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労働組合の未来

社会課題への挑戦

「子どもの貧困」に4団体が協働して挑む連合沖縄

2026年3月 2日

連合沖縄

連合沖縄は、「すべての働く人の雇用と暮らしを守る」という立場から、政策・制度要求にとどまらず、平和行動や地域に根ざした幅広い社会貢献活動に取り組んできた。その中でも中核的な実践が、連合沖縄、沖縄ろうきん、こくみん共済coop、沖縄県労福協の4団体が協働で運営する「ゆめ・みらい基金」である。
4団体が垣根を越えて「子どもの貧困」に挑む独創的な取り組みは、どのようにして生まれ、地域社会にどのようなインパクトをもたらしたのか。そして、沖縄戦の記憶を継承する平和行動に、連合沖縄はどう向き合っているのか。連合沖縄(仲宗根会長 、石川副事務局長)、沖縄ろうきん(東盛理事長 、宇地泊専務)、こくみん共済coop(砂川沖縄推進本部本部長 、大城事業推進部部長補佐)、沖縄県労福協(岡野常務理事 、宮城室長)に聞いた。

3割の子どもが貧困状態。沖縄の貧困率は全国最下位

――連合沖縄では、どのような社会貢献活動を行っていますか。

連合
仲宗根

連合沖縄(日本労働組合総連合会沖縄県連合会)という組織そのものが、社会貢献活動を担う存在だと考えています。多様な取り組みを行っていますが、その中でも中核的な活動である、連合沖縄、沖縄ろうきん(沖縄県労働金庫)、こくみん共済coop(全国労働者共済生活協同組合連合会沖縄推進本部)、沖縄県労福協(公益財団法人沖縄県労働者福祉基金協会)の4団体で運営している「働く仲間のゆめ・みらい基金」(以下「ゆめ・みらい基金」)についてご紹介します。あわせて、連合沖縄が継続して取り組んでいる平和行動についてもお話します。

――「ゆめ・みらい基金」は、どのような取り組みですか。

連合
仲宗根

子どもの貧困率が全国最下位の沖縄県では、子どもが安心して育つ環境をつくるために、親の貧困や雇用の問題に向き合うことが欠かせません。「ゆめ・みらい基金」は、子どもを育てる親を対象に、就労・生活支援や子どもの受験費用等の支援を行っています。

連合沖縄はすべての人が安心して暮らし、子どもたちの夢と未来を応援するために、「ゆめ・みらい基金」を社会貢献活動の重要な柱と位置づけ、各構成組織への呼びかけ・寄付・食料支援を行い、共助の輪を広げています。

ゆめ・みらい基金

受けた恩を次へ――「感謝の循環」につなげる伴走支援

――「ゆめ・みらい基金」の運営体制と、実際の支援について教えてください。

労福協
岡野

「ゆめ・みらい基金」は、沖縄県労福協 が事務局を担当しています。沖縄県労福協は1975年に設立された沖縄県内の労働者福祉を支える団体です。行政から委託を受け、生活から就労支援までを一体的に支援する「グッジョブセンターおきなわ」や、「生活困窮者自立支援事業」「ファミリーサポートセンター事業」等を運営する他、保育園や障害者就労移行支援事業等を運営しています。

「ゆめ・みらい基金」も単なる寄付事業ではなく、生活困窮者自立支援制度などを受託し、自立に向けた個別・継続的な伴走支援を行っている点が、大きな特徴です。

沖縄県はシングルマザー世帯が多いのですが、子どもがいることで就職が難しく、生活が徐々に困窮し貧困へと追い込まれていく母親からの相談が沖縄県労福協に多く寄せられていました。こうした状況を受け、2006年から内閣府等のモデル事業として、「子どもを預かってもよい人」と「預かってほしい人」を地域でマッチングする仕組みを提案し、3年間のモデル事業で約300名の就職決定者を生み出すことができました。この経験をもとに、子育てと仕事の両立支援には子どもの預かり体制が不可欠であることを政策提言とし、当時の役員が各自治体を回り、働きかけを行ってきました。さらに、私たちの取り組みを連合沖縄・連合が内閣府につないでくれたことで、生活困窮者支援の取り組みが本格的にスタートしました。

