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前理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

"「時代は変わる」のか?"

File.102016年10月20日発行

「時代は変わる(The Times They Are a-Changin')」、1964年にリリースされた彼の3作目のアルバムのタイトルナンバーである。私がこの曲を聴いたのは1960年代後半、アメリカのフォークシンガー、ジョーン・バエズ氏の歌声を通じてであった。

によって、世界で大ヒットすることになる。彼の歌声・歌い方とはかなり趣を異にする私は彼の名前を1971年(昭和46年)の夏に、日本人のフォークシンガーが歌っている曲の創作者ということで知った。その曲名は「戦争の親玉(Masters of War)」。後日談になるが、その曲を彼は1991年グラミー賞「特別功労賞」受賞時にステージで歌っている。そして、彼の代表する曲「風に吹かれて(Blowin' in the Wind)」を最初に聞いたのは、ピーター・ポール&マリー(PP&M)の美しいハーモニーである。この曲はPP&Mことを、ずいぶん時間がたって経験した。これまた後日談であるが、このPP&Mの「風に吹かれて」は1983年大流行した日本のテレビドラマ「金曜日の妻たちへ」第1作の主題歌である。しかも、ピーター・ポール&マリーは彼と同じ1962年(昭和37年)のデビューであり、キューバ危機の年だ。「戦争の親玉」はこのキューバ危機時代に創作されたのだろう。

デビュー当時はアメリカにおいて公民権運動が高まりをみせ、またその後のベトナム戦争への反対など、彼は時代の代弁者とみなされ、メッセージソングやプロテストソングの旗手と称されるようになる。しかし、そのような風潮を彼は迷惑に感じ、「自分が勝手に解釈され、運動の象徴として扱われるのには辟易している」と述べたという逸話もある。

そういえば、ラスベガスで現地時間10月13日夜に開いた受賞決定後初となる彼のコンサートでは、そのことに一切触れないばかりか曲間のトークも全くなく、ステージは暗く、彼の顔もかろうじて見える程度と報道された。加えて、スウェーデン・アカデミーは、授与発表から4日たったにもかかわらず本人と連絡が取れていない。彼が文学賞を受けるつもりがあるのか、12月10日にストックホルムで行われる授賞式に出席するのかも不明という。アカデミーのダニウス事務局長は「受諾してくれると思う。そうでなければ悲しいが、栄誉は彼のものだ。心配はしていない」と語ったと報じた。

ノーベル文学賞を彼「ボブ・ディラン氏」は受けるのか、またこのような現象によって「時代は変わる」のか?

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