2026年1月13日

70年以上の歴史をもつ電機連合では、緑化事業や被災地復興のためのボランティア活動、障がい福祉といった社会貢献活動を長きにわたり続けている。社会貢献活動をどのように継続しているのか、電機連合の組織部門担当事務局次長の秋元成氏と政治センター長兼企画部門担当事務局次長の浦上順平氏に話をうかがった。
議員と連携して地域課題に取り組む
――最初に電機連合の概要をお聞かせください。
- 秋
-
電機連合は産業別の労働組合で、総合電機や重電、家電、部品、通信、情報、半導体、人材サービスなどを主力事業とする労働組合が加盟しています。現在、加盟組合は222、組合員数は約58万人です。地域単位での活動にも力を入れており、全国35地域に「地方協議会(地協)」を設置しています。
前身組織となる電機労連が結成されたのが1953年なので、産別労組としてはすでに70年を越えています。40周年の1992年に電機労連から電機連合に移行し、従来の「綱領」に代わる「基本理念・基本目標」を制定しました。その考えの下、各取り組み方針があります。地域コミュニティの充実はその取り組みの一環で、加盟単組や地方協議会による福祉活動や地域活動の支援や、緑化事業や被災地復興のためのボランティア活動を行っています。また、電機連合の議員団と連携・協力しての地域の問題解決や振興にも力を入れています。
――たしかに自治体の政策や取り組みは市民生活に直結します。
- 浦上
-
労働組合が地域コミュニティに関わるうえでは、政治を通じた課題解決も重要です。一昨年、電機連合の組織内議員や協力議員の取り組みをまとめた冊子をつくったところ、多岐にわたる活動が見えてきました。下図はその取り組みをマッピングしたものです。
いくつかご紹介すると、例えば、地方自治体議員と労働組合が連携して、災害対策としてトイレトラックの導入を推進したり、学校の教室や体育館へのエアコン設置について声をあげたりしています。また、ある自治体では野外競技場の使い道が限られていたため、地元出身のアーティストを呼ぶ大掛かりなフェスティバルを提案して、実現しました。他にも、生活道路の暗いところにLEDをつけたり、学童のキャパシティを確保したりすべく、議員から地方行政に働きかけてもらうこともあります。

――こうした活動は組合員に広く理解されていますか。
- 浦上
-
議員一人ひとりの活動を紹介する冊子を作ったのは、議員が様々な取り組みをしていても、それが組合員まで十分伝わっていないという問題意識からでした。多くの組合員にとっては自分事になっていないと思います。働く者にとっては、職場や家庭が優先事項になりがちで、地域課題への取り組みは二の次にならざるを得ませんし、それは当然のことです。
- 秋
-
良くいえば「任せた」、悪くいえば「誰かがやってくれる」ですよね。労働組合の活動に対して「声が大きい人たちが得をしている」という見方をされることがあります。それは、労働組合のない環境で働く人々から、労働組合のある人々へのこともあるし、組織内議員を出している大規模組合に対して、そうではない中堅・中小の労働組合からもあります。
電機連合には直接加盟の労働組合が約180あって、その内の155が中堅・中小の労働組合です。組織内議員を出したり、労働組合があったりするかによらず、「声なき声」をちゃんと拾って、できるだけ多くの人が参画できるようにしたいと考えています。とはいえ、声を十分に拾い上げることは、長い間続いている課題ですので、個人的にはAIなどをうまく活用したら、よりも多くの声を取り入れられるのではと思っています。
- 浦上
-
私たちは地域に事業所を設けている以上は、仮に組合員がそこに住民票をおいていなかったとしても、地域に対する役割や社会的責任が発生すると考えています。そのため電機連合では、地域が良くなるための活動にも重きをおいています。
大企業には政策渉外室など地域課題を整理して自社の課題として取り組む部門がありますが、中堅・中小の企業はないところが多いと思います。また、その労組が議員を擁立することも難しい。そのような状況でも、産別労組や地方議員を介せば、地域の課題解決につなげることができます。
電機連合には組織内議員と協力議員を合わせて、2024年時点で83名の議員団がいます。ピークは2004年で、その時は労働組合の数も今より3割近く多く、232人の議員がいましたが、議員数も減少傾向が続いています。議員輩出を断念する場合、地域住民の理解をいただくために大きなパワーが必要ですが、議員を新たに擁立するには、はるかに大きなパワーを要します。事業再編や労働組合の統廃合等にともなって、議員擁立を諦めざるを得ない状況を、別の地域で新たな議員を当選させることでカバーすることは難しいんです。そのため、組合員に議員たちの活動を知ってもらい、協力をしてもらうことが非常に重要です。
