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理事長コラム
『時代を見つめる』
古賀 伸明

「スタグフレーションの足音か?」

File.762022年4月 5日発行

ロシアがウクライナに軍事侵攻して1カ月強が経過した。

多くの犠牲者や避難民の報道を目にするたびに胸が痛むが、両国の軍事衝突は長期化の様相を呈している。国際社会の結束を固め、ロシア軍の一刻も早い撤退を実現することが極めて重要である。忸怩たる思いであるが、今は停戦交渉の行方を見守るしかない。

このロシアのウクライナ侵攻は、世界経済にも複雑な影響を与えている。

ロシアでビジネスを展開している企業は多く、業績に大きな影響を及ぼすことは容易に想像できる。また、ロシアへの経済制裁で、国内通貨のルーブルが暴落し今年のロシア経済は2桁のインフレが起き、マイナス2桁の経済成長に陥ると観測されている。

ロシア経済は世界の約1.7%の規模であり、世界経済に与える影響は軽微だとの考え方もあった。しかし、ウクライナ侵攻で、国際市場での原油やLNG(液化天然ガス)などのエネルギーや穀物など幅広い品目への価格上昇圧力が強まっている。

また、自動車の排気ガス浄化の触媒として使用されるパラジウム、ステンレス鋼の合金やハイブリッドカー用電池の材料となるニッケルの生産量は、ロシアがそれぞれ4割と1割のシェアで世界1位と4位である。そして、半導体に欠かせない高純度のネオンガスの約70%をウクライナが生産しており、供給が滞るのは間違いなく、このようなレアメタルなどの高騰は必至となっている。

国際的な商品価格の高騰と、サプライチェーンの世界的混乱で経済面での悪影響が懸念されインフレが加速する事態となる。

インフレの波は当然、日本にも及んでいる。消費者物価上昇率は現段階では数字となって表れていないが、企業間で取引される物の価格は前年比10%近い上昇率だ。資源価格高騰は輸入に依存する財・サービスの急激な価格上昇を招き、インフレと実質的な所得減をもたらす。

一方、米国のFRB(米連邦準備制度理事会)はコロナ禍への対応として続けてきたゼロ金利政策を2年ぶりに解除し、今後も段階的にすみやかに利上げを重ねる方針を示した。

米国の利上げで円安傾向が続き、輸入品価格の上昇幅拡大につながっている。
インフレ圧力やFRB金融引き締めによる円安が過度に進めば、一部の企業や家計の負担が増し、そのことが経済全体に悪影響を及ぼす。

急速に進むインフレの抑え込みに失敗すれば、景気後退が同時に進むスタグフレーションに陥るリスクが高まる。スタグフレーションの足音が既に近づいているのかもしれない。

異次元の金融緩和を続ける日本銀行と現在の日本の経済力で、過度の円安やインフレの抑え込みが本当にできるのだろうか不安が募る。

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