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理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「イパネマの娘」

File.432019年7月26日発行

サンバといえば「リオのカーニバル」を思い出す人が多いだろう。日本では30数年続く浅草サンバカーニバルも有名だ。サンバはブラジルの代表的な音楽。4分の2拍子のダンス音楽で、17世紀にブラジル北東部の港町に住んでいたアフリカ人奴隷の踊りが起源だといわれている。

そのサンバから派生したのがボサノバである。1950年代後半に生まれたといわれるが、今ではボサノバの代表曲のひとつである「シェーガ・ジ・サウダージ (邦題)想いあふれて」が1958年に出た時には、ボサノバという呼び名はまだ生まれていなかったようだ。ボサノバの生みの親は、作曲家でピアニストのアントニオ・カルロス・ジョビン、歌手でギタリストのジョアン・ジルベルトというのが通説である。

ジャズとボサノバが初めてコラボしたアルバムは、1962年、アメリカのジャズ・サックス奏者のズート・シムズによって、ニューヨークで録音された。しかし、一躍アメリカにボサノバを浸透させたのは、1963年のジョアン・ジルベルトとアメリカのジャズ・サックス奏者スタン・ゲッツが共演した「ゲッツ/ジルベルト」である。翌年1964年に発売されたこのアルバムは、翌年1965年のグラミー賞に於いて最優秀アルバム賞を含む4部門を受賞した。シングル盤の「イパネマの娘」は最優秀レコード賞を受賞し、世界中にボサノバブームを巻き起こした。

久しぶりに、LPレコード「ゲッツ/ジルベルト」に針を下ろす。「イパネマの娘」は一面の一曲目、1コーラス目をジョアン、2コーラス目がアストラッド、3コーラス目はスタン・ゲッツのソロ、4コーラス目のAメロはこの曲の作曲者・ジョビンのピアノ、サビの部分はアストラッドのボーカルにゲッツがオブリガード(メロディと同時に演奏され、メロディの引き立て役として演奏される旋律)するという構成だ。ボサノバ・マニアからは手厳しいアルバムだが、私にとってはボサノバのリズムに乗って、それぞれの持ち味が上手く引き出されているアルバムだと思う。アストラッドは当初歌う予定はなかったが、夫のジョアンにつきあってスタジオに来て、たまたま歌ってみたところ、できが良かったのでそのままレコーディングされたとの伝説も生まれた。

イパネマとは、リオデジャネイロ市内のイパネマ海岸のことである。訪れた知人によると、イパネマ海岸通りのホテルから見るリデオジャネイロの夜景は、世界一だという。残念ながら、まだ私は訪れたことはない。

ボサノバの生みの親の一人であるアントニオ・カルロス・ジョビンは、1994年60歳代半ばで亡くなった。そして、「ボサノバの神様」と呼ばれたジョアン・ジルベルトは去る6月6日、リオデジャネイロ自宅で、88歳の生涯を閉じた。またひとつの時代が終わったことを感じるミュージッシャンの死去である。ご冥福を心よりお祈りする。

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