労福協
宮城

支援を受けた方からは、「あのとき助けてもらわなければ、高校を続けられなかった」「基金があったから、子どもに惨めな思いをさせずに済んだ」という声をいただくことがあります。ある母親は、「受験費用を工面できず諦めかけていたが、基金のおかげで子どもを高校に進学させることができた。今度は自分が誰かの力になりたい。」と話してくれました。支援が「もらって終わり」ではなく、次につながっていく――そうした循環が少しずつ生まれていると感じています。

ろうきん
宇地泊

2017年1月4日、連合旗開きの日に「学びと育児 両立支援~若い母親 高卒資格取得へ」という新聞記事が掲載されました。幼い子どもを育てながら通信制高校で学ぶ若い母親を、「ゆめ・みらい基金」の預かり保育支援で支えるという内容です。この報道をきっかけに、会員の皆様の関心が一気に高まり、運動としての理解と共感が広がりました。「ゆめ・みらい基金」が本格的に動き出した瞬間でした。

労福協
岡野

この女性は、通信制高校を卒業後、沖縄県労福協が行う就労支援を通じ、安定した職に就くことが出来ました。単発の支援で完結するのではなく、複数の関係機関が連携し、段階的に支援を重ねたことで、本人にとって望ましいかたちで社会への一歩を踏み出すことができた事例です。

子どもの貧困に立ち向かう――集まった思いとお金

――「ゆめ・みらい基金」設立の経緯を教えていただけますか。

ろうきん
宇地泊

きっかけは、沖縄ろうきんの創立50周年事業です。50周年事業のワーキンググループで「顧客との関係性を変え、社会的労働運動の視点を持つべきだ」という提言を受け、連合沖縄に加え、連合に加盟していない全港湾(全日本港湾労働組合)や高教組(沖縄県高等学校教職員組合)にも声をかけ、議論を重ねました。そこで共有されたのが、沖縄における子どもの貧困という社会課題に、連合の枠を超えて取り組もう、沖縄ろうきんの会員組織基盤も活用し、みんなで連携していこう、という考え方でした。これが、取り組みの出発点です。

一方で、立ち上げ原資の確保は大きな課題でした。当時の沖縄ろうきんには新たな原資を拠出する余力がなく、50周年事業としてなけなしの利益から約2,000万円を配当原資として積み立てました。そのうえで会員の皆様に、「この一部をゆめ・みらい基金に寄付してほしい」と呼びかけました。約1,600万円(500万円×3年分)が集まり、何とか基金をスタートさせることができました。

ろうきん
東盛

原資が3年分しかなく、継続性が最大の課題でした。沖縄ろうきんだけで続けることは難しく、毎回寄付を募る形では長続きしないと判断しました。そこで翌年から始めたのが「0150 ゆめ・みらい運動」です。普通預金口座から一口50円の寄付を募る仕組みをつくり、会員に広く呼びかけるとともに、こくみん共済coopにも参画を要請しました。

coop
砂川

NTT労組沖縄分会の分会長を務めていた当時の立場から話をすると、2016年の新聞一面に載った「沖縄県の子どもの貧困率29.9%」という数字は、大きな衝撃でした。現実を突きつけられ、「これは何とかしなければならない」と強く感じましたが、単独の組織では限界があるとも思いました。そんな中、沖縄ろうきんから「ゆめ・みらい基金」立ち上げの話があり、迷わず「やりましょう」と即答しました。

