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前理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

観客から「プレイヤー」へ

File.212017年9月28日発行

2006年の第一次安倍政権以降、毎年のように首相が交代し、国民の大きな期待を受けた民主党政権も約3年3ヶ月で瓦解した。安倍首相は、安定した政治を望む国民意識を背景に、「安倍1強」体制を維持してきた。しかし、政権発足から4年半以上が経過し、政府・与党に「緩み」や「驕り」が目立ち、磐石な体制を築いてきた安倍政権の勢いに、陰りも見られた。その影響が数字となって現れたのが、去る7月の東京都議会議員選挙であり、自民、民進両党が惨敗し、東京都の小池百合子知事が率いる「都民ファーストの会」が躍進した。

しかし、内閣改造以降、安倍政権の支持率は上昇傾向となっている。これは野党の不甲斐なさの要因が大きい。9月1日に前原代表を選出した民進党も、スタートから人事でつまずき、支持率は上がらず、離党者が相次ぎ、厳しい状況にある。そもそもこの党は、2009年の政権交代時の期待が大きかっただけに、国民には、短期間での政権の瓦解に対する大きな落胆と失望と不信が、今でも鮮明に残っている。また、いまだ全貌が明確でない新党も、結成直後だと選挙の備えは万全ではないとみるのが当然であろう。

そんな情勢の中で、安倍首相は、9月28日臨時国会冒頭・衆議院解散、投票日22日の総選挙を選択した。突然のこと、そして内閣改造後約2ヶ月弱で所信表明も行わないという極めて異例なことから、「大儀は何か」や「解散は総理の専権事項」に関する様々な議論がかつてなく盛んになっている。どうみても、野党の状況から、政権・与党側の負けの少ない選挙戦術での総選挙であるというのは明らかだ。だが、ここにきて突如、小池東京都知事が代表となって新党「希望の党」を立ち上げた。民進党・前原代表は、総選挙での民進党公認候補は立てず、実質「希望の党」との合流による民進党解党プロセスに入り、この選挙戦の構図が劇的に変化した。

こんな状況の中で、何よりも私たち一人ひとりの意識と行動が問われている。最近はあまり聞かれなくなったが、日本は「観客民主主義」「お任せ民主主義」と揶揄された。国民はいつも当事者にはならず観客席に座り、プレイヤーが失敗すれば、批判や愚痴ばかり言って観客席から立ち去るだけ。政治は政治家や議会だけではなく、有権者も含んだシステムである。私たちが働き・暮らし・生きることと政治は、切っても切り離せない密接な関係であり、そのことに対する私たちの役割・責任を再認識しなければならない。緊張感ある政治体勢があって初めて政策は磨かれる。それが議会制民主主義の本質である。

日本における政治的民主主義のあり方を一段高いステップへ引き上げていくための新しい社会づくりは、私たち一人ひとりが積極的に担わなければならない。

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