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前理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「2つのショック」

File.112016年11月25日発行

去る11月22日の連合総研・第15回定時評議員会・第30回理事会の冒頭挨拶で、2つのショックについて簡単に触れた。トランプ・ショックについては、さまざまな場面でさまざまな人が語っているので、ここでは2つ目のショックについて記したい。

平尾誠二氏が53歳の若さで、10月20日に死去した。心よりお悔やみ申し上げる。私は大阪に長くいたこともあり、単組の委員長時代に単組の機関誌の企画として、兵庫県の神戸製鋼に出向き平尾氏と対談をした。それ以降、何度かお会いし、今年まで途切れることなく年賀状をいただいていた。1990年代の終わり、平尾氏はラグビー日本代表の監督を務めていた。よくご存知のように、彼はラグビーのみならず組織論や個人と組織の関係など幅広い発信や著書も多くある。

対談時の彼の発言から3つのことを思い出す。

まず、ジャパン・プロジェクトの新手法である。彼は日本代表の監督となりその運営を、ジャパン・プロジェクトと名づけた。そして、ラグビーチームでは初めて、組織としてテクニカル部門をつくり、情報戦略を展開していった。彼に言わせれば、「われわれの数少ない強みの中に情報を持ち込んで、ゲームを組み立てていこうということをやったのが、今までと非常に違う考え方だ」と。

2つ目は、イメージリーダーの重要性を説いたことだ。チームリーダーともゲームリーダーとも異なる、無責任で良いから情報やアイデアを与える役割を、彼はイメージリーダーと呼んだ。その情報がゲームで実際に使えるものかどうかは、ゲームリーダーが判断すればよい。リスクを負わないアイデアだからこそ、意外におもしろいものがでてくる場合があるとのこと。「会社の中にもいませんか?アイデアはすごくいいモノを持っているんだけど、ぐうたらで何もしない。こんな奴にはこう着した状態に風穴を開けるパワーがあるかもしれない」と爆笑した顔が思い浮かぶ。

3つ目は、モチベーションに向けての評価のポイントについて。タックルを例にとり、10回のうち7回しか成功しないケースと、4回中4回とも成功するケースを提示した。数字上の成功率では100%の後者がいいが、チームとしては、どのタイプが集まっている方が力になるか?彼は成功率ではなく、数多く挑戦する方を評価し、この基準変更が極めて重要なキーポイントになったことを熱く語った。

高校日本一、大学選手権3連覇、そして日本選手権7連覇と各世代で頂点に立った。それにしても早すぎる逝去である。改めて、心よりご冥福をお祈りする。合掌

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