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前理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「友人からの学び」

File.202017年8月28日発行

8月17日、夏の甲子園大会2回戦、広陵高校(広島)に敗れ、熊本県・秀岳館高等学校野球部の鍛治舍氏は、事前の発表通り監督を退任した。鍛治舍氏は岐阜商業高校から早稲田大学、そしてパナソニックへと野球選手・監督・野球解説者としての活躍はもちろん、社業においても退職前は広報宣伝担当専務を努めた。私と同学年。20年以上の付き合いであり、かけがえのない友人の一人である。パナソニックを退職した2014年同年の4月より秀岳館野球部監督に就任、10数年ぶりの甲子園出場を果たし、この3年間で3季連続甲子園ベスト4の実績を残した。

2016年12月の出張時に、熊本にて久しぶりの再会。時間がたつのも忘れ、話し込んだ。彼の話の中の言葉と学生への接し方や記録の中から、たくさんの学びがあったが、ここでは紙面の関係もあり、4つ紹介しておきたい。

その1つは「慣れは往々にして隙を生む」である。彼と秀岳館の出会いは2001年八代第一高校が校名を秀岳館に変更した初年度に、夏の甲子園に初出場した時の解説を担当した時。1回戦は不戦勝。2回戦の相手は、初戦を15対4と大勝し、しかもその年の春の選抜で優勝した強豪校・常総学院。実況のアナウンサーは、いきなり「鍛治舍さん、この試合は、やはり常総学院のペースで進みますか?」と切り込んできた。すかさず「高校生が全力を出し切れば、試合は互角。『慣れは往々にして隙を生む』という言葉があります。常総学院が組み易しとの心の隙があれば、秀岳館の勝機も見えてくる」と。とは言うものの、どうみても常総学院、絶対有利。ところが、あにはからんや、秀岳館は優勝候補者筆頭を破って堂々の勝利を収めた。実に爽やかなチームで、その時から付き合いが始まったそうだ。

2つ目は、野球の練習は言うに及ばず、筋トレ・エネルギー補給とともに、「朝読」をスタート。新聞のコラムなどを、朝全員で音読し、筋の整理と感想を必ず書かせる訓練。それは、「流れるプレーの中で、自分ならどうするかを絶えず自問自答すること」を習慣付けるためだそうだ。3つ目は、「気づきは能力でなく心の姿勢」。常に何かを学ぼうとする前向きな姿勢こそが、気づきを生む。決してそれは能力ではなく、誰しもが意識すれば出来るということ。最後に、彼は話の中で「練習は日常生活」という言葉をよく使った。そういえば、2013年、箱根駅伝で前年19位から30年ぶりの快挙で、総合優勝を果たした日本体育大学を率いた別府監督は、インタビューで指導方法を問われたときに、「挨拶やスリッパを揃える、また風邪が流行したら手洗いやうがいをするなどの生活の基本を繰り返し繰り返し指導した」と答えていた。

これらのことは、スポーツのみならず、私たちの日常にも通じるものだろう。

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