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前理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「異様な総選挙」

File.222017年10月30日発行

今月も私の身の回りでは様々なことがおこり、書きたいことはたくさんあるが、総選挙は外せないテーマだろう。

野党側が先の国会終了後、憲法の規定に則り国会の早期開会を要求してきたが、開会はするもののいきなりの冒頭解散。戦後政治史の中でも稀有なことである。任期も1年強となり、野党陣営の準備不足や新党結成の出鼻を挫き、負けを少なくする選挙戦術であったことは間違いない。

野党第一党の民進党は、解散・総選挙寸前の事実上の解党、「希望の党」への合流という、いわば奇策に打って出たが、そうは問屋が卸さない。民進党候補者全員の合流が"話が違う"状況になるまでには、そんなに時間はかからなかった。細野さんの「三権の長の経験者の方はご遠慮願いたい」や小池代表の「排除」「・・さらさら・・」発言である。そして、民進党は希望の党への合流組、それへの反発により結成された立憲民主党、無所属に三分裂し選挙戦に突入した。余談だが、今年の流行語大賞には「忖度」や「排除」はきっとノミネートされるであろう。そもそも、当事者や関係者は、小池代表のこれまでの政治活動を振り返れば、希望の党が民進党候補者全員を受け入れることなどあり得ないとは思わなかったのだろうか。それほど、民進党という難破船は沈没寸前であったのだろう。それにしても、しっくりとしない話である。

リセットを発信して希望の党が設立された時は、率直に官邸は大慌ての様相を呈していたとのこと。しかし、その後の目まぐるしい野党の展開・混乱で、結果として安倍総理の解散戦術は功を奏し、衆議院3連勝、参議院2連勝、国政選挙5連勝の偉業(?)を達成した。まさに野党の自滅であるが、選挙結果を良く見てみると、結果的に3つに分散してしまった元民進党の議席は増えている。また比例票は野党が与党を上回るなど、圧勝した安倍総理が「謙虚に・・真摯に・・」を連発するのは、その危機感があるからだと思う。加えて、議席を減らした連立を組む公明党への配慮も・・・。

人間と組織のドラマをみるような総選挙で、政策についての深堀はほとんどなかった。政党・政治家は、風頼みではなく、国民・有権者とともに政策を練り上げ、政策の選択肢を示す努力を重ねて欲しいものだ。また、政党・政治家とは何であろうか、そして民主主義とはという根源的なことにも思いを馳せた期間となった。さらに、現在の選挙制度は、1対1の構図にしなければ、野党バラバラでは勝てないことを身をもって感じたのではないだろうか。政権交代のない小選挙区制度は最悪の選挙制度である。この制度の是非は、またいつか私見を提示させていただくが、難しく遠い道のりになるかもしれないが、緊張感ある政治体勢に向けた歩みはけっして止めてはならない。

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