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配属のセレンディピティ

鶴岡 純2025年3月25日発行

各地から桜の便りが届く季節になりました。
4月は、新入社員や異動者を迎えて職場に新しい風が吹き込みますので、この時期を楽しみにしている方が多いのではないでしょうか。
新たな部署に配属される方は、不安や緊張が勝っているのだと思います。
桜を見ると、働くうえで私が大事にしている考えが自然と浮かびます。

「全国転勤のある組織で働きたい」

これは、私が就職活動をしていた10余年前に軸の1つとしていた考えで、今でも変わっていません。
就職活動を経て、無事に全国転勤のある組織にご縁をいただき、初任地は北海道でした。
さまざまな地域を経験したいと思っていましたので、地元から離れて働ける喜びのあまり、配属発表後すぐに家族に電話したことを思い出します。
ただ、喜びと同時に大きな不安もありました。同期の多くが営業(事業推進)など、研修で多く登場した部署に配属される中、私は東日本エリアを担当するコンタクトセンター(コールセンター)の配属となりました。


「セレンディピティ」という言葉があります。
偶然の出来事から、思いがけず価値ある発見につながる力のことを指しており、18世紀のイギリスの作家ウォルポールが、童話『セレンディップの3人の王子たち』をもとに作った造語だそうです。


私にとってこの想定外の配属は、まさにセレンディピティでした。
北海道で働けることはうれしかったものの、なじみのない部署でしたので、「大丈夫だろうか?」と大きな不安を抱えていました。
それでも、周囲の多大なサポートを受けながら、日々の業務に向き合いました。
やがて業務に慣れてきた頃、センター内のシステム担当課に異動となり、システム更改プロジェクトなどを経験しました。
それまでIT分野にあまり縁がなかった私にとって、専門用語の理解など大変な毎日でしたが、思いのほか自分に合っていることがわかり、東京への異動後と合わせて6年程度、社内のシステム関連業務に携わることになります。
そして現在、私は経営企画部を経て、連合総研に出向し、研究員として働いています。
どれもが就職1年目にはまったく想像していなかった業務でしたが、こうして振り返ると、「想定外」の連続が今の自分を形作っているのだと実感します。

本稿を通じて、特に若手の皆さんにお伝えしたいのは、「想定外の配属(地域や業務)で得られるものは、想像以上に大きい可能性がある」ことです。
就職活動時や入社時に、「自分にはこの仕事しかない」と自信を持って言える人は少ないのではないでしょうか。
多くの人が、配属されてから「想像していなかった適正」や「新たな可能性」に気づくのだと考えています。
実際、私がこれまで出会った後輩たちの中にも、「最初は想定と違って戸惑ったけど、今ではこの地域と業務が好きです」と語ってくれる人が少なくありません。

もちろん、すべての想定外が良い方向に働くとは限らず、中には苦しい経験を伴うケースもあるでしょう。
しかし、私自身の経験などを踏まえると、想定外の配属先での業務経験が、将来のキャリア形成の礎になることもあると信じています。

4月から皆さんの目の前に広がる新しい地域や業務が、すぐには納得できるものでなくても、いつかそれが「配属のセレンディピティだった」と感じられる日が来ることを願っています。

(関連リンク)
特集「若手の活躍に向けて」 連合総研レポートDIO 2025年2月号 No.405
https://www.rengo-soken.or.jp/dio/2025/02/250900.html

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