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前理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「ノーモア・ナガサキ!」「ノーモア・ヒロシマ!」

File.62016年6月16日発行

1945年8月6日午前8時15分広島に、続く8月9日午前11時2分には長崎に原子爆弾が投下され約21万余人の尊い命が奪われた。

その被爆地・広島に、原爆を投下した米国の現職大統領としては初めて、オバマ米大統領が5月27日夕刻訪れた。翌日の新聞には『核なき世界へ「勇気を」』『オバマ氏、広島で献花』『核兵器なき世界へ』『米大統領 広島で追悼』『核なき世界へ「歴史直視する責任」』と、オバマ大統領の広島訪問を一面トップに掲げた。オバマ大統領は原爆死没者慰霊碑に献花した後、「71年前、明るく、雲一つない晴れ渡った朝、死が空から降り、世界が大きく変わった」で始まり「広島と長崎は核戦争の夜明けとしてではなく、私たちの道徳的な目覚めの始まりとして記憶されるだろう」と約17分の演説を締めくくり、核兵器なき世界を追及する決意を改めて表明した。

オバマ大統領広島訪問については、国内外で様々な意見が提起された。また、訪問前には、「演説はしない」「数分間の所感」などの情報が流れたこともあり、当日の約17分に及ぶ演説は多くの人の感動を呼んだ。しかし、残念なのは、2009年4月のプラハ演説から7年余で核兵器の脅威は逆に増えている中で、具体的な核軍縮に対する提言が全くなかったことだ。大切なのは核兵器廃絶に向けたこれからの行動である。

今回のオバマ大統領の広島訪問は、確かに政府の外交努力の成果であろう。しかし、同時に、坪井直代表委員を始めとする被団協(日本原水爆被害者団体協議会)などの長く地道な取り組みと思いが通じた結果でもある。しかも、あえて謝罪を求めず、謝罪の言葉より現地に来て何が起きたのかを見つめて欲しいとの強い願いがオバマ大統領の行動を後押ししたと思う。長年被爆体験の証言活動をしてきた方の「恨みとか怒りとかいう気持ちは横に置いて歓迎したい。これが核兵器廃絶の第一歩になると信じたい」との言葉が心に響く。

唯一の原爆使用国と被爆国の両首脳が、広島の地で並んで平和を誓ったことは大きな意義がある。加えて、私たちは大きな犠牲の上に、平和や民主主義を手にいれたことを、決して忘れてはならない。オバマ演説は、核兵器廃絶に向けた歩みを進める歴史的な機会になったと同時に、私たちに改めて平和や民主主義を熟考するように重要な指摘をしている。スピーチするすぐ近くに立っていた安部総理大臣は、この演説をどんな気持ちで聞いたのであろうか。

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