集まった1,000万円超は、理屈ではなく、組合役員や組合員一人ひとりの覚悟の表れです。組合運動の資金を子どもの貧困対策に使う――その強い思いが共有され、立ち上げ期の原動力になりました。

coop
大城

沖縄ろうきんから「ゆめ・みらい基金」への支援相談を受け、この取り組みは労働者福祉の実践として職員に伝えられると感じ、ぜひ関わりたいと思いました。「社会的労働運動」という理念にも共感し、余裕はなくとも今動かなければ意味がないと判断しました。

また、社会課題に思いを寄せるこくみん共済 coop指定整備工場 の皆様とも最初から一緒に取り組むべきだと考え、各工場を一軒一軒回り協力をお願いしました。車検1台100円から始めた寄付は、現場の「もっと貢献したい」という声を受けて200円に引き上げられ、現在も継続しています。

連合
仲宗根

私たち連合沖縄も、車検の際には「ぜひ指定整備工場を利用してください」と、組合員や関係者に積極的に呼びかけています。

連合
石川

こくみん共済coopに加入していれば割引が受けられる場合もあり、「ゆめ・みらい基金」・整備工場・利用者のメリットが重なる三方良しの仕組みになっています。

――「ゆめ・みらい基金」の内訳を教えてください。

ろうきん
東盛

沖縄ろうきんでは、個人寄付として、「0150ゆめ・みらい運動」の目標を1万口とし、年間約600万円を安定的に確保しています。また、社会貢献寄付商品の新規契約1件成立につき100円の寄付を行っています。

団体寄付については、沖縄ろうきんで利用配当を実施する際に「ゆめ・みらい基金」への寄付のお願いをしており、現在では労働組合を中心に年間400~500団体から寄付が寄せられています。

ろうきん
宇地泊

団体寄付(2024年度558万円)には、協力団体である全港湾・全駐留軍労働組合・JP共済生協にも毎年拠出いただいています。また、労働組合の大会でのチャリティー拠出も積み重ねています。

coop
砂川

こくみん共済coopは、個人顧客向け社会貢献寄付商品の新規契約ごとに100円を「ゆめ・みらい基金」に寄付しています。加えて、車検は年間約5,000台が見込まれることから、車検1件200円の寄付は100万円規模の寄付となっています。

ろうきん
宇地泊

社会貢献商品の仕組みと会員との一体感を伴う運動的要素を組み合わせることで、立ち上げ当初は単年度500~600万円程度の収入規模でしたが、9年間の取り組みを経て、年間1,600万円規模の安定した予算を組めるまでに拡大しています。

年末に届ける、地域に寄り添う思いやり

――他にも、連合沖縄や4団体協働での社会貢献活動はありますか。

連合
石川

連合沖縄の社会貢献活動の一つとして、沖縄県労福協が主催する年末食料配布会「お福分け隊」に、連合沖縄青年委員会や4団体の各事務局が積極的に参加しています。

「お福分け隊」は、支出が増え食料の確保が難しくなる年末に、生活に困難を抱える方々へ必要な食料などを届ける活動です。那覇市のグッジョブセンターや沖縄市の会場で、お米や乾麺、レトルト食品、缶詰を詰め合わせた食料セットや式服などの衣料品を、訪れた親子連れや高齢者のみなさんに配布しています。この活動も、沖縄県労福協・連合沖縄・沖縄ろうきん・こくみん共済coopの4団体等が連携し、地域の社会的弱者を支える取り組みです。

労福協
宮城

「お福分け隊」は、2023年に始まりました。コロナ禍の支援現場は不安と緊張感に包まれ、重い雰囲気でした。それでも「少しでも笑顔を見たい」という思いから、観光業や行政が休みに入る年末年始に何らかの支援を届けられないかと考え、私たちから声をかけたのが始まりです。関係団体に呼びかけを行い、予算を確保して購入した食料を持ち寄り、1世帯につき1袋ずつ配布しました。当初はコロナ禍における2023年限りの予定でしたが、「今年もやってほしい」という声に背中を押され、2024年も実施しました。その際は食料に加え、温かい衣類の寄付も呼びかけました。沖縄ろうきんに設置した回収箱には、多くの衣類が集まりました。仕分け作業は就労支援に関わる方々と一緒に行い、就労体験としての意味も持たせながら、年末支援へとつなげました。