1992年に理念を制定し、ボランティア活動を開始
――ボランティア活動についても教えてください。
- 秋
-
電機連合に名称変更した1992年の大会で、基本理念「美しい地球・幸せな暮らし」を具体化するために、電機連合「地球・愛の基金 」を設立しました。当初は緑化事業が中心で、1994年からタイやマレーシア、中国などで植林活動を展開していました。ところが、2011年の東日本大震災により、海外だけでなく、国内に目を向けた活動への声が多くあがるようになりました。
基金の規程には、具体的発動内容のひとつとして「国内・外の大規模災害救済への救援および支援」が含まれています。それを根拠として、2014年から東日本大震災の被災地での「東北ボランティア」や「高田松原再生ボランティア」の活動を始めました。
「東北ボランティア」では、2014年に第一次ボランティア団として、親子4組を含む63名を派遣し、苗床整備や七夕祭りの準備の手伝いなどを行い、以降、2019年まで形を調整しながら続けました。組合員とその子どもたちが親子で参加できる事業として、被災地住民の皆さんとの交流や復興支援ボランティアを通して、自然災害の脅威や防災の重要性を学び、次代を担う子どもたちとともに環境保全・保護の大切さを学ぶ機会にしていきたいと考えています。
コロナ禍により2020年度の活動が中止になったことに加え、東日本大震災から年月が経ち、被災地のニーズの変化などにともない、支援形態も見直す必要が生じていたため、2021年度以降は植林地保全に内容を改めて活動しています。現在は、能登半島地震の被災地に赴き、ニーズをくみ取ったうえで、何をするのか検討しているところです。

- 秋
-
こうした活動は本人の自発的意思が大切なので、「地球・愛の基金」委員会の加盟組合の組合員とその家族に募集をかけて行っています。加盟組合のなかでは、オープンに募集しているところもあれば、役員が関心のありそうな組合員に声をかけていることもあるのではないかと思います。ただ、コロナ禍により規模を縮小せざるを得なかったので、最近は委員会を担っている加盟組合の役員中心になっています。
- 浦上
-
組合員のなかにボランティア活動をしたい人がいる一方で、一つの労働組合のなかでそうした希望者が同時に多数集まるかといえば、そうでもないと思います。そうなると、その労働組合が単独でバスを出して、宿を手配して、ボランティア活動を行うことは難しい状況にあります。でも、産別組織が音頭を取れば、そうした組合の希望者もボランティア活動に参加できます。
電機連合には中小の労働組合が多数加盟しています。個別の組合ではできないことを、産別のスケールメリットを活かして実現するのも産別組織の役割であると考えています。
「地球・愛の基金」関連事業(東北ボランティア、高田松原再生ボランティア)
| 年度 | 名称 | 日程 | 参加者 | 内容 |
|---|---|---|---|---|
| 2014 | 第1次東北 | 8/2-9 | 63(親子4組) | 苗床整備、七夕祭り等 |
| 2015 | 第2次東北 | 8/4-9 | 59(親子9組) | 苗床整備、七夕祭り等 |
| 2016 | 第3次東北 | 8/4-9 | 57(親子6組) | 苗床整備、七夕祭り等 |
| 2017 | 第1次高田松原 | 6/24-26 | 62(親子6組) | 植林活動、被災地視察 |
| 2017 | 第4次東北 | 8/4-9 | 56(親子6組) | 苗床整備、七夕祭り等 |
| 2018 | 第2次高田松原 | 6/2-4 | 68(親子5組) | 植林活動、被災地視察 |
| 2018 | 第5次東北 | 8/4-9 | 60(親子8組) | 苗床整備、七夕祭り等 |
| 2019 | 第3次高田松原 | 5/18-20 | 93(親子13組) | 植林活動、被災地視察 |
| 2019 | 第6次東北 | 8/4-9 | 55(親子6組) | 植林地保全、七夕祭り等 |
| 2020 | 第7次東北 | 8/4-9 | 中止。植林地保全のため、草刈機寄贈 | |
| 2021 | 第8次東北 | 5/28-29 | 7名 | 植林地保全 |
| 2022 | 第9次東北 | 5/27-28 | 16名 | 植林地保全 |
| 2023 | 第10次東北 | 5/25-26 | 17名 | 植林地保全 |
※その他として2023年8/6-8に大石七夕祭り視察を実施
――活動内容を見直しながら、社会貢献活動を続けているのですね。
- 秋
-
電機連合では10年に1度、中期運動方針を策定し、5年に1度、中間見直しを行います。社会貢献活動を含む全ての領域について、現状がどうで、何をどう変えるのか、という議論をするのですが、社会貢献活動に取り組んでいくことへの異論は出てきません。
