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前理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「大変身??」

File.242017年12月27日発行

1994年だから、もう23年前になる。その年の2月、千葉県浦安市舞浜のホテルで、これからの日本の経営のあり方を巡り、トップ企業の経営者たちにより白熱した議論が展開された。世に言う「舞浜会議」である。と言っても、私はまだ大阪の企業別組合の中央執行委員であったし、当時この会議が労働界のなかでどのような受けとめ方をされていたのか、まったく知らない。東京に出てきて、連合会長になった頃に会議の内容を知った。

会議の論争の焦点は、「雇用重視」か「株主重視」か。前者を主張するのが第二次産業のI社長、後者への転換を求めるのは第三次産業のM社長である。プラザ合意以降続いた円高の中で、これからの経過からも明確なように、この論争は株主利益重視派に軍配が上がる。そして翌1995年、日経連は雇用を3グループに分ける「新時代の日本的経営」を発表する。

M氏はその後、10年以上政府の規制改革の旗を振り、2002年には小泉内閣のもとで数多くの規制緩和策を提案した。その中の一つには、製造業における労働者派遣事業の解禁もある。様々な規制緩和を主導し、私は連合時代には、M氏のことを"見境のない規制緩和の権化といっても過言ではない"と評してきた。

そのM氏が大転換か?12月中旬の朝日新聞の連載企画「平成経済」の第一部グローバル化と危機の最終回、M氏はじめ3人のインタビュー記事であった。まず、M氏のコーナーの見出しが「資本主義観が変化、分配により力を」である。見出しが間違っているのでは?と思ったのは、おそらく私だけではないだろう。

M氏はその記事で、『・・・経営者は株主に奉仕するというのが、資本主義の原則だ。私もそれが最も効率的に社会に富をもたらすと訴えてきた。業績を上げるのが最優先だと。今は、この考え方が変わった。米国は企業の稼ぐ力では抜きんでているが、貧富の格差が社会の亀裂を生んでいる。これを調和させるために社会が払うコストは高い。ここ5年ほどで、そういう資本主義でいいのかと疑問を抱くようになった。会社は人、モノ、カネをうまく使って経営する。だが、人はモノやカネとは違う。最大限の配慮が必要だ。経済活動は人に奉仕するために存在する。昔言っていたことと違うと言われるかもしれないが、時代に合わせて人は変わるべきだ。次の時代は、より分配に力を入れた社会を目指すべきだ』と述べている。

大変身?趣旨替え? もし今度Mさんに会うことがあれば、真意を聞いてみたいものだ。

今年も残り僅かとなりました。良いお年をお迎えください。

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