連合
石川

「お福分け隊」以外にも、連合沖縄青年委員会として、食料支援や児童が放課後に集まる居場所への本の寄贈、海岸や街の清掃活動なども行っています。個人的にボランティア活動を行うことには気恥ずかしさを感じる人もいるため、労働組合がきっかけとなり活動する場をつくること自体に大きな意義があると感じています。社会貢献に取り組みたいという想いを持つ人は多く、そうした想いを具体的な行動へとつなげる場を提供することも、連合沖縄の重要な役割の一つだと考えています。

――課題を感じている点があれば、お聞かせください。

連合
仲宗根

沖縄県労福協の活動は、基本的に県や市町村からの受託事業です。事業は国・県・市町村の方針や予算編成によって内容が変わるため、受託は毎年同じ形で続くとは限りません。今後の関わり方は柔軟に見直していく必要があり、悩ましい課題となっています。また、人材面での制約も大きな課題です。現在約150名いる職員の生活を守ることは非常に重要ですが、受託事業は毎年同じとは限らず、職員数の調整が必要となります。また、沖縄県内の貧困問題や福祉課題にもっと取り組みたいという思いがある一方で、「そこまで踏み込むべきなのか」という判断も同時に求められます。その葛藤やコントロールの難しさこそが、私たちにとっての大きな課題だと感じています。

ピースフラッグが運ぶ想い ― 沖縄発、未来への継承

――沖縄という土地で活動する連合沖縄にとって、平和運動も重要な柱だと思います。具体的にどのような取り組みを行っていますか。

連合
仲宗根

連合沖縄では、平和行動にも継続的に取り組んでいます。その象徴が「平和4行動」です。沖縄の「慰霊の日」である6月23日を起点に、8月には被爆地の広島・長崎、9月には北方領土に最も近い根室へと「ピースフラッグ(連合・平和行動旗)」を各地へ届けながら、平和への想いをつないでいく活動です。

連合
石川

例年、沖縄での集会には約1,000名が集まり、翌日のフィールドワークには約500~600名が参加しています。フィールドワークは青年委員会が中心となり、大分県の青年委員会の皆さんにも加わっていただき、基地コースと戦跡コースに分かれ、青年たちが現地ガイドとして基地や戦跡を案内します。

連合
仲宗根

連合は結成以来平和運動に取り組んでいます。沖縄戦の歴史や現在も続く基地問題を学び、平和の尊さを次世代へと語り継ぐことを目的としています。特に青年層の参加を重視しており、各地域から新たな担い手を送り出すことで、平和への思いを地域に持ち帰り、継承していく仕組みが築かれています。連合沖縄は、こうした実践を通じて、沖縄から全国へ、そして未来へと平和のメッセージを発信し続けています。

  1. ※1.仲宗根氏は、沖縄労福協の理事長を兼務している。
  2. ※2.東盛氏は、沖縄労福協の副理事長を兼務している。
  3. ※3.砂川氏は、沖縄労福協の理事を兼務している。
  4. ※4.岡野氏は、沖縄ろうきんの理事を兼務している。
  5. ※5.「ゆめ・みらい基金」の詳細については、連合総研『地域コミュニティの一翼を担う労働者自主福祉運動の人材育成等に関する調査研究報告書』 「第10章 沖縄県労働金庫(163 ページ~)」ご参照。
  6. ※6.連合沖縄、沖縄ろうきん、こくみん共済coopは沖縄県労福協の会員である。
  7. ※7.こくみん共済 coop 指定整備工場では、こくみん共済 coopの組合員が点検整備や車検等を実施する場合、組合員特典を利用できる。

取材日 2025年8月25日
※組織名や役職は取材時点のものです。

聞き手 中村天江、堀江則子
執 筆 堀江則子

 

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