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労働組合の未来社会課題への挑戦

「21世紀デザイン」をもとに、社会貢献活動を20年近く続ける情報労連

2025年12月 1日

情報労連ロゴ

「明日Earth」というキャッチフレーズをかかげ、平和運動や環境保全、被災地ボランティアやカンパを20年近く続けている情報労連。その背景には産業の特性があった。社会貢献活動の主な取り組みの内容と問題意識について、情報労連の春川徹書記長、運動推進局の青木哲彦局長、田中清貴部長に話を聞いた。

地域のための行動を「21世紀デザイン」でかかげる

――最初に情報労連の概要について教えてください。

青木

情報労連は電電公社(現NTT)や国際電電(現KDDI)などの労働者がつくった労働組合を前身とし、1991年に今の組織になりました。現在、加盟組合数は237、組合員数は約19万人で、専従役員が約30名です。
情報労連は2004年に暮らしやすい社会の創造を目指して、政策と運動方針に関する検討を始め、2006年の大会で「情報労連21世紀デザイン」を決定しました。その後、環境変化をふまえて2018年に「情報労連21世紀デザイン第2版」に更新しています。

「21世紀デザイン」では、3つの政策、総合労働政策、社会保障政策、情報福祉政策を推進することに加え、1つの行動として「社会との価値の共有化」に取り組むことを定めています。1つの行動では、「労働組合および組合員が、地域やコミュニティの一員として参画・行動することで、それらの活動の幅を広げ、労働組合が社会に欠かせない存在として期待され共感される運動の展開を図ります。」とうたい、企業内中心の活動から地域社会における価値の創造や価値の共有のための活動し、その活動は組合員やその家族の自主的な参加を基本にすることにしました。

――それがきっかけとなって、社会貢献活動を始めたのでしょうか。

青木

情報労連ではそれ以前から社会貢献活動を行ってきました。例えば、1995年の阪神・淡路大震災では、約4億円のカンパを集め、のべ1184人の組合員がボランティア活動を行いました。1995年は戦後50年の節目でもあったので、平和運動の強化月間も展開しました。とはいえ、「21世紀デザイン」が情報労連の社会貢献活動の推進のきっかけになったのは間違いありません。

まず2006年に、教育機関と連携してキャリア教育を行う「明日の知恵塾」を始めました。さらに、円谷プロと合意書を交わして「ウルトラ警備隊」を始めました。ウルトラ警備隊のメンバーを組合員から募って、ラッシュガードに警備隊のマークを入れ、エコバッグをつくったり、活動は充実していたのですが、権利関係の問題などがあり、2年ほどで継続できなくなりました。

2009年に「明日Earth」というキャッチフレーズをかかげ、社会貢献活動や平和運動の一体感を高めていくことにしました。「明日Earth」では6つの領域、平和運動、被災地ボランティア、愛の基金(カンパ)、環境保全、プルタブ回収運動、明日知恵塾に取り組んでいます。

―― 6つ領域の主な取り組みを教えてください。

青木

まず、平和運動については、戦争被害が甚大だった沖縄、広島、長崎と、根室での北方領土返還要求を「情報労連 平和四行動」として毎年行っています。連合も四行動を行っていますが、それとは別に情報労連として取り組んでいます。

平和運動はもともと、情報労連の母体のひとつである全電通(現NTT労働組合)が、戦争体験を風化させていかないために始めました。最初は地域の支部が個別に行っていたのですが、全電通が1990年代に全国的な活動に広げ、これを情報労連が引き継ぎました。

田中

毎年、情報労連から加盟単組に人数をお伝えして、参加者を集めてもらっています。組合員に募集をかけて集めている組合もあれば、「今回はあなたにお願いできないか」と声をかけている組合もあります。平和行動は毎年実施しているので、同じ人が同じ場所に複数回参加するのではなく、他の場所に行ってもらうような調整は、各単組にお願いしています。参加者数は、2025年は、沖縄で約120人広島約100人長崎約170人根室約70人、合計で400名強です。

平和行動
青木

ただ、平和運動の規模はゆるやかに縮小しています。例えば沖縄なら、以前は嘉手納基地の周り約20㎞を歩いていましたが、警備やスタッフの稼働面などが厳しくなり、現地の事前調整の負担を考慮して周回行動はやめました。語り部の方のお話をうかがって、戦跡を見て回るというのを続けています。毎年、4地域の代表の方に集まってもらって総括会議を開き、今年の振り返りと翌年の見直しを議論し、持続性を維持しています。

平和行動は「平和なくして労働運動なし」という思いから始まっているので、規模は別として、長く続けていきたいと思っています。平和行動を戦後80年で途切れさせることなく、もっと昇華して、続けていくために、工夫していきたいです。

