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前理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「ON・I・ON」

File.182017年6月28日発行

先日(6月21日)の所内会議で、懐かしいワードに出会った。それは、2017年度の研究テーマの項で、麻生さんが提案した「労働組合と民主主義」の中の"国際経済労働研究所「ON・I・ON2調査」"である。

国際経済労働研究所は、大阪市中央区北浜東の大阪府立労働センター内にある。その前身は第二次世界大戦終戦後間もない1948年に設立された関西労働調査会議である。その会議が、1961年社団法人・労働調査研究所となり、1993年社団法人・国際経済労働研究所と組織改変し、2013年に公益社団法人に移行した。

余談だが、連合大阪も大阪府立労働センター内に事務所があった。しかし、大阪府知事に橋本氏が就任すると、「何故、府の建物に連合が入っているのか?」などの呟きが連合大阪に入り、現在の場所に移転したのである。

私は1986年から2002年まで大阪に在住し、後半の6年間は松下電器労組(現パナソニック労連)の中央執行委員長を務めた。私の前任の中央執行委員長が、2014年2月に亡くなるまで、国際経済労働研究所の理事長だったため、私は東京に来てからも、その研究所の月刊・機関誌『Int'1ecowk』への投稿依頼を何度も受けた。その研究所がON・I・ON(オニオン)研究会を立ち上げたのが、1990年である。私たちの組織・松下電器労組も、もちろん議論に参画した。

「ON・I・ON」とは、従来の"仕事をON・仕事以外をOFF"でなく、個人(私・I)を中心に、"仕事もON・仕事以外もON"と考える「ON・I・ON」型の人間が増えている中で、労働組合も労働の場だけではなく組合員のライフスタイル全体を視野におく必要があるとの認識を表現したものである。その研究会で議論を重ねて実施した最初の調査を「ON・I・ON1」調査と呼んだ。そして、新たに社会心理学の考え方も導入し、「組合関与」と「働きがい」を2つの柱として実施したのが、「ON・I・ON2」調査である。

組合員の意識が多様化し、様々な組織や集団・団体に多重に帰属している組合員に、労働組合が何のための組織なのかという明確なアイデンティティを改めて提示する必要がある。それは何なのか?など調査結果を基に熱心に議論していたことを思い出す。UI(ユニオン・アイデンティティ)という言葉がしきりに使われたのもこの頃だった。

現在、「ON・I・ON3」も構想されている。そこでは、働く者の「生きがい」をメイン・テーマとし、生活領域全般を視野に、組合員の「生活の質の向上」に向けた議論が展開されようとしていると聞く。経済的・物質的側面のみならず、人が生きていくとは?人が働くとは?そして、「生きがい」とは?という根源的な問いに、私たちは正面から向き合わなければならない時代を迎えている。

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