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前理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「最も大きな罪は?」

File.272018年3月31日発行

3月27日に佐川前理財局長の証人喚問が午前・午後、衆議院・参議院に分かれて実施された。つぶさには見聞きしていないが、ニュースなどで知る範囲では、予想通りであった。総理・総理夫人・官邸・大臣・財務省各部門の関与は明確に否定し、後は「刑事訴追を受ける可能性がある」と答弁を拒否した回数は40数回と報じられた。ほとんど有耶無耶である。国民の多くはスッキリしなかったのではないだろうか。真相が解明されなかったのは、野党にも責任がある。証人喚問は決定的な証拠を持たない限り、このような状況になることは、素人でもおおよそ見当がつく。加えて、野党の質問者は6人~7人に及び、事前調整をしてきたとは言え、突っ込みや迫力に欠けてしまう。今後の野党の動きに注目したい。

財務省が3月12日に、決裁文書の書き換え(改ざん)を正式に認めて以降、半月が経過する。自殺者が出るまでの案件となったこの事件は、行政の信頼を大きく損ない、議会制民主主義の土台を揺るがしたと言っても過言ではない。一部官僚に責任を押し付けて済む話ではない。

この問題には、2つの緊張感・牽制機能の欠如があると思う。一つは政と官の関係だ。内閣人事局の設立と、幹部人事への政治家の関与は、省庁の内向きな人事を断ち切り、大局的な視点から行動できる幹部を選ぶ仕組みであり、その狙いは決して間違いではない。法律は成立しなかったが、この構想は民主党政権の政治主導の象徴でもあった。しかし、行き過ぎれば、官僚は官邸ばかりを覗うようになる。政治家と官僚は適度な緊張関係・牽制機能が必要である。二つ目は、言うまでもなく安部一強の政治体勢だ。緊張感を欠いた政治は、必ず澱みが生まれる。野党の奮起に期待したいが、バラバラになった野党がどう総合力を発揮するのか、いくつもの大きな壁がはだかっている。

徹底調査のため第三者機関の設置などが良いのではないかと考えもしたが、国会の行政管理機能も問われており、やはり国会での深掘りした議論による全容解明と再発防止策の検討・実施が本来の姿であろう。最近の例でも、防衛省の南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣している自衛隊の日報問題、文部科学省の加計学園に関する文書問題、厚生労働省のデータ問題などが発生した。情報公開と公文書管理のあり方改革が急務だ。

本来であれば、景気回復が多くの人に実感できていない現状をどうするのか、超少子高齢・人口減少社会、2025年問題への対応、真の働き方改革、北朝鮮問題等々議論するテーマは数多い。そのための貴重な時間を無駄にしてしまった罪が最も大きいのかも知れない。

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