47都道府県で4500名が環境保全活動に参加

――他の活動はどうですか。

田中

実施規模が大きいのは環境保全活動 です。毎年、47都道府県で実施していて、昨年の参加者は約4500名でした。これには組合員だけでなく、組合員の家族の参加も含まれます。

地域ごとに内容は企画していて、識者を呼んで学習会を行うところもあれば、NPOと組んで終日の活動を行っているところもあります。3R、リデュース、リユース、リサイクルに関する講話の後に廃油での石鹸づくりを行ったり、アメリカザリガニの釣り大会プラス外来種に関する講義、NPOと連携した山林の草刈りや間伐作業も行っているところなど、いろいろあります。運動の影響力を高めるために、第3土曜の実施を推奨しているのですが、連携先の都合などで時期がずれることもあります。

春川

これらの活動にはレクリエーション的な要素を少し加えて、多くの参加者を募る企画にもなっています。海岸清掃であれば、地引網体験や潮干狩りを組み合わせたり、直近の大阪での開催であれば万博会場の近くの野鳥園で野鳥保護のための清掃活動を行っています。環境保全が目的ですので主にその内容は清掃活動となります。

私たちが社会貢献活動への取り組みを全体的に始めた2000年代は、企業における社会的責任CSR(Corporate Social Responsibility)への関心も高まり始めたころであり、企業としても社員総出で事業所周辺を清掃するなどの活動が増えつつありました。そこには、当然、社員である組合員も参加していましたので、労働組合にとっても「環境保全活動をみんなで一緒に行う」というのは自然な感覚で受け取られ方もスムーズであったのもと思います。

海岸清掃
青木

情報労連が「明日Earth」を立ち上げた頃は、環境保全として最も取り組みやすかったのが清掃活動だったのだと思います。最近では気候変動やSDGsといった新たな課題に対してどう対応していくのかも検討していく必要を感じています。

田中

他団体と協力して行っている活動としては、プルタブの回収運動もあります。2010年から始めて2024年8月までに約3万㎏のプルタブ・アルミ缶を、情報労連の加盟組合から環公害防止連絡協議会というボランティア団体に送り、アルミ製車椅子24台の寄贈につながりました。これも産別労組のスケールメリットを活かした活動のひとつです。

被災地ボランティアには多様な組合員が集結

――被災地ボランティアはどのように行っているのですか。

青木

大規模災害時は連合がボランティアを派遣 していますが、情報労連はそれとは別に独自でもボランティア活動をしています。2024年1月に起きた能登半島地震では、連合の被災地救援ボランティア が3月から7月まで続いたので、その活動に参加した後、情報労連として9月から10月にかけて、毎週約10名ずつ、計5回の団を出しました。場所や活動内容は、石川県や珠洲市の社会福祉協議会や連合石川に状況をうかがいながら決めました。

春川

情報労連の加盟組合へボランティア参加を募ったところ、全50人の枠に100人以上の応募があり、抽選ではなく参加動機などをもとに参加者を確定させていただきました。参加者の職種や年齢、性別は様々で、障がいをお持ちの方もいらっしゃいました。

情報労連のボランティアでは、活動に必要な装備や宿泊場所、交通手段も含めて手配するので、個人で行うボランティアに比べると負担も負荷も大幅に抑えられることも、人が集まる理由だと考えています。

青木

参加者の意欲は高く、「個人で活動するのは難しいのでこういう機会があって助かった」「被災地が今もなお復興できていない状態を見て思うことがあった」という声をいただいています。参加枠を増やして活動期間を延ばしてほしいという要望ももらっているのですが、今回の活動でも相当の費用がかかっており、予算の制約から容易にできないのがジレンマです。

春川

自ら能動的に被災地入りをしてボランティア活動を行うような方は、すべて自己責任として臨まれていると思うのですが、情報労連として実施する際は、組合員に広く参加を呼び掛け、団体組織として取り組むため、参加する組合員の危険をできるだけ減らすといったケアも求められます。

青木

他にも、参加者のなかには、甚大な被害を受けた場所での肉体作業をイメージしていた方がいて、実際は家屋のなかで黙々と行う事務作業だった時に、意欲が高い分、モチベーションが下がるといったことも懸念されます。ですが、ボランティア活動の内容は被災者の方の要望に応じて決まるものなので、そういったズレはある程度想定していただく必要があります。

能登地震

――情報労連では金銭の寄付も行っています。

青木

2001年に「情報労連 愛の基金 」を始め、各職場やインターネットを通じて組合員からカンパを募っています。募金額は、2007年は1300万円だったのですが、2024年は550万円でした。以前は職場委員が声をかけて集金していたのですが、最近はリモートワークが普及して、対面で会えない組合員も多いため、オンライン寄付も受け付けていています。ただそれによって集金が難しくなってきています。

春川

「愛の基金」カンパは組合費とは別に個々人の善意として任意でお願いするものです。そのため、寄付をしたい、してもいい、と思っている方々に協力していただいています。「愛の基金」の使途は、災害復興やNPOへの助成などに拠出しており、2007年に起きた新潟県の中越沖地震や2024年の能登半島地震だけでなく、ミャンマー(ビルマ)のサイクロン被害などにも寄付してきました。また、組合員が参加する市民活動や平和運動にも拠出しています。

世間のイメージと実態のズレ。2024年から戦略的広報を強化

――組合員から社会貢献活動の規模を縮小したほうがよいという声はありますか。

青木

平和活動に関してそういう声を聴いたことはありません。長年続けてきたこともあり、活動そのものの是非を疑問視されることはないと思います。

春川

平和活動への参加者からは、「行ってよかった」というポジティブな反応が必ず返ってきますし、当地で体感したことを周りの方にも伝えてもらっていると思います。一方で運営側としては、毎年、大規模な活動を行うための事前準備や稼働負荷が大きいことは課題でもありますが、私たちが様々な取り組みを行っていることを組合員のみならず、世の中の方にももっと知っていただけるようにしなければならないとも考えています。組合から発信する広報での周知も重要ですが、外部メディアに取り上げていただき、それを介して見るほうもインパクトがありますので、客観的に取り上げていただくことで、私たちの活動の意義や価値観の醸成にもつながると考えています。

青木

実は地方紙では結構取り上げていただくことがあるのです。私自身の経験としても、出身単組のNTT労働組合で、なくなりかけていた絵本を復刻させた時に、市長がイベントに来て、マスコミが取り上げてくれました。

ですが、全体としては、労働組合はそうしたメディア対応が下手だと思います。記者の方とお話しすると、彼らが認識している労働組合像と我々が実際に行っていることがズレていると感じることもあります。実態と世間のイメージを合わせていくことも重要だと感じています。情報労連では2024年から、「明日Earth」の活動に限りませんが、対外発信を強化して、プレスリリースを戦略的に出すように切り替えました。

――社会貢献活動は労働組合にとってどんな意義がありますか。

青木

ずっと「社会的に価値ある労働運動」を一番大切にしたいと思って続けてきました。労働組合が地域にアプローチすることが、組合員さんが活動する後押しになるという循環を回したいと思っています。

春川

労働組合の原点は「一人ではできないことを複数人、集団で行う」ということですよね。労働条件をめぐって会社と交渉をすることだけがすべてではなくて、一人ひとりの心に訴える活動をみんなですることも大事にしたいです。

社会貢献にはいろいろな取り組みや活動あるので、そこへの関わり方は人それぞれです。価値観や感性が異なることは当然のことですが、それでも、一人ではなく集団だからできることを大事にすることが大切だと感じています。

青木

お互いさまの精神で共闘していくのが労働組合の核です。自分たちの労働条件を上げるだけでなく、全ての人たちに関わりながら、一緒に世の中を良くしていくというマインドを、組合員の皆さんにも持っていただいて活動していきたい。ただの利益追求集団にはなっていけないというのがDNAとして僕らの中にあります。

――「社会運動ユニオニズム」という概念もあります。「明日Earth」は社会運動でしょうか。

青木

いろいろな社会課題に対して誰が解決を担えるのかといったら、労働組合はその担い手になりうると思っています。単組はどうしても企業の事業成長の比重が高くならざるをえないので、産別労組が政策プラス社会運動的な取り組みをリードし、広げていく役割を担っていく必要があります。

ただ、日本の労働組合の社会貢献活動は、海外の社会運動のようなアドボカシー(※社会的に問題を提起したり意見を表明したりして解決を促す)型の活動ではない気がします。課題を解決するための提言や政策立案よりも、もっと地域に根差した草の根の活動をしているので、NPOに似ていると思います。

――NPOと違い、労働組合だからできることは何ですか。

青木

組織力です。労働組合には規模があり継続性がある。NPOは特定の地域に根差したところが多く、全国規模で活動しているところはあまりありません。ですが、産別労組であれば全国に組織があり、組合員も19万人います。この組織力を源泉に何らかの運動をつくっていけるのは労働組合ならではだと思っています。

清掃親子

取材日 2025年9月11日
※団体名や役職は取材当時のものです。

聞き手 中村天江
執筆 中村天江

 

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