一方、毎年の活動では、緑化事業も震災復興のための活動も長いこと続けていると、「このままのやり方でよいのか」「そもそもの在り方を見直すべきではないか」といった意見が必ず出ます。労働組合は一度決めたことをやり続ける慣性力はとても強いので、「今年もやります、来年もやります」となりやすいんです。ですが電機連合では、「本当に来年もこれでいいのか考えよう」と、内部で絶えず問うようにします。
また、ボランティア活動ではさまざまな外部団体と連携していますので、何にどんな優先順位で取り組むのかについてのコンセンサスが必要です。それを行ったうえで、今後どうするのかについてすりあわせていくことになります。
財源を基金化することで持続性を高める
―労働組合が社会貢献活動を行うにあたっては資金確保が論点になります。
- 秋
-
たしかに組合員から地域活動や社会貢献活動はいらないから「組合費を下げてほしい」という声を聞くことがあります。私たちは個々人の利己ではなく、社会のため、そこで暮らす人々のため、といった広い視野で取り組んでいるということをお伝えしながら、理解を求めています。
「地球・愛の基金」に関しては、毎年秋に加盟組合にカンパをお願いしていて、組合員一人当たり15円を目標に取り組んでいただいています。これまでの蓄積を国債などで運用していて、基金の使い道は社会貢献活動に規程で限定しています。
- 浦上
-
社会貢献活動を基金で行っているのは、単年度の会計だとうまく回らないからです。繰越金を貯めたり、例えば一部を積み立てて5年に1度大きな活動をしたりするには、毎年の収支管理とは別枠の基金のほうが適していると思います。
――より多くの方に活動を知ってもらうために広報にも力を入れていまか。
- 秋
-
組合員の皆さんにもっと知ってほしいと思い、電機連合の機関誌などで毎年、活動報告を掲載しているのですが、なかなか難しいです。読者の手応えを測る良い方法がないので、本当に組合員に伝わっているのかいつも不安に思っています。
- 浦上
-
単組は、関係者であれば口頭で伝えることもできるので、企業の外に向けて情報を発信する必要性を感じていないかもしれません。産別としては、緑化事業やボランティアなどに限定せずに、マスコミには全体像に着目してもらいたいです。
- 秋
-
「社会の公器」としての活動の広報は、ナショナルセンターである連合に期待をしています。連合が毎月、中央執行委員会を終えた後にマスコミ向けの記者会見の場を設けているのは、ナショナルセンターならではだと感じています。
- 浦上
-
ただ、社会貢献活動については、社会的な意義を評価することが活動の持続性につながる面があります。例えば、経団連は1%クラブ(※企業の経常利益や可処分所得等における1%を社会貢献活動に拠出する仕組み)をもっていますよね。そういう世界観が広がりつつあると感じています。
――今回、経団連にもお話をうかがったところ、社会貢献活動における労働組合の強みについても言及がありました。
(参考記事)社会課題解決に労使対立はない!経団連に聞く労働組合の強みと可能性
- 秋
-
連合の救援ボランティアの一環で、私も2024年、能登半島地震の被災地である石川県に行ったときに、他の産別労組から来ている方々と一緒になったんですね。皆さん、機転はきくし、手先は器用だし、安全に対する感覚も鋭くて、団体行動も一緒にとれるし、そういうことに長けている人たちばかりなんです。すごいと思いました。
労働組合は組織としても災害発生時の俊敏性が高いと思います。電機連合では、例えば、自然災害が起きた時のマニュアルを整備していて、まず初動調査をかけて、被害が一定規模を越えたら産別として動くというフローが決まっています。大きな労働組合は基金ももっています。何かあれば即座に動いて、関係者と調整して、体制を立ち上げることができます。
また、豪雨や地震については、産別組織としての支援対象にはならなくても、電機連合の地域協議会が個別に対応しているケースも結構あります。地域の加盟組合に被害状況を確認して、自治体にも連絡を取り、独自に動いています。
ボランティアでは自発性が大事だと話しましたが、災害時の緊急ボランティアは事情が少し違います。大規模災害時は連合が救援ボランティアを出しており、各産別にボランティアの人数と活動期間を割り振るのですが、依頼から対応までの調整期間が短いので、産別では動けそうな人、動いてくれそうな人から声をかけることになります。結果的に、緊急のボランティア活動は専従役員中心にならざるを得ず、そこから広がりにくいということが起きています。
- 浦上
-
ボランティア活動でメンバーの固定化や動員が起きているのは、政治活動にも通じるところがあります。社会貢献活動も政治活動も関わっている人が限られている。自主参加による広がりと、緊急のための動員を、もっとうまく使い分けられたらいいですよね。最近はボランティアの募集サイトもあるし、やりようがあると思います。
- 秋
-
ボランティア活動に興味をもっている組合員が人材プールのようなところに登録しておけば、ボランティアが必要なことが起きた時には案内が届いて、無理して時間をこじあけて参加するのではなく、時間の調整がつく人がスムーズに参加できるようになるといいと思うんです。今はIT技術が進歩しているし、ワークライフバランスの重要性も高まっているから、「いわれて動くより、行きたい人が行ける」仕組みが求められているし、世の中にはすでにあります。
家族を思う組合員の声から始まった障がい福祉
――電機連合は福祉活動も行っていますよね。
- 秋
-
緑化事業やボランティア活動を行っている労働組合は結構ありますが、これから紹介する福祉活動の形態はあまりないのではと思います。
電機連合の神奈川地方協議会では、1972年から50年以上、障がい福祉活動を続けています。きっかけは、ある組合員からの「障がいを持つ自分の子どもに労働組合は何をしてくれるのか」という相談でした。神奈川地協で障がい福祉活動の論議を開始し、1972年に「心身障がい児(者)対策委員会」を組織し、その後、「障がい福祉委員会」に引き継がれて、今に至っています。
障がい福祉委員会では、障がいを持つ親達の訓練会の支援だけでなく、当時はあまり知られていなかった街のバリアフリーや公共交通機関における障がい者利用を可能にするための運動を行っていました。また、福祉相談員を設置し、組合員や労組からの福祉相談も受けつけています。 そうした活動が実を結び、1996年に横浜市に社会福祉法人電機神奈川福祉センターを設立し、障がい者の就労訓練、就労支援、職場定着援助を中心に様々な障がい者への支援を続けています。
障がい福祉委員会には電機連合の加盟組合から委員を出し企画や運営を行っています。例えば、組合員に障がい者や高齢者についての理解を広げるために、電機神奈川福祉センターを使ってボランティア体験講座をしたり、労働組合から希望を募り、手話入門講座を開催したりしています。さらに毎年5月に障がいを持つ組合員さんやその家族。電機とのかかわりのある福祉施設などにから障がいを持つ方を募り、「ふれ愛の旅」も開催しています。

――労働組合が50年にもわたり福祉活動を行っているというのはとても意外です。
- 秋
-
組合員の声が特別に大きかったわけではなく、組合員が声をあげた時に、組織として「これは大事なことだ」と受け止めて、動き始めて、組織をつくるところまでやったんだと思っています。なぜこの活動が続けられているかというと、地域においてこうした活動が血となり肉となり、もう当たり前すぎて、カルチャーになっていると考えています。 一方で、神奈川地協でこうした福祉活動をしているのなら、「他の地域でもしたらいいのではないか」といわれるのですが、そういう話でもないんです。地域の中から声があがって、その声に応える形で運動として続けているものだからです。ここが大事な点です。
- 浦上
-
職場発信で課題解決ができるのが労働組合の良いところです。電機神奈川福祉センターも組合員の家族に対する思いが第一歩だったわけで、細部まで目が届くのは労働組合ならではだと考えています。
会社は積極推進、その時、労働組合は?
――社会貢献活動における経営との関係をどうとらえていますか。
- 秋
-
SDGsや人権デューデリジェンスなど、世の流れとして、企業は社会課題に積極的に取り組むようになっていて、今後さらに加速していくと考えています。労働組合はその時どうするのか。労働組合は経営の動きを必ずしも意識しなくていいとはいえ、組合員のボランティア意識の醸成など、何に取り組むのか、考えていく必要があります。
- 浦上
-
東日本大震災の頃は社会貢献活動の内容によっては、労使が連携・協力して行うことが当たり前でした。例えば、カンパを集めるために、経営から社内にトップメッセージを出し、労働組合が募金箱をもって回る、ということをしていました。労働組合としては、一時点の瞬発力に加え、どう復興していくのかといった中長期的な視点で、息の長い取り組みにすることが必要だと感じています。
- 秋
-
会社の社会課題への向き合い方が変われば、労働組合が注力することにも影響があるはずです。これからの時代における社会貢献活動に対する労使の関わり方について、電機連合としてどう取り組んでいくのかについて考えていきたいです。
取材日 2025年9月10日
※組織名や役職は取材時点のものです。
聞き手 中村天江
執 筆 中村天江
