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前理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「未来に継承する真のおもてなし」

File.92016年9月 6日発行

南米初となるリオデジャネイロ・オリンピックは、世界中に勇気と感動を与え閉幕し、明日・7日からパラリンピックが開幕する。この種のことにはあまり執着しない私も、政情不安定なブラジルでの開催ということやテレビでの家人の熱心な選手への応援などに感化され、寝不足気味で日本選手の戦いに一喜一憂した。

次のバトンは2020年の東京に渡される。1964年東京オリンピックは日本ではもちろんのこと、アジア初の開催であった。この大会で日本は高度成長の足がかりをつかみ、世界に向けて太平洋戦争後の復興を示した。また、東海道新幹線や高速道路の開通など都市機能が飛躍的に発展するインフラ整備の機会となったのである。  来る2020年、さまざまな課題を解決していかなければならないが、経済効果やメダルやスポーツだけに限定するのでなく、より広い観点でこれからの社会を展望するオリンピック・パラリンピックにしたいものだ。開会をきっかけに、新たな理念をレガシーとして国内外に強く発信していく必要がある。

来る2020年、さまざまな課題を解決していかなければならないが、経済効果やメダルやスポーツだけに限定するのでなく、より広い観点でこれからの社会を展望するオリンピック・パラリンピックにしたいものだ。開会をきっかけに、新たな理念をレガシーとして国内外に強く発信していく必要がある。

その新たな理念を模索するために、1964年と現在の日本の状況の違いを考えてみたい。さまざまな視点があると思うが、なんといっても経済・社会の成熟化と超少子高齢社会の進行ではないだろうか。前回1964年は65歳以上は6%強であった。しかし2020年には65歳以上が29%強になる。そして、2060年には日本の人口は8000万人台、65歳以上は40%となる。このような超高齢社会でオリンピック・パラリンピックが開催されるのは初めてである。

成熟化した超少子高齢社会の中での住みやすく暮らしやすい持続可能な都市・社会へと再構築していくモデルを提案することが、2020東京オリンピック・パラリンピックの極めて重要な役割のひとつであると考える。その課題克服のためには、パラリンピックが非常に重要なキーワードとなる。パラリンピック成功のための環境整備こそが、超少子高齢社会の備えでもあるからだ。そして、これらはひとり日本のみならず、世界の先進国の共通の課題であり、また新興国がこれから直面するであろう課題でもある。この大会を機会に、世界から共感されるこれからの超少子高齢社会のグランドデザインを描いてもらうことを期待したい。そして、私たちも新たな価値観を創り出すことに参画していかなければならない。それが「未来に継承」していく、日本の真の「おもてなし」ではないだろうか。

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