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前理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「優先席とチコちゃん」

File.382019年2月25日発行

今月(2月)でまたひとつ齢を重ねた。

国連では60歳以上、世界保健機構(WHO)では、65歳以上を高齢者としている。日本では一般的に64歳までが現役世代、65~74歳が前期高齢者、75歳以上が後期高齢者である。2017年の統計によると、65歳以上の高齢者は3515万人強となり、総人口に占める割合は過去最高の27.7%だそうだ。

自分自身では、若い時と同じつもりでいるのだが、体力の衰えや抵抗力がなくなったと感じることはたまにある。しかし、何よりも電車に乗っていたら席を譲られることが時々あることに、高齢者を意識せざるを得ない。優先席は、以前シルバーシートと呼んでいたのでは?何故、高齢者をシルバーと言うんだろう?などと漠然と思っていたら、その正解を教えてくれたのは、やっぱり「チコちゃん」だった。

「チコちゃんに叱られる」は、NHKで2018年4月からレギュラー番組となった。岡村隆史氏と2~3人のゲストが出演する。チコちゃんは出演者に、日常的に使われている言葉や常識だと思っている物事の語源や起源の疑問を投げかける。答えられないと、今や有名になったフレーズ「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と怒って正解を発表する。たまに出演者が正解してしまうと、チコちゃんは「つまんねぇやつだな!」とすねて、唐突に関係のない質問をして誤答させようとする。また、NHKアナウンサーの森田さんによる「すべての国民に問います」というNHKスペシャル風の落ち着いた語り口のナレーションも、バランスが取れていないようで強い印象を残すのだ。NHKらしからぬ番組として人気があり、再放送の視聴率が高いのも特徴だそうだ。

さて、シルバーの正解は?1973年の敬老の日(9月15日)に登場した現在のJR、当時の国鉄にシルバーシートの名称でお年寄りや体の不自由な方の優先席として設置したことが由来だという。当時本社旅客局営業課長(JR東海の初代代表取締役社長)の須田寛氏が、営業戦略の一つとして、優先席をひと目で分かるように座席ごと新しくすることを提案したが、当時の国鉄は赤字財政で資金の捻出が困難であった。せめて色だけでも変えようと、在庫を探して「たまたま銀色の布が残っていたから」が正解である。1974年の国語辞典にはシルバーは、高齢者を表す意味はないが、1982年からは高齢・老人の表記がある。番組では、現在JR東海の相談役である須田さんにインタビューしていたが、「用意できる色が他の色だったら?」の質問に、「オレンジであればオレンジシート、イエローであればイエローシート。結果としてシルバーでよかったんじゃないですか」と。

これまで座っていなかったが、これからは、少し疲れたときには優先席に座っていても許してくれるだろう。もう立派な高齢者だから。

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