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理事長コラム
『時代を見つめる』

「元島民の心・思いに真に寄り添うべき」

File.352018年11月30日発行

根室市・納沙布岬から目と鼻の先にある北方四島(択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島)の帰属問題が未解決のまま70数年が経過し、未だ日ロ間には平和条約が締結されていない。私は連合事務局長・会長時代、連合の平和行動の一環で、毎年開催する「平和ノサップ集会」に主催者側として2年に1度は参加し、北方領土返還を訴えてきた。また、連合は、日ロの政府間交渉の環境整備に向けた取り組みとして、1991年から始まった「北方四島交流事業」、いわゆる「ビザなし交流」へも積極的に参加している。

その北方領土問題が、去る11月14日夜、「シンガポールでの安倍首相とロシアのプーチン大統領の会談で、1956年の日ロ共同宣言を基礎に、日ロ平和条約交渉を加速させることで合意した」と報じられた。9月12日、ロシアのウラジオストクで開催された「東方経済フォーラム」の全体会合で、プーチン大統領が「あらゆる前提条件をつけず、年末までに平和条約を締結しよう」の提案がきっかけとなったのは、おそらく間違いないであろう。その後のマスコミ報道では、プーチン大統領は「56年宣言はすべてが明確なわけではない。2島を引き渡す時、どんな条件でどちらの主権になるのかは触れていない」と強調するなど、主権についての日ロの認識の違いは大きい。一方では、日本の有識者からも、「難しい状況の中から一歩踏み出したことを評価する」声もあれば、「これまでの方針を転換し後退するものであり、2島返還が上限になったのではないか」等の批判の声もある。

現在、ロシア政府は莫大な予算を投じて「クリル社会経済発展計画」を着々と進めている。特に、択捉島・国後島では、海外からの労働者の雇用や、海外資本の導入も活発化し、港湾・空港・発電所・道路や学校等の整備が急速に進められ、島内の生活環境も向上している。これらは、島民に経済的自信による定住志向と愛国心を芽生えさせ、ロシア側の外交交渉に大きな影響を与えることも危惧される。

日本政府は、2島先行返還を軸に交渉加速を狙うのだろうが、この2島の主権や国後島、択捉島の帰属問題などハードルは高い。また、それぞれの国の世論、安倍総理・プーチン大統領自身の自国での位置付けも含めた思惑、政治情勢、安全保障、日米安全保障条約など課題は多い。加えて、同盟国にある米国とロシアの関係も、ウクライナ危機、シリア問題、米国大統領選挙への介入疑惑など対立する難題も待ち受けており、難しい交渉となるだろう。

ことは日本の領土に関する問題であり、政府は、過去の経過も含めて今回の方針の位置付けについて、国民に納得できる説明を行うのは当然であろう。そして、何よりもこれからの交渉は、元島民の心・思いに真に寄り添うものでなければならない。

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