざるを得ず、さらには、スペイン風邪等の歴史を踏まえれば、秋頃に第2回目の流行、2021年には第3回目の流行もありうるとの見方も示されている。いずれにしろ、今回の景気停滞・恐慌は、過去のものと異なり、戦争や需要不足が原因で生じたものではなく、生物でもないウイルスの突然変異を起因して発生した初めての世界的な恐慌なので、どのような回復経路をとげて、収束時期がいつ頃になるのか誰にも見通せない状況が続いている。感染の中心地が中国から欧米、そして、アメリカ、中南米へと移動し、今やアフリカ大陸に一気に拡大しようとしている。ワクチンの開発競争が世界各国で行われているが、治験が終わって実用化のメドが立っても、世界中にワクチンが行き渡るまでには、数年単位の時間が要するであろう。また、ウイルス自体もどんどん変異をとげており、数多くの変種が生まれている。そうなると、それぞれのウイルスに効くワクチンを逐次・複数開発していく必要がある。

 その一方で、この2か月間は、先進国を中心に世界各地で経済社会活動を一度ストップさせ、先の見えない不安な中で、誰もが立ち止まって何某かについて考えざるを得なかったという共通体験をしたと思う。

 三歩進んで強制終了させられ、4歩下がった今、再び、徐々にではあるが経済社会活動を開始している今、コロナ前の状態を「取り戻すべき姿」として目指すのか、それとも、この2か月に得た教訓や学びを糧にして、新たな社会を目指すのかが、今、問われているように